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2007年11月 7日 (水)

中世の物権法

 古本屋で見つけた「日本法制史概要」がなかなか面白い。今までいまいちよく分からなかった昔の法律用語が明快に説明されているのが有り難い。なんといっても初版が昭和二十七年なので、あまり余計な色が付いていないから分かり易い。特に感銘を受けた中世法の物権法の部分を抜き出します。

 動産のことを財物、資材、財産などといい、これに対して不動産のことを、所領と総称した。不動産と動産との区別は、知行の客体たり得るやいなやによって判定できるのである。

一 動産物権 動産の所有者を物主、財主などと称し、これが所有のことを所持といった・・・

二 不動産物件 不動産のことを所領といった。所領とは知行の客体の意味であるが、中世では知行の他に、しばしば進止の語が見えている。中世の不動産法は、この所領と知行と進止との三つを根幹として成立している。

(一)知行 知行は、不動産物件を有すとの主張(主観的要素)に基づくその物権の事実的行使(客観的要素)則ち所務(収納)である。・・・何らかの理由で、所務を失うことがあるが、この時、知行は不知行になったといい、不知行に対して、主観客観両要素を具備する知行を当知行といった。ある土地の全部の所務を内容とする知行を一円知行、ある土地の下地(有体物たる土地)あるいは年貢もしくは公事のみの所務を内容とする知行を、それぞれ下地知行、年貢知行、公事知行といった。何らかの名義を主張して、土地よりの収益を上げることが知行であるから、これは公法的な租税、私法的な小作料、公法的であると同時に私法的な荘園領主の年貢公事、これらを収益する場合を含むが、そのいずれの場合においても、知行の語をもって表現され、その間に形式的な区別はない。ここに知行の中世的性格がよく現れている。

(二)進止 不動産の私法的処分権、所職土地の補任宛行並に改易没収の権及びに不動産に関する裁判権、この三者を包有する概念である。

(三)所領 所領とは知行の客体の謂である。所領また所知、所帯などともいわれ、職の名義で保有される時は、所職と呼んだ。・・・本所的、所有的、職務的並びに小作的の各知行権がいずれも一様に所領と呼ばれたことは、中世不動産物件の特徴といえる・・・これらはいずれもその根元に遡れば、領主が元来有していた地主権の一分派といえる。すなわち、上世の地主権が分裂して、中世の上記のごとき各種知行権が成立したのである。

うーん、素晴らしい。

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