インドの病理(二)
陰暦 十一月三日
国民会議派のネルー一族は両者の融和に努めました。インディラ・ガンジーは特に不可蝕賤民の保護に心を砕いたのですが、それがヒンドゥーの反撥を招いて 暗殺されてしまいました。ネルー一族に反対する陣営は(野党も国民会議派内部も)不可蝕賤民優遇策への反撥を煽ってついに90年代にネルー一族を政治の中 枢から排除することに成功してしまいます。それ以降、不可蝕賤民が多くを占めるムスリムは暴力闘争に傾斜をしていきました。
インドの仏教のことも触れておきます。インドでは仏教は千年前のイスラム王朝侵入時に徹底的に弾圧されたためかなり衰退してしまいました。しかし近年、日本の僧侶を中心にして、布教が進んでいます。
これもやはり改宗者はスードラや不可蝕賤民が主であるそうです。今のところ仏教徒の間では暴力闘争をして世の中を変えていこうという動きは出ていません。
また、現地に進出した日本企業は差別することなく従業員を採用し、工場内での差別を禁止しているので、下層民の従業員が奮起するために高い生産性を発揮しているという情報もあります。そもそもバラモンは体を動かすこと自体を卑しむので、製造業が富を生み出す近代社会に適応することはできません。
上層民は金融やソフト産業に就職することを好むのですが、どちらも今回の金融危機によって打撃を受けました。身分が高いはずなのに製造業に就けない(つきたくないだけなのですが)ために富を得られない上層民が、体を動かすことを厭わず、日本やアジア・欧米の会社の工場で働くことで豊かになっていく下層民に嫉妬している、という新たな問題も生じているのかもしれません。
そう言った意味で今回の不況や昨今のイスラム原理主義者の先鋭化によって、インド内部の社会対立が過敏な状態になっているのかもしれません。
最後にインド南部について。ドラヴィタ系の文化が強い南部はあまり差別がなく、女性の地位も高いです。海外で活躍する印僑も多くは南部出身です。宗派対立が激しい西部や、種姓が強固で部族対立が複雑で外部の人間には手が出せないガンジス川流域よりも南部の方がこれからは発展するのではないかと四年前に旅行して思いました。
ただし南部でもタミル・ナードゥでは対岸のスリランカで続いている仏教徒とタミル族の対立に肩入れしている人が多いので、仏教徒は注意する必要があります。インドというのはとても複雑な世界です。
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