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2007年8月 5日 (日)

「選挙結果の総括と今後の展望」(五)

陰暦 六月廿三日

「サラリーマン新党の可能性」

 昨日長々と書いたことをまとめると、ここ二三年マスコミが新現象であるかのように取り上げている程度の格差は、ずっとあったもので、かつては職種によって待遇そして生涯賃金に差が生じるのは自明のことでだれも問題視だにしなかったということに尽きます。

 新しい現象があるとすれば、長引く不況のせいで、今までであれば好待遇のコースに乗ることができた人があぶれてしまい、低待遇を強いられていることくらいでしょう。しかしその他大勢にとっては、小泉改革があろうがなかろうが待遇は変わらなかったし、特別不利な地位に押しつけられたということもありません。悪いのは不況です。不況から早く脱していれば毎年の昇給に満足して階級差に目がいくことはなかったでしょう。

 ただしデフレのせいで、昇給の差が白日の下に晒されてしまったというのはあります。今までの昇給の率を当てはめると、地方やブルーカラーはマイナスになるのですが、それはなかなか難しいので0で留められ(2003〜04年にはマイナスもありましたが)、それに対してホワイトカラーはプラスになったので、今まではプラスの中の大小に過ぎなかった差が、0及びマイナスとプラスに泣き別れしてしまったのは事実です。

 昇給の差は、昔と変わらない、場合によっては昔よりも縮んでいるかもしれないにもかかわらず、片方はプラスで片方は0になってしまうと、0だった側が「虐げられている」という被害者意識を強くしてしまうのはある意味仕方がない。

 そのようなわけで、今と昔でそれほど階級によって待遇に変化があったというわけでもないのですが、国民の多くが「今ある階級差も許容ができない」というのなら富の再配分が政治的な課題となってくるでしょう。

 以前コメント欄で述べたように、国会議員と国家公務員が全員無給で働いたところで一兆円にしかなりませんし、六本木ヒルズに住むような日本の富裕層などは人数も資産もたかがしれていますので、資産家へ課税を強化したところで雀の涙ほどの金しか集まりません。

 企業への課税を再び強化するというのは有効です。その代わり日本の競争力は下がります。それに、企業は雇用の拡大と歳入の拡大に既に充分貢献しています。ここで再び企業への課税を強化すると、雇用は減るし、給料は上がらなくなるし、節税が横行するので、格差を解消して欲しい人にとって損になると私は思います。むしろ企業には増税するよりも、雇用の拡大と昇給によって消費の拡大に取り組むよう仕向けるのが良いでしょう。

 結局、一番多く金を搾り取ることができるのはサラリーマンということになります。サラリーマンへの課税を強化し、貧困層や農家へ分配するくらいしか、今ある階級差を埋める方法はありません。

 もう一つ、地主への課税強化があると思うのですが、これは土地価格の回復で今後納税が増えると思います。けれども、変な地主優遇政策が行われないように監視する必要はあります。

 ともあれ今回民主党は、あの年金案、配偶者控除の廃止などにあるように、サラリーマンへの課税強化を打ち出しました。年収六百万くらいは順調に三十年会社で勤め上げれば到達できる数字です。配偶者控除の廃止は、専業主婦(これは結局今やサラリーマンの家庭にしか存在しません、貧困層は共稼ぎが普通だし、自営業には専業主婦はいない)に罰金をかけるようなものなのでこれもまたサラリーマンへの課税強化になります。

 六百万といっても大したことができる金ではありません。家だって買えるかどうか怪しい金額です。階級による待遇差があるといっても、サラリーマンだってかつかつの生活をしているわけですね。

 地方とブルーカラーが民主党を支持して富の再配分を求めるのだとしたら、都市住民やホワイトカラーは自らの利益を守ってくれる政党を探さなければなりません。サラリーマンは今や恵まれた職種であり、給与が狙われていることを自覚しなければなりません。格差社会の下側にいるつもりになって、富の再配分でもらう側に回れると思ったら大間違いです。サラリーマンは恵まれている側なので、富の再配分では奪われる側になります。

 小泉・安倍政権の政策は、これら都市のホワイトカラー層に理解されやすい政策を実行してきました。実際デフレの最悪期を順調に乗り切れたのはこの層なんですね。それと小泉政権は歳出を削って年金の国庫補助は死守しましたから高齢者も利益を得た側です。今回も結局高齢者の政権支持率は選挙までに回復しています。

 農家・公務員(地方公務員、教員、郵便局、社保庁)、ブルーカラーの利益は小泉・安倍政権では後回しにされたのは否めません。

 今回の選挙結果を見ると、小泉・安倍政権に批判的であった農村に基盤をおく自民党議員は落選し(青木参議院会長の部下ですね)、小泉・安倍政権に協力してきた議員は一人区でも大差で勝利しています(山本議員や世耕議員)。私は、自民党はサラリーマンの利益を代表する政党として生き残るしか方法はないと思っています。もしまだそれが分からない議員が安倍政権倒閣に走るようであれば、安倍総理は総理のまま自民党を離党してサラリーマン新党を作って総選挙に臨むべきであると思います。

