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2008年9月 4日 (木)

今後の東亜(二)

陰暦 八月五日

 需要が強い経済はなかなか潰れることはないとはいえ、支那は二億人に上る出稼ぎ労働者の問題を抱えています。出稼ぎ労働者が都市の定住民となり、生活水準が向上すれば、支那の社会も安定するはずなのですが、いろいろ問題があって出稼ぎ労働者の待遇改善は進んでいません。

 この問題の根本には、都市と農村で戸籍が異なる支那の二千年来の制度があります。支那の社会は歴史的に日本よりも欧州に近く、都市居住者が富と知識を独占し、農村を支配する構造があります。

 支那が普通の国であれば、農民の土地所有権を保護し、土地の売買を自由化することにより、零細農民は土地を売って都市に出て賃金労働者になり、農村では農業の大規模化が進んで残った農民は経営が安定化するはずです。

 零細農のままでは生活水準は改善しません。農業の大規模化と元農民を都市へ吸収して賃金労働者にする必要があります。でなければ多額の補助金で農業を保護するしかありません。今の支那の農業が収益を上げられる状態とはとても思えないので、その場合は数億人の生活を国が面倒を見ることになります。そうすると、税金を取られた都市居住者は不満を感じますし、農民にも十分に補助金は与えられないでしょうから、国中に不満が鬱積します。

 現在でも既に二億人の農民が都市で労働しているわけですので、居住地の変更を自由化しても都市への流入は社会が崩壊するほどひどくはならないはずです。経済が破綻したり、大飢饉が発生すれば、戸籍なんぞとは無関係に大流動が起きるでしょうから、非常事態についてはこの場合脇に置いておきます。

 一昨年に中共は農民の土地所有権を認めました。けれども永代売買権はまだであったと思います。永代売買を認めた場合、居住地の変更とセットでないと、土地を手放した元農民の生活が成り立ちません。

 生活の向上がみえている限り、農民も農民工も反乱は起こさないでしょう。そのためにはやはり土地売買の自由化と都市への移住の許可、それと労働者の賃金改善が不可欠です。

 この三策を実施しても社会が崩壊することはないでしょう。農民には悪いですが、人権が制限されている状態を続けることにすればいいと思います。二重賃金を長い時間かけてなくしていくことにすればいいでしょう、それでも農民工にとっては生活改善になりますので文句は出ないはずです。

 ただしこれは中華人民共和国建国の理念を完全に捨てることになりますので、熾烈な権力闘争を巻き起こす可能性があります。政治家はこれが怖いのだと思います。

 あと少々飛躍してしまうのですが、自国の産業を守るためにあえて自由貿易に背を向けて関税障壁を強化するという選択肢もありだと思います。生産力が伸びずに、需要だけ拡大した場合、外国から借りた金で消費をするしかなくなりますが、米国のような基軸通貨国ならともかくも、支那には無理です。

 そのための条件は、労働者の賃金を改善させてそのコストを商品にも反映させることにつきます。農民工を奴隷働きさせて実現された低価格商品の輸出攻勢は迷惑ですが、農民工の賃金が上乗せされたせいで高コストになった支那の産業を守るための関税障壁ならば、国際社会も認めてくれる可能性があります。これによって、支那は農民工の生活改善と産業育成の二兎を追うことができるのではないでしょうか。

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