「ドラマ・男装の麗人」感想
陰暦 十一月十六日【望】
先週録画しておいた「男装の麗人」を視聴した。近頃のテレビドラマとしては非常に力が入っていた。脚本も良かったし、役者の演技も上手だった、音楽も効果的であった。テレビ局もやればできるではないか。
「男装の麗人」とは男の扮装をした美女の意味で、戦中の満洲と支那と日本を股にかけて活躍した川島芳子を題材に取った小説の題名である。
川嶋芳子はもともと清朝で最も高い格式を持つ王家である粛親王善耆の第十四王女として生を受けた。しばらくして辛亥革命によって清朝は滅びた。しかし清王朝の人々は北京の王宮で従来通りの生活を許されていた。権力を握った袁世凱が清朝に同情的であったのと、まだ根強い皇帝への国民の愛着を恐れたからであった。
粛親王善耆は大陸浪人の川島浪速と懇意であり、親交の証として娘のケンシ(顕王子)を養女として与えた。川島浪速が清朝復辟(ふくへき:清朝を復活させること)に協力していたからであった。
ケンシは芳子という名前を得て日本人として育てられる。しかしモンゴルの王族と結婚させられたものの二年で離婚し、上海に出没。清朝のシンパと日本軍の間の連絡係のようなことをしていた。そのころから男装をするようになったといわれている。
満洲事変、特に溥儀の皇后婉容を天津から脱出される作戦で主導的役割を果たしたと言われている。端麗な顔立ちで、歌や詩の才能もあり、大陸や日本で一時期大いにもてはやされた。
しかし命を懸けて建国した満州国が関東軍に傀儡国家に過ぎないことが分かると深く失望し、活動はしぼんでいった。終戦を北京で迎え、中国国民党軍に捕らえられ漢奸(敵国に協力した売国奴)として処刑された。しかし生存説もある。
テレビ朝日のドラマの方ですが、黒木メイサが熱演をしていました。"男装の麗人"として容貌は申し分なし。そして自らのアイデンティティーに悩む芳子の不安定さを見事に演じていました。
養父の浪速が芳子を手込めにするシーンをきちんと挿入されていました。この事件が芳子をして無軌道な行動に駆り立てたと言われています。
田中隆吉や甘粕正彦といった満州国に取り憑いて野望を実現しようとする軍人もなかなか魅力的に描かれていました。芳子にすがって泣き付く田中など、当時の軍人の女々しさが表現されていて実に良かった。あと田中隆吉は確かデブだったと思うのだが(^^;
関東軍のことも、プロトタイプの悪人集団として描かずに、彼等なりの事情があって行動していたことをちゃんと描いていて、大したものだと思いました。満蒙開拓団のために満洲人を追い払う軍人も、ショッカー扱いせずに、冷静な軍人として描いていた。仕事としてそういうことが行われていたから戦争というのは怖いんですよね。本当にあったのかどうかも分からない絵に描いたような残虐行為なんかよりもこっちの方が根深い問題を抱えているのです。
高嶋政宏の溥儀も良かったです。なんなんだあの妖しげな日本語は。頼りない男を演じさせたら天下一品ですね。
哀れ川島芳子は捕らえられて銃殺されてしまうわけですが、これまた死の恐怖に苦悶する中年の芳子を真矢ミキが好演していました。一世一代の女傑だって死を前にしてはああならざるを得ないでしょう。戸籍の下りは事実なのでしょうか、自分を偽ることでしか命を長らえることができなかったとは哀しすぎます。
日本に協力したせいでこのような目に遭った人は数多く。これについてはわれわれは背負っていかなければならない宿業だと思います。
非常に良いドラマだったと思います。
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