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2008年9月 8日 (月)

帝政欧州

陰暦 八月九日

 EUについては細かいことは知らないのですが、用があって法律の制定過程を調べてみると、EUにある委員会の中で出された結論を欧州議会が追認して、それにしたがって欧州官僚が細部を詰めて、各国に通達される、という過程を経ているらしい。

 これって、完全に有司専制ではないのか!?

 欧州議会なんてものは各国から十数人くらいしか選出されていません。解散もありません。ユーロクラット(欧州官僚)はまあただの官僚です。このように、どこまで市民を代表しているのか怪しい人達に、きちんと選ばれた国会議員よりも、分野によっては強い権限を与えるなんてことがあってよいのでしょうか?

 どうも欧州は議会制民主主義を捨てて、行政が優越する国家連合を目指しているように思えてなりません。

 欧州中央銀行も権限が絶大です。欧州中央銀行の金融政策のせいで、国情に合わせた金融政策がとれず、国債の発行も制限されて経済の不調が増幅されています。国債の発行額まで制限をかけられるようではもはや主権の放棄に近いと思うのですが、欧州の人達はこれに危機感を抱かないのでしょうか。不思議です。

 欧州共通の外務大臣を作ろうという話もありますし、こうなるといずれ欧州共通の軍、指揮官、元首となるのは時間の問題なのではないでしょうか。四億五千万人ですから、インドに次ぐ民主主義国となりますけれど、あれほど文化的背景が異なる民族が集まった欧州で可能なのでしょうか?

 日本人の官僚不信も考え物ですが、欧州の人が官僚を無条件に信頼しているのもどうにもおかしい気がします。確かに新聞雑誌にはユーロクラットを揶揄する記事がよく載っていますが、だからといって彼等から権力を取り戻せという主張は出てきません。各国の利害の違いを直視すると分裂しかねないので、官僚に任せることで諸問題から目をそらしているのではないのでしょうか。

 これから欧州は色々と困難に見舞われることが予測されるのですが、その過程で統合を強化するか、分裂するかの選択を迫られると思います。統合が強化された場合、米国型の立法と行政が強く牽制し合うシステムではなく、ロシアのように行政が卓越するシステムにしないと維持が不可能になるはずです。

 強力な欧州大統領が、対立する地域に裁定を下すことになると思います。国に命令を下せる大統領・・・そんなものがあっていいのか、古いタイプの国家観を持っている私にはよくわかりません。

 さてこの"帝政欧州"(皇帝は選挙制ですが)、果たして欧州や国際社会を幸福にできるのでしょうか。

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コメント

「EU労働法政策雑記帳」
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/

ご参考までに。知ってたらごめんなさい。

EUのイメージは「保護貿易広域連合」と「ローマ帝国への残滓と克服」があるのかと思って、「ローマ人の物語」を読んでます。
だけど「帝政欧州皇帝」がでるのは「コードギアス」の影響でしょうか?
「紺碧の艦隊」が「道州制」「東アジア共同体」「過去の克服」「戦後レジームからの脱却」「地政学」等がその後の与えた影響は大きかったように思うんです。

 保守系左派さんおはようございます。

 「コードギアス」は見たことがありません。しかし、かなり斬新な世界観を展開しているというのは聞いています。

 この記事はちょっと推測を極端な方向に進めてみました。帝政というと、独りでなんでも決める怖い政治というイメージがあるけれど、ローマにしても支那にしても、帝政というのは即ち巨大な官僚機構なんですよね。

 ですのでEUが官僚機構の肥大化の末に、帝政にたどり着くというのはあり得るのではないかと思っています。

はじめまして
面白い意見だと思います。

ヨーロッパでは伝統的に選挙王政・帝政がよいと考えられてきました。
だから、皇帝の名はつけなくても皇帝に近い権力者(コンスル)が再び誕生する可能性はありますね。

選挙王政・帝政というのは日本人には少しなじみがないので分かりにくいです。
中世ヨーロッパでは、有力者メンバーの間で国のトップを決め、その国々のトップたちの間でヨーロッパのトップ(神聖ローマ皇帝)を決めていました。
王位・帝位は基本的には世襲ですが、欠格者と認められれば降ろされて有力者選挙となりました。
これは古代ローマ帝国の1世紀から始まり、ゲルマン・スラブの慣習を交えながら中世に確立し、19世紀まで続いた伝統ですね。

