「管子」版法第一(その一)
陰暦 四月十三日
管子の真髄をまとめた章。学校では管子は法家と習いますが、これを読むと、法家の枠に留まらない幅のある思想家であることが分かります。
およそ将に事を立てんとすれば、彼の天植を正しくす。風雨違うことなく、遠近高下、各々その嗣を得。三経既にととのひて、君即ち国を有つ。喜ぶも以て賞する無かれ、怒るも以て殺す無かれ。喜びて以て賞し、怒りて以て殺さば、怨み乃ち起こり、令乃ち廃す。しばしば令して行はれざれば、民心乃ち外にす。外にするの徒有れば、禍ひ乃ち初めて牙す(きざす)。衆の忿るところは、寡は図ること能わず。
(訳)全て国家を治める大事を成就しようとするには、天から賦与された公平無私の心を正しく保つべきである。すなわち、風や雨が時期を違えず公平に到来するようにして、そこで地の遠近を問わず、高下の差別なく、全ての人々がその所を得て治まるのである。天の時、地の利、人の和の三原則が整備されれば、そこで初めて君主は国を保有することになるのである。喜ばしいからと言って人を賞してはならず、怒りを感ずるからと言って人を殺してはならない。喜ばしいからと言って人を賞し、怒りを感ずるからと言って人を殺したりすれば、人々の怨みがそこから起こり、君主の命令は実行されなくなる。しばしば命令を下しながらそれが実行されなければ、民衆の心は君主を疎んずるようになる。君主を疎んずる物が徒党を組むようになれば、禍がそこから芽を出すことになる。多数の物が不満を抱いて怒ることになれば、少数の者はこれに対応することはできないのである。
美とするところを挙ぐるには。必ずその終わるこ所を観(み)、悪む所を廃するには、必ずその窮するところを計る。敦敬を慶勉して以て之を顕し、有効を富禄して以て之を薦め、有名を爵貴して以て之を休す。兼愛して遺す無き、之を君心と謂ふ。必ず先ず順教すれば、万民、風に郷ふ(むかふ)。
(訳)君主が善いと考えることを実施する時には、必ずその結末がどうなるかを推察するべきであり、悪いと思うことを廃止する時にも、必ずその結果がどうなるかを予測するべきである。誠実で慎み深い人物に賞を与えて奨励し、これを表彰し、功績ある人物に高い俸禄を与えて、これを勧奨し、名声ある人物に高い爵位を与えて、これを称賛するべきである。あまねく人々に愛を注いで落ちこぼすことがないのを、君主の心構えというのである。必ず君主が先に立って人の心に背かないように教え導くならば、万民はその感化に従うものである。
旦暮に之を利すれば衆乃ち任に勝ふ(たふ)。人を取るには己を以てし、事をなすには質を以てす。財力を用ふることを審か(つまびらか)にし、施報を慎み、称量を察す。故に財を用ふるには以て吝かなるべからず、力を用ふるには以て苦しましむべからず。財を用ふること吝かなれば則ち費り(もとり)、力を用ふること苦しましむれば則ち労す。民足らざれば、令則ち辱めらる。民殃ひ(わざわひ)に苦しめば、令行われず。施報得ざれば、禍ひ乃ち始めて昌ん(さかん)なり。
(訳)日夜に福利を与えるようにするならば、民衆はそれによって自分の任務を完遂するようになる。人を採用するには自分の才能を基準にし、事業を行うには飾りのない実質を基本とするべきである。財貨と民力を使うことには明確な判断を持ち。労力に対する報酬を慎重に考え、仕事に対する力量を考えるべきである。すなわち、財貨を使用する場合には物惜しみしてはならず、民力を使役する場合には苦痛を与えてはならない。財貨を使用するのに物惜しみをすれば、人々は逆らうようになり、民力を使役して苦痛を与えれば、人民は疲弊してしまうのである。人民に生活上の不足が生ずれば、お上からの命令は無視される。人民が困窮の禍いに苦しむようになれば、命令は実行されなくなる。人民が労力に対する報酬が適当に得られなければ、禍いはそれによって増大し始める。
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