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2007年10月26日 (金)

十七世紀の西洋

10月26日(金)
陰暦 九月十六日 【宮崎神宮例祭】

 「アジアの海の大英帝国」横井勝彦著 講談社学術文庫 を読みました。英国がどのようにして海洋支配を築いていったかを追った本です。そこにでてくる"海軍"というものは私達がイメージしている"軍隊"とはだいぶ様子が違います。

 一言で言ってしまうと、海軍は商船の護衛部隊を出発点としています。

 軍隊というと国を守るんだとか、海洋覇権だとか大業なことを思い浮かべがちです。しかし海軍の出発点というのは護衛部隊であり海賊でした。敵国の船は略奪する、敵国の海軍(海賊)から味方の船を守る、これが海軍の役目。西洋人が地中海や北海の沿岸でやっていたことがワールドワイドに拡大しただけです。

 日本は近代国家の完成パテントを輸入してしまったので、近代国家はすごいものだと思っているけれど、ひな形は戦国大名のやっていることとあまり変わりませんでした。

 同じようなことを教えてくれたのが「スペイン継承戦争」友清理士著 彩流社 という本でして、これは18世紀初頭に起こったスペイン継承戦争を、イングランドの大将マールバラの活躍から追った本です。

 マールバラはスペンサー公爵家の祖で、則ちチャールズ首相とダイアナ妃のご先祖様に当たります。スペイン・ハプスブルグ家の断絶に端を発した、ブルボン家(フランス王家)とハプスブルグ家(神聖ローマ皇帝)のスペイン王位を巡る争いで、皇帝側の大将として不敗を誇りました。近代的な用兵術の発展史の上でも重要な人物です。ナポレオンなんかはマールバラ公の戦い方を研究していたのだと思います。

 スペイン継承戦争は、その実イングランドとフランスの戦いでした。ですので、戦闘は皇帝軍が勝っていたのに、ユトレヒト講和条約ではイングランドの利益だけが確保されて、皇帝はあまり利益を得ていません。言ってしまえば、イングランドはスポンサーで、皇帝軍はイングランドから傭兵扱いされていました。

 この頃の欧州というのは丁度日本の戦国時代と近代国家の間のような時代で、この時代を調べていると、「なるほど欧州と日本の分かれ目は17世紀にあるのだな」(当たり前ですが)というのがよく分かります。

 17世紀の欧州というのは、織田信長が日本の半分を統一したと思ったら、周囲にも五人ぐらい織田信長がいて、織田信長どうしで勝ち抜き戦が始まったような世界です。なるほどこんなことを二百年もやっていた連中とやり合うのは大変です。

 国際関係、議会の動き、君主と貴族の力関係、国際的な商人の動き、近代社会のひな形があります。

 例えば"国家の主権"というと何だか抽象的でよく分かりませんが、これも要するに王様の財産権です。国は俺のものなので、他人(外国の王様、及び自分の家来)がそれに手を出すのは許せんというわけです。大砲も鉄砲も中央銀行すらある世界なのに、単なる物わかりの悪いおばちゃんのアン女王が拗ねると、並み居る政治家も軍人も動きがとれなくなってしまう。それが長い間に市民に入れ替わっただけです。

 欧州における国家というのは徹頭徹尾君主の"所有物"であった。というか英国では今でもそうですが、ということを忘れると西洋史を理解するのは難しいかもしれません。「国はみんなのもの」という意識が生まれたのは東洋の方が先なんですね。けれども利己心の行き着いた先に今の欧州の市民社会があり、早く公共心に芽生えたはずの東洋で権威主義的な支配が横行しているのは面白い逆説です。

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