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2006年7月 4日 (火)

村田清風(一)…長州藩の窮状

陰暦 六月九日 【上弦】

ちょっとした手違いでプロバイダーへ料金未払いになってしまい、しばらく回線を切られていました。いやはや情けない話です(^^;A

 江戸時代も中頃を過ぎるとどの藩でも財政赤字に苦しむようになっていたのは皆様よくご存じかと思います。参勤交代やお手伝い普請(幕府の命による公共事業)による出費がかさんだのに対して、歳入が米に偏っていたために、税収が元禄以降ほとんど伸びなかったことが直接の原因です。

 江戸時代には商業が大いに発展したにもかかわらず、諸藩は商人からあまり税を取りませんでした。あるいは当時の日本の為政者は、関銭と株仲間(同業者組合)からの運上金以外に有効な商人からの税金の取り方を知らなかったのかもしれません。江戸時代には関銭を取ることは禁止されていました。株仲間を作らせたとしても、そこから上がる運上金は定額なので経済の拡大を反映しませんから、やはり有効な財源とはいえません。

 検地も江戸初期以降ほとんど行われませんでしたから、諸藩は農民の所得の実情も把握していませんでした。いわば経済の規模が倍になって出費も倍かそれ以上になったにもかかわらず、税は据え置きだったわけですから、困窮しないはずがありません。

 ただし江戸時代の為政者を愚かだったと莫迦にするのも早計でしょう。税が低かったと言うことは庶民が潤っていたことを意味するからです。参勤交代による沿道の発展も大きいですし、お手伝い普請による治水工事は今でも感謝されているほどにしっかりとした物で日本の発展に寄与しました。江戸で武士がひたすら消費をしたお陰で経済は大いに発展します。今風に言えば、内需拡大のために政府が出費をすることで有り余る生産力を吸収していたといえるかもしれません。政府部門が有り余る生産力を吸収せざるを得ない日本経済の現状は江戸時代からの伝統であるのかもしれません。

 庶民の方も、よっぽどの飢饉の時はともかくとして、よく言われる農民の困窮というのはあまり実態を正確に映しているとはいえないと最近では言われています。何か少しでも災害があると、これ幸いとばかりに農民は藩に被害を過大に申告していたらしいのです。江戸時代の庶民の現実はまだまだ解明すべき点が多いといえます。

 さて長州藩も人並みに赤字にあえいでいたわけですが、天保期に更に追い打ちをかける出来事が相次ぎます。

    (一)第十代藩主毛利斉煕が江戸葛飾に十万二千坪の巨大な屋敷を建設


    (二)第十二代藩主毛利斉広と将軍家斉の第十八女和姫との婚儀が整い、盛大な婚礼が行われる


    (三)天保七年(1836)六月に防長を古来稀な暴風雨が襲う


    (四)翌天保八年(1937)、先代斉煕が葛飾邸で死去、後を継いだ斉元が参勤交代で萩帰国中に死去、更にその後を継いだ斉広が江戸の櫻田藩邸で死去。一年のうちに藩主の不幸が三代も続き、藩内の落胆もさることながら、莫大な葬儀代支出を強いられた。

 このような長州藩にとって未曾有の危機に毛利敬親は第十三代藩主となりました。毛利敬親は、小説のせいで無能な藩主という評判が立ってしまいましたが、聡明で意志が強い人物でした。幕末に尊攘派の要求に流されていたように見えるのは、彼等がテロにクーデタという非常手段を用いて、敬親に自分たちの意向を有無も言わさず押しつけたからです。敬親が決して凡愚ではなかったことも、おいおい説明していこうと思います。

 敬親は村田清風を葛飾手元役から引き抜き、江戸仕組掛に任命しました。江戸仕組掛とは財政改革の実務者のことです。江戸とありますが、江戸国元双方の財政を取り仕切る責任者です。これは村田清風を一代家老の地位まで引き上げたことを意味しました。

 そのころまでに清風は財政家として何度か藩政立て直しに関わっていたのですが、身分が低いために軽んぜられてうまく行きませんでした。それを見知っていた敬親は、彼に箔をつけて改革の実を挙げようとしたのです。藩という面子が何よりも重んぜられる世界を動かすツボを押さえていたといえるでしょう。

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