 今回マスコミは一つとして安倍政権を擁護しませんでした。つまりマスコミはサラリーマンの敵です。世の中を静かに支える人達を代弁するメディアがない。かろうじて教育テレビとテレビ東京くらい。新聞雑誌に到っては、モブを相手にするか経営者を相手にするかのどっちか。大きな需要があるのにだれも手を伸ばさないとは一体どういうつもりなのか、マスコミは本当に商売人として失格です。

 今回の選挙結果は、小泉・安倍政権の都市・ホワイトカラー優遇政策が否定されたわけではなく、むしろ自民党のその方向への純化を促す結果ですので、安倍総理にはぶれることなく初志を貫徹して欲しい。もちろん安倍政権が倒れてしまっては元も子もないので、今後は地方・ブルーカラー層と妥協しながら我々の利益を守っていくことが求められると思います。

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コメント

>今回マスコミは一つとして安倍政権を擁護しませんでした。つまりマスコミはサラリーマンの敵です。

朝日・毎日が安倍政権を叩いていたことはまちがいありませんが、読売はやや政権寄り、産経は安倍政権弁護という状態でしたよ。
安部さんのいうほどの状況じゃありませんでした。

それと7/31 19:13のコメントは私に向けたものだと思いますが、礼儀をわきまえてないと批判するのはいいですが、どこがどのようにか、書いて欲しいです。
削除するしないは管理人である安部さんが決めることなのは納得してますけどね。

輔住さん向けではありません、別に変な書き込みがありましたので消去しました。

それよりも、輔住さんは私に言わなければならないことがあるはずです。何をお忘れになっているのか気がつくまでは書き込みをされても私としてはお返事はできませんのでご了承下さい。

>輔住さん向けではありません、

そうですか。

>輔住さんは私に言わなければならないことがあるはずです。

返事するしないはご自由ですが、こういう言い方されてもわからないですね。
ただ、これだけだと平行線だと思いますので、かっての書き込みの補足だけは行なっておきます。

安部さんの予測どおり、比例で民主党の議員が何を言ったかは知りません。新聞の細かい部分までは見てませんので。

ただ、政治的主張という観点で否定してるのであれば、久間氏のイラクに関する発言は、政府の決めたことを小泉氏1人が決めたとしたのだから、政府の決めたことを軽く見るという主張でもあるからです。
だったら、片方の党だけに文句をつけるのはおかしいと思っています。

的外れなレスになっている可能性があることは承知してます。

もっともっと基本的なことです。この程度のことが自発的にできないようでは、おそらく日常的な人間関係において支障が生じます。

一週間待ちます。それでできなかった場合、こちらから答えを出します。そのかわり輔住さんを今後書き込み禁止にします。これが自発的にできない人とは付き合うことは無理であると私は思っているからです。

基本だろうが、そうでなかろうが分からないものは分からない。
いままで言葉だけのやり取りしかしてないのに、気づくまでいわない、みたいな言い方は適切ではないと思います。

そういう言い方は極めて不愉快なのでここに今後は書き込みません。

てっくさんのところからやってまいりました。
総括と展望(一~五)ご苦労様です。
多くの左右ブログは、ともすればお互いを罵りあいのような書き方になることが多いので、丁寧に総括されており「格差」と「階級」についてふれている方は、いままで殆ど無かったんではないでしょうか。
都市と地方に差が生じるのは必然ですから、地方への富の再配分については配慮してもらいたいです。
自分は今回の選挙ほど、国民がたちの悪い詐術にかかったような選挙はなかったと思っています。

保守系左派さん、初めまして。書き込みありがとうございます。

てっくさんにはいつもお世話になっています。彼のように多くの人から信頼されるブロガーになりたいと思っています。

格差と言うよりは今まで当然とされてきた階級差が脚光を浴びるようになってきたのだと思います。

日本が福祉国家になるのは無理、といつの間にかそういうことになっていますが、そんなことはなくて、財政の危機が一段落した後ならば、小さな政府を目指すのか福祉国家を目指すのかが政治の争点になっても悪くないと私は思っています。

格差に目がいっていると言うことは福祉国家に賛成する声も少なくないことを意味しているのでしょう。

しかし、マスコミや今の民主党がそのようなことを見通しているとは思えません。私は民主党のために今回の民主党の偽りの勝利を惜しみます。この歪んだ成功体験は彼等をスポイルしてしまうでしょう。

 輔住さんが何を忘れているかというと、私にお礼を言ってないんです。年金のことを書いたのは、もちろん私にも意図があったからですが、輔住さんのためを思ってでもあります。

 人が自分のために動いてくれたなら、その結果が気に入るものであろうとなかろうと、とにかく一言お礼は言わないといけない。

 輔住さんとはネット上で長い付き合いですが、輔住さんが誰かに感謝の言葉を掛けたのをほとんど見たことがありません。負けん気が強いのは良いことだと思います。けれども感謝の言葉を忘れると、人間の心は不思議と卑屈になります。

 心のどこかに置いておいてください。

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