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2008年12月12日 (金)

シルバーロードとドル(二)

陰暦 十一月十五日

 このように、世界共通の決算商品を発行する国は、価格差が存在し続ける限り、通貨発行益を得ることができます。第二次世界大戦に勝利して以来、この利益 を享受し続けていたのが米国です。ドルを発行し続けることによって、ドルの価値は下落します。これは借金によって消費をしている米国にとっては自分の債務 が減少することを意味します。

 ドルが飽和した国からは当然ドルでは買い物はできなくなります。しかし、それはその国にとっては輸出ができなくなることを意味しますので、困るのは物を作って売る方です。90年代以降の日本とドイツの継続的な不況は、円とマルクがドルに対して十分に高くなってしまったことによっておきました。

 先進国ではドルは飽和してしまったので、ドルは後進国に向かいました。これが90年代末から00年代前半にかけて発生した新興国の急激な発展です。信頼できる通貨が不足していた支那・ロシア・インドといった旧社会主義国は争って物を作り(石油を掘り)ドルを輸入して市場経済を発達させました。

 面白いことに、今回の価格革命も終着点は支那であったのです。

 今回の価格革命も、とりあえず支那の沿岸部で十分にドルが行き渡ったことにより終了しました。支那の奥地やインドの奥地、そしてアフリカという未開拓地がまだありますが、ここはまだ米国に輸出できるような物を製造できません。米国は通貨発行益の旨味を失いました。後に残されたのは借金の山です。

 米国の真似をして通貨発行益を得ようとしたのがユーロでした。しかし、ユーロは域内に国際金融市場を持たなかったため、ロンドンに頼らざるを得ませんでした。これにより、通貨発行の旨味を英国に掠め取られてしまったのです。

 ロンドンはユーロへの期待と、ユーロ圏内の金融がずぶの素人であるのをいいことに多額の利益を上げました。しかし他人の金を使ってはる博打は高く付く物です。何せ担保の用意がないので、負けたときに大変なことになります。

 ユーロの発行高は急激に増大しましたが、そのほとんどは域内で流通しています。ユーロの外での流通量は、言われているほどは増えていません。なぜユーロ圏内でこれほどユーロの流通量が増えたかというと、ユーロに対する期待を使って、欧州の企業が大量にユーロ建て社債を発行したからです。ここ数年の発行増はほぼ社債で吸収されています。ここしばらくの欧州の好景気は一種の隠れ公共事業による経済成長だったわけです。

 いずれユーロがドルの向こうをはる国際決済通貨になる期待から、主に新興国や中東の金融機関が大量にユーロ企業の社債を購入しました。ユーロの価値が上がれば、社債の価値も上がって儲かると踏んだのです。ユーロ企業がミニ価格革命の恩恵を受けられたのでした。

 しかし所詮はドルの劣化コピーでしかないので十年を待たずしてユーロ版価格革命は崩壊しました。あとには社債の山が残されました。米国の家計債務ほどはひどい額ではない物の、かなりに上っています。ユーロ企業は今後かなり大変なことになるはずです。しかも社債の借り換えを使用にも、もう外国人は暴落したユーロ建ての社債などは買ってはくれませんので、倒産を防ぐためには政府やECBに買ってもらうしかありません。結局これも政府債務に付け替えるしかありません。欧州各国の政府債務が十年以内にGDP比率で100%を超えるのはこれでほぼ確定的です。

 しかもこれに高齢化が襲ってきます。欧州の国民は高福祉国家に安住していましたので、米国ほどひどくはないものの、日本ほどは貯金がありません。従って、今度は産油国や支那・インドあたりから、その国の通貨で高い金利で金を借りなければならなくなります。

 今回の資産バブルの崩壊によって、欧州の年金基金は元本割れをしています。年金は、直接は基金から給付されることはないとはいえ、今後に本格化する高齢者の増加のための準備金が毀損したわけですので、欧州の高齢者はこれから地獄を見ます。日本の年金問題など可愛い物です。欧州の国民が、自分たちの共有財産が金融業者の火遊びのせいで、真っ黒焦げになったことを知ったときに何が起きるのか、ギリシャにその片鱗がみえています。

 日本人のように政府を信用しなさ過ぎるのも考え物ですが、欧州のように政府に頼りすぎるのも考え物ですね。

 日本が今回の価格革命最終局面で最小の被害で済んだのは、江戸時代と同様に、日本が金融的には既に鎖国状態にあるからです。

 江戸時代の日本は、南米に次ぐ銀の産出地でしたので、スペインから銀を輸入する必要がありませんでした。ですので、スペインとしても日本を自由にできなかったわけです。

 今回も、日本は世界一(最近は支那が一位ですが)のドル保有国とはいえ、そのドルはほとんどが政府や企業の口座に貯められていて、国内には流通していません。それに対して、英国や欧州ではみんな財テクでドル債券を買ったりしていて国内でドルが流通しているわけです。

 現在最強の状態にある円の後ろ盾になっているのは、日本人のマンパワーです。前回は石見銀山と武士の武力が日本を守りましたが、今回も有り余る貯金と日本人の力が日本を守りました。

 かといって、円版価格革命は日本には似合いませんし、そもそも日本人は海外からそれほど買う物がありません。安い石油が買えたとして、この狭い国土で自動車を飛ばしてもたかがしれています。

 この人間の力がある限り、世界に混乱が来ても日本は大丈夫です。ただし問題はドル価格革命が一段落し、米国は借金を返済するまでは身動きが取れないという状況にあって、米国のように消費しまくって世界を食わせる力はない日本が、世界の安定のためにどのような役割を果たすことができるかですが、このあたりは麻生さんの得意分野でしょうから頑張ってもらうしかありません。


追記 この場合の"借金の返済"とは安定的な活動が維持できる水準にまで債務が軽減されることであって、完済を意味してはいません。

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