« 「プリキュア5GOGO」第十一話 | トップページ | 発展途上国の都市に蝿が多いわけ »

2008年4月17日 (木)

小さな政府と福祉国家は矛盾しない(二)

陰暦 三月十二日【土用の入り】

 この時期、米だけに藩の収入を頼ることはほとんど不可能になりました。開幕以来の食糧増産の努力が実を結んで、米が大いに剰っていたからです。それに対して技術が進んで商品生産が盛んになり、貨幣も流通したので、出費は増えました。

 しかも江戸時代の武家というのは使用人をクビにできない仕組みになっていました。戦闘集団という建前があったので、一度使用人として雇用された人をクビにすると戦意が下がるという理由で、年々雇用者が増えていきました。これでは屋台骨が傾かない方が不思議です。

 江戸時代の庶民の流動性は高かったので失政があるとすぐに人が逃げて農村は荒廃してしまいます。農民は隙あらば税率が低いか、インフラが充実している別 の藩に逃げるか、都市に逃げようとしていました。また、老親を養い隣近所で助け合うという日本人の美徳はこの時代にはまだありませんでした。年老いた親を放 置して逃散することは珍しいことではなく、経済運営に失敗した藩は人心かなり荒んでいました。

 どうでしょうか、現在の日本に似ているとは思いませんか。

 この社会の変化をうけて様々な藩で改革が試みられました。藩政改革には共通点が多く、だいたい以下のような道筋を辿ることが多いです。

(1)藩主の強力なリーダーシップ
   (改革派名君は養子であることが多いのでそれまでのしがらみにとらわれなかった)
(2)身分にとらわれない人材登用
(3)守旧派の譜代を粛正して藩の中枢から遠ざけてお飾りにする
(4)藩士の給与の大幅カット
(5a)食糧増産
 (剰っていたと言っても米はやはり大事、ただし米以外の雑穀の生産も
  増やして不作に備える)
(5b)干拓や疏水といった公共事業によって、農村からあぶれた失業者を吸収
(6)特産品を育成する
(7)その特産品をなるべく藩内で加工して付加価値を付与させて都市で売り捌く
(8)町人に経済関係の業務を大胆に委託
(9)以上の実績を大商人に確認させた上で、藩の債務を低利に借り換え

そして藩内もまとまり、庶民の生活も安定してきた頃に

(10)当代一流の学者を招聘し、藩校を立て直して教育を振興、武士だけでなく農民や町人の教育水準も高める。

 老親介護や、地域で助け合う精神はこの頃育成された物であって、必ずしも古来からの美風ではありません。また、長男が家を継ぐことを義務化するのも、年 老いた親を放置するのを禁止する、社会保障制度としてこの頃に導入された新しい伝統です。生産力を高めるために、堕胎の禁止も強化されました。

 そしていよいよ余裕ができると

(11)軍の近代化

 となります。薩長土肥、水戸、会津、米沢、岡山、芸州などはこのような藩政改革に成功し、幕末の風雲を乗り切ろうとしました。これに対して、良質の米がとれて、西回り航路の流通で豊かであった日本海側の藩は、改革をする必要がなかったために、幕末に乗り遅れました。

 近世後半に、日本の人口は減少を始めるのですが、藩政改革が成功したところでは、天保になって人口が反転し始めます。産業育成と、家族を重視する教育が、数十年かけて社会を立て直した結果です。

 近世後半の藩政改革は、現在の日本の進むべき道を知る上でとても示唆に富んでいると思います。

(気が向けば続くかもしれない)

« 「プリキュア5GOGO」第十一話 | トップページ | 発展途上国の都市に蝿が多いわけ »

歴史:武家」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173723/40869015

この記事へのトラックバック一覧です: 小さな政府と福祉国家は矛盾しない(二):

« 「プリキュア5GOGO」第十一話 | トップページ | 発展途上国の都市に蝿が多いわけ »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