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2007年7月22日 (日)

年金制度改革(二)

陰暦 六月九日 【上弦】

 今日は積立金について調べてみます。以前書きましたように、国民年金と厚生年金の積立金は約150兆円ありまして、これは現在の給付の3.5年分に当たります。平成13年からの運用実績をみてみますと(厚生労働省年金局HP)

             総額     収益率    収益額
平成13年(2001) 144兆円  1.94%  2.7兆円
平成14年(2002) 141兆円  0.17%  0.2兆円
平成15年(2003) 145兆円  4.90%  6.8兆円
平成16年(2004) 147兆円  2.73%  3.9兆円
平成17年(2005) 150兆円  6.38%  9.8兆円

 平成14年が最悪で、元本割れしています。元本割れしているのに収益率が+0.17%とは此れ如何に、とお思いでしょう。ここら辺がお役所の決算報告の仕方と私達の生活実感が解離している部分のような気がしましたので、詳しく調べました。

 年金の積立金は平成16年の改革まではほぼ全額旧大蔵省資金運用部に任されていました。資金運用部は、国債、財政投融資、株式等をそのお金で購入して積立金を運用していました。

 債権ですので、利子が付きます。この収益額というのは利子の総和です。そして収益率というのは、利子を元本で割って算出します。2.3兆円/141兆円=0.17%です。

 しかし、平成14年というのは株価の底の時期でしたので株の時価は著しく下がっていました。それで元本が144兆円から141兆円へと減っています。

 年金の積立金の収益には、その年の納付金から給付金を差し引いた余り(つまり納付金を家計でいう給料、給付金を支出とすると貯金ですね)を収益には混ぜないことにしています。これは当然です。積立金の収益は、運用益だけです。

 会計のことはよく分からないので、これは私の感覚なのですが、家計や企業の決算では事業に伴わない資産(株券とか不動産)の減耗は、損失として計上はできなかったと思います。ですから、株券の値下がりで出た積立金のマイナス3兆円が運用の損失扱いされていないのは一応正しい。

 しかし、バブル崩壊後の資産運用に失敗した企業が最終的に潰れたように、資産の減耗は、回復の見込みがなくなれば、最終的にはどこかで埋め合わせしなければならないはずです。よく分からないのですが、この積立金の場合は株券の値下がりが10年も続くようだと、資産の評価をし直して、下がった分を特別損失として計上しなければならなかったのではないかと思います。

 逆に、再び株価が上昇する見込みがあれば、損失として計上しなくてもいい。家計や企業でも、短期間の不運でその人が損失を出した場合は、今度また金を儲けられることが明らかであれば、債権者は借りた側を破産させて潰そうとはしません。

 つまり政府は平成14年の年金の積立金の減耗は、明らかに異常な不況のせいなので、黙っておこう、これを特別損失扱いすることによって「年金積立金が元本割れ」ということになって、それが国民にパニックを呼んで更に経済が悪化したら、日本は本当に破綻する。それくらいならば二、三年は黙っていて(決算は公開されていたので必ずしも隠蔽したわけではない)、経済が回復するのを待とう。という結論を出したのだと思います。

 実際日本経済はこの年に底を打ち、年金の積立金の元本も回復し、現在まで非常に順調に運用されています。150兆円という莫大な額であるにもかかわらず、このデフレ時代に実質で2%を超えていたのは大したものです。順調なので特に説明はいらないと思います。

 年金の積立金の運用について、平成14年だけはちょっと怪しくて、隠蔽すれすれのことが行われたと私は思いました。あの時景気が回復したから良かったものの、平成14年のどん底が更に続いていれば、今頃は年金の元本の減耗で大騒ぎになっていたかもしれません。危ないところでした。ただ、こういうものはみんなで信じて支えれば踏みとどまることが可能な類のものですので、一年だけ実態を隠した政府を私は責める気にはなりません。

 あと「平成16年 年金制度改正のポイント」の29ページを読むと、やっぱりグリーンピアと年金住宅融資業務の扱いが不明朗です。年金の積立金は全体としては充分収益を出していますが、この事業は赤字を出していたのだと思います。明らかにこのレポートでは隠していますからね。

 平成14年の元本割れを責めるつもりはありませんが、グリーンピアと年金住宅融資業務で赤字を出した責任者はやはり処罰されるべきでしょう。

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コメント

>一年だけ実態を隠した政府を私は責める気にはなりません。

これが本当なら、一種の情報操作でしょ、褒める話じゃありませんよ。

積立金の元本割れは平成15年当時ニュースでもちらっと触れてはいたと思うんですよね、けれども今回のような騒ぎにはなりませんでした。

野党もマスコミも日本経済を破滅させてまで政権交代をさせようとは思っていなかったので敢えて騒がなかったのだと思います。知らなかったはずはないですから。やろうと思えば平成15年の衆議院選挙の争点にできたはずです。

政党、官僚、マスコミ、全員示し合わせての無視だったのだと思います。

資産からきちんと地代が上がっている場合は、たとえ資産の評価が目減りしていても"すぐには"損失として計上しなくてもいいんです。

国民から集めた140兆円のお金を、経済崩壊でパーにするよりも、黙って株価が回復するのを待とうという選択は、正直ではないが政治的には正しい選択です。

もちろん正直なことではないので非難するのは自由だと思います。

確か私の記憶では日本の年金運用は、欧州と比べて株券の割合が高かったと思います。だから株価の変動に運用実績が左右されやすいんですね。今は株が順調なのでうまくいっていますが、今後のためにはこの運用先の比率を考え直すことも必要であるのかもしれません。

>政党、官僚、マスコミ、全員示し合わせての無視だったのだと思います。

そういうケースだったら、正当化されると考えているのですか?

