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2006年9月15日 (金)

村田清風(七)…人材育成

陰暦 閏七月廿三日 石清水八幡宮祭

 村田清風は人材育成に心を砕きました。偉くなってからも、一丁声(一丁先にも届くばかでかい声)で若者を叱咤激励し続けました。

 「病翁の宇和言(うわごと)」には「國に人無し人なしと申し候へども、私は更に合点が参らず候。東西五百里南北百里の、この蜻蜒州(日本)に、天地よりその國を治むる程の人を産せずということは、これあるまじくと考へ候。加藤清正は鍛冶屋の子、福島正則は桶大工の子、小西行長は薬屋の息子達、唯人の才能を見て活用するにあるべし。」人材がいないのではない、人材発掘をしていないのだ、育てていないのだというのです。

 まず天保十一年(1840)に文学興隆令を発令し、身分にかかわらず、有為の才を学校に入れるべきであると、勧学奨励を進めました。つづいて江戸在藩の士の師弟のために櫻田邸内に文学修養所を設立します。

 天保十二年(1842)に、藩主毛利敬親は明倫館拡充の大施策を発表します。国家老益田元宣を学校惣奉行とし、村田清風を明倫館重建手元役とし、嘉永二年(1849)に竣工をみました。聖廟、講堂、学校御殿、剣術、槍術、礼式、天文、算数、兵学、写術、水練池、練兵場と師と学生を収容する学舎をそろえた国内五指に入る堂々たる学館が整備されたのでした。テキストの改定も進められます。これは清風の死後に実現しました。

 清風は引退してからも、三隅の邸宅で近所の師弟に学問をつけました。

 もう一つ、清風の人材育成として忘れてはならないのは吉田松陰との関わりです。ここには私の推測も入るのですが、長州藩は学問の興隆を図るために、俊英吉田虎之助(寅次郎・松蔭)をアイドルとして演出します。11歳の時に藩主敬親に山鹿流軍学を講義し、鮮烈なデビューを飾らせます。それ以後も平戸や江戸などへの遊学を援助、佐久間象山に弟子入りさせるなど、寅次郎の学問を藩で全面的にバックアップしました。

 学問をすれば出世ができる、長州藩には若くして日本一の大学者と肩を並べる俊才がいる、ということで長州藩を元気にする意味合いがあったと考えられます。寅次郎は藩の期待に良く応えました、それどころか長州藩を超えて日本全国を動かす大人物に寅次郎は育っていくのです。

 村田清風と吉田松陰の間には数通の書簡といくつかのエピソードがあるのですが、私が一番好きなのは、松蔭が密航に失敗して幕府に捕らわれた時に清風が松蔭に「はやる気持ちは分かるが命を大切にしなさい」という手紙を送った話です。

 幕末の長州藩というと、身の危険を顧みずに次々と若者達が命を落としていき、見ている方はやりきれません、松蔭は私が先に死んで模範を示す、みたいなことすら言っています。どうもこの死を軽んずる風に私は付いていけません。そんな中、松蔭の身の心配をした清風の優しさに触れるとほっとさせられます。このエピソードを知ったのが、私が長州藩を見直すことになったきっかけでした。

 松蔭は野山獄で清風の死を知らされ、追悼の詩「前の参政、村田翁を挽す」を作りました。その率直な悲しみの言葉に、松蔭にとって清風がいかに大きな存在であったかを感じないではいられません。

 それでは最後に清風の気概に触れて、村田清風のシリーズを終わりにさせたいと思います。

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コメント

歴史的社会言語学という分野で松蔭の書簡自称詞の研究をしています。「 村田清風と吉田松陰の間には数通の書簡といくつかのエピソードがあるのですが」と書かれているので手持ちの松蔭書簡集(日本思想体系54、と昭和14年発行の全集)を調べてみましたが、嘉永4年3月5日以外の書簡は見当たりません。
外の書簡の掲載されている参考書をおしえていただければありがたいです。
Katsue Reynolds

Katsue Reynolds様、初めまして

私は長門市三隅の村田清風記念館で見つけた郷土史家がまとめた本を元にこのエントリーを書きました。

本の方は今押し入れの奥に眠っていて取り出せません。すみません。

村田清風全集(私が持っているのは短縮版です)はAmazonで購入可能のようです。

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