また、古代ローマでは王政廃止後長く共和政で、王・皇帝の出現を嫌がったため、コンスルは任期1年でした。終身コンスルに任命されたカエサルやオクタヴィアヌスなどは実質王でも王を名乗らず、別の(いくつかの)称号を名乗りました。

西洋のインペラートル(将軍)に皇帝という中国の言葉を当てたために誤解されやすいですが、本来の意味では、名門の出の軍事司令官が任期自動更新型大統領を兼任したものと思えばよいと思いますね。
その任期を1年に限定すれば、コンスル(執政官・統領)と大して変わりません。

皇帝の権力は時代とともに変わり、皇帝よりも教皇のほうが強かったり、皇帝を選出する選帝侯のほうが強い時代もありましたが、常に古代ローマを理想とし続けてきたことには変わりません。名目上は皇帝が各国の王に命令を下せることになっていました。

このような伝統が神聖ローマで1000年、古代ローマ・東ローマから数えれば1900年くらい続き、最近の高々100年程度そうでない時代があっただけです。
EU大統領という名でローマのコンスルまたはインペラートルが復活するのは、ヨーロッパの有力者たちにとってはあるべき姿に戻るのだと思っているのではないでしょうか。
有力者たちは一種の現代貴族で、日本の2世・3世議員と同様、EU議員の地位もほぼ世襲になるでしょうね。

もちろんいつの時代も統合の一方で分権派もいて、ヨーロッパは常にそのせめぎあいで歴史が成り立っているようなもんです。
私は現代でこの「EUローマ帝国」がどれだけ通用するのか見てみたいですが、できればその破綻まで見たいなと思います(^^;長文失礼しました。

 そりどぅすさん、初めまして。

 皇帝制というのは、巨大な官僚機構が、組織の中で処理して出した結論を、一番上の人が形式上全て判断して決裁したという形にしているだけで、特別横暴な制度というわけではないんですよね。

 ナチスやボリシェビキの場合は官僚組織の序列よりも党の序列の方が優先しているので、これは皇帝制とは少し違います。

 あと皇帝制はたいてい市民が皇帝への直訴(最高裁判所への上告みたいなもの)の権利を制度として持っていました。ここらへんがナチスやボリシェビキの独裁と違うところです。

 あと、いくら皇帝でも憲法(慣習法の場合も)に反した命令は下せませんが、一党独裁の場合はその限りではありません。

 EUが皇帝制になった場合、旧EFTAは離脱するんじゃないかと思います。でも皇帝制のEUは意外とうまくいくかもしれないと私は思っています。特にドイツとフランスは官僚が強いので、国民もすんなり受け入れるのではないかと。

こんにちは。お返事ありがとうございます。

そうですね、西洋型の皇帝は官僚組織と市民の人気の上に成り立っているんですよね。

最後の皇帝が1918年までいたんですから、それからまだ90年しか経っていません。
ロシアはともかく、ドイツ、オーストリア(一時はフランスにもいた)の皇帝は、明確に官僚組織と市民の人気によって成り立っていましたね。

ドイツ・フランス・オーストリアの市民は、皇帝にあたる存在が現在いなくて一種の寂しさを覚えているのかもしれません。
それでEU大統領が皇帝のような存在になるのを許容したり、むしろ歓迎するのかもしれません。

ドイツでナチスが台頭したのも、第三帝国を自称したり市民のノスタルジーに訴えたのが一面にあると思います(戦前は、フランス、オーストリア、イギリスなどにもかなりナチスのファンがいたようですし)。しかし、いにしえの皇帝より横暴な、どこか不自然な独裁で、破滅して黒歴史扱いになったと思います。
ロシアについては勉強不足でよく分かりませんが、あそこは西洋ではないような気もしますね(^^;

でもべっちゃんさんが危惧するとおり、今後のEUで各国の主権が大丈夫なのか、利害の対立をどう裁定するのか、矛盾が残ると私も思いますね。

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