そういう風潮は目的のために手段を選ばなくなり、それを正当化する方向に動きやすいので、極めて危険だと思いますよ。

不正が発覚すれば、指摘する。
それが当然だと思います。

もう1つ

>運用先の比率を考え直すことも必要であるのかもしれません。

問題があるなら、見直すべきですね。
少なくても、一般論としてギャンブルは余裕のあるお金でやるもので、失ったら生活できなくなるようなお金でやるものじゃありません。

不正ではないんです。会計操作ではありませんからね。それに決算は毎年予定通り発表されていましたので隠蔽でもない。ただし普通だったら大騒ぎになることをみんなして黙っていたというだけです。

元本割れが複数年に及んでいれば隠すのは不正になっていたかもしれませんね。

銀行や投資信託が軒並み大損をこいていたあの時期に資産の目減りが3/140で済んでいた年金は考えようによっては優秀です。

3兆円目減りしたことをあの時点で騒いだとしても、誰も徳をしないんですよ。年金にはいずれ私も世話になるはずですので、あの運用の危機的状況を大した損害も出さずに乗り越えた当時の政府を責める気にはならないです。

もちろん「政府は積立金の目減りを隠していた、こんな政府に任せていたらいつまた積立金が消えてなくなるかもしれない」という主張も可能です。けれども私はやりません。

年金積立金の運用の見直しは毎年行われています。

デフレが十年近く続いたので皆さん忘れていますが、貯金というのはそのままにしておいても、インフレで目減りをします。ですので貯金を殖やそうとしたら、ある程度はリスクマネーにつぎ込まざるを得ません。

150兆円全額塩漬けにすれば、毎年インフレ率の分だけ目減りします。銀行に預金すればいいという意見もあるかもしれませんが、150兆円ですからね、銀行だって預けられたからといってもそう簡単には増やせません。社債とか株券とか外債に投資して、配当や利子を取らないと、インフレによる目減りすら防ぐことができません。

別に大蔵省資金運用部の人や、今だったら積立金運用独立行政法人の人だってギャンブルがやりたくて積立金を株券に回しているんじゃありませんよ。

私はむしろ昨今の外貨投資ブームに乗せられて、外債の割合が増えることを危惧しています。外債自体は悪くないですけれど、年金をリスクの高い国の国債とか株につぎ込んで、その国で政変が起こってパーになる、というのは欧米で良くある話ですから。海外への投資はよくよく考えて欲しいです。

実態を隠したのなら、立派な隠蔽です。
きちっと報告して、経済対策もしているから大丈夫と理解を得るのが正論ではありませんか?

大騒ぎになるから黙ってた、なんていうのは、説明ベタを隠すための詭弁でしょ?

対策を行なったことは褒めても、それとは別のことなんですよ。

ギャンブルやりたくてやってるか、どうかなんていうのは、どうでもいいんです。
何かあったときにカバーできるならいいし、できない範囲だったらNGというだけの話です。

蓋し正論です。

でも株価が盛時の三分の一以下になった時期に、目減りが一年間3兆円減っただけというのは十分に対策が行われていからだと私なら考えます。

もっと減っていておかしくないんですね。

けれども、3年前と今の騒ぎを見ても分かるとおり、年金というのはデリケートな問題ですし、必ずしも正確な知識が国民に行き渡っているわけではありませんので、「積立金が減った」という一時だけで大変なパニックが起きたであろうことは容易に想像ができます。

「3兆円しか減っていいない」とは誰も考えませんからね。あのデフレの中で3/140しか減っていないというのは充分好成績なんですが、そう評価する人は少ない。

平成14年頃は景気のどん底でしたから、あの時に年金でパニックが起きていれば、日本経済は本当に破綻していたかもしれません。そうなれば、私達の生活はもっと苦しくなっていたはずです。

150兆円ですからね、国家予算の二年分、郵便貯金の全額と同じくらい、日本全国に出回っているお金の一割近かったと思います。まかり間違えば国が傾く額です。

あの場合、正直に話していた方が、日本全体にとって損失だったでしょう。

>3兆円減っただけというのは十分に対策が行われていからだと私なら考えます。

そういう風に国民が考えられるように説明すればいいのです。
できないからって、隠蔽していいなんていうのは通りません。

世の中、結果だけを求めるもの。
結果もプロセスも求めるもの。
結果よりプロセスを求めるもの
3種類あります。

政治は基本的に2番目でしょう。
方法を無視して、暴走するなら堀江氏や村上氏みたいになる可能性があります。
ですから、結果は良かったけど、方法論としてはと言う方が適切だと思ってます。

あと、安部さんのいうとおり、大パニックが一時的に起きた可能性は否定できません。

それで当時の小泉内閣に何かあってもそれだけのことなんです。
一時的なパニックで国が潰れるまではいきませんから。(当然ですが、国と内閣は違う)

堀江氏や村上氏みたいな人間ばかりがのさばる方が国が潰れます。

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