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2006年7月13日 (木)

イギリスの国体問題

陰暦 六月十八日

 英The Economist誌のコラムに、民主制を考える上で格好の文章がありましたので拙い訳ですが紹介します。伝統に根ざした民主制とはどういうものかを感じ取ったいただければ幸いです。

 人を驚かすことを何よりも楽しみとなすケン・クラーク氏も彼の新聞での発表への反応には驚いたに違いない。保守党の民主委員会?(democracy commission)の委員長であるクラーク氏は保守党が政権を取った暁には、イングランドにのみ関わる法を立法する際には、スコットランド選出議員から投票権を剥奪すると言明した。

 これはウエスト・ローシア問題が蒸し返される兆候といえるだろう。この問題を30年前に最初に提起したのはタム・ダリエル氏である。1977年にスコットランドとウェールズへの分権問題の討議の時であった。「119人のスコットランド・ウェールズ・北アイルランドの貴顕達(選出議員)がイングランドの重要事項に対して口を挟めるというのに、イングランド人が彼等の事柄には口を出すことはできないという事態にイングランドの貴顕達(選出議員)と人々がいつまで我慢することができるだろうか?」

訳者注:イギリス国会とは則ちイングランド国会です。イングランド自治政府というものは存在しません。スコットランドとウェールズの自治が実現されれば、彼等は国会を通してイングランドの政治に介入ができることになります。

 1979年に自治法案は否決された。その後労働党が政権を奪還するまで18年間はこの問題は忘れ去られていた。1998年に自治法案が可決されて、この問題が再び浮かび上がってきた。イルビン大法官(Lord Chancellor:最高裁長官のようなもの)の態度に政府の見解が表れている「一番の解決法は考えないこと」。

 政府がこのスコットランドとウェールズの自治によって生じる憲法問題に対して呈示できる解決法は、イングランド人だけから選出される、イングランドに関わる問題を討議するための、政治的には権限はごく限定された会議を招集することだけであろう。ジョン・プレスコット首相代理のこのアイデアは、北東部の有権者の5分の4からの、そのような大規模なおしゃべり集会は必要ない、という表明(イギリス政界のことは詳しくないのでなんの事件を意味しているのか私には不明)によって実現性を失った。

 ブレア首相はウエストミンスターに二つの代表議会が並び立ってもうまく機能しないだろうといっている。首相が正しいかどうかは分からない。首相はもうあまり長くない残りの任期にこの問題に関わりたくないと考えているように見える。

 1997年と2001年に労働党は大勝したので、党内の謀反人ども(イギリスの議員は政府提出法案に割合気楽に反対することが可能)に対抗して法案を通すために政府がスコットランドの議員の助けを必要としたのは、大学の学費問題と健康保険の問題の2回だけであった(党内反対派に対処するために、労働党や保守党がスコットランド独立党の助けを必要としたことがかつては数多くあったのでしょう)。しかし2005年の選挙では与野党の勢力は伯仲した。従ってスコットランド選出議員(現在39議席)の帰趨が、イングランドに関わる法律(スコットランドではスコットランド自治政府がやることもイングランドでは国会が討議することになります、しかし国会ですので原則としてスコットランド選出議員も討議に口は出せます)を左右する事態は起きやすくなってしまった。

 ブレア政権におけるスコットランド人大臣の存在感も大きくなりつつある。ジョン・レイド内務大臣はイングランドの警察と刑事訴追業務を掌握している。けれども、彼の選挙区の警察業務は彼の管轄外である。ダグラス・アレクサンダー運輸大臣は彼を選出した人達とはなんの関わりもない法律を作る仕事をしている。

 ブラウン蔵相が首相になれば、キルカルディーとコーデンベースの選挙民には受け入れられない政策を実行する羽目に陥るだろう。スコットランド人は政府から一人頭£1,500受け取っており、その分イングランドは出超である。イングランド人の55%が、スコットランド人が首相になるのは不適切であると答えている。

訳者注:労働党のNo.2で次期党主最有力候補、財政引き締め政策を提唱している。スコットランド選出議員である。スコットランドは産業が少なくインフラも未整備なのでどうしても政府の福祉で生活する人が多い。EUでもスコットランドはフランスのブルターニュなどと並んで、後進地域として重点的に開発予算が配分されている。

【連合のコストは?】

 保守党の戦略は、憲法問題を持ち出して、政府を攻撃することであるが、混乱よりも解決策を探す法があるべき姿だ。イングランドにのみ関わる事項は、国会内のイングランド選出議員だけで討議するというのが一番穏当だと考えられる。

 しかし「イングランド問題」の著者であるロバート・ヘイゼル曰く「イングランドの法」というものは存在しないそうだ。イングランドの問題だけ討議する国会というのは、正統性の問題がある。これは長引く混乱の素だ。労働党の党首と保守党の党首がイングランドだけに関わる事項を討議する姿を想像するのは、だらしない感じがする。(ここら辺は外国人である私にはよく分からない感覚です、ウエストミンスターが大英帝国の国会でなく、イングランド地方議会になってしまうことには抵抗感が強いようです。)

 スコットランドとウェールズ選出議員を減らすという方法もあるが、同意を得るのは難しいだろう。保守党は自分で解決法を呈示しなければならない。ウエスト・ローシア問題が連合に亀裂を入れるとして、その結果に保守党は責任が持てるのか?

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