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2008年12月 8日 (月)

記憶で辿る財政再建vs社会保障(二)

陰暦 十一月十一日

 今ある様々な問題の根っこには"出生率の低下"があります。日本の女性は子供を産まなくなりました。子供の数さえ多ければ、需要も増えますし、将来の生産力も確保できます。日本も昭和60年(1985年)までは他の先進国と遜色ない出生率がありました。けれどもその後、日本と英仏は大きく別れて、日本の出生率は人口維持が不可能なレベルまで下がりました。

 この年に何があったかというと「男女雇用機会均等法」が施行されました。企業に女性の雇用の拡大が求められたのです。当然女性の婚期が遅れ、子供が減ることが危惧されました。けれども英仏では日本よりも女性の就業率が高いにもかかわらず子供の数はあまり減ることはなく、日本は急激に減りました。なぜでしょうか?

 日本の行政には「とりあえずやりやすいことから手をつける」という習い性があり、これが良い方にも悪い方にも働きます。この場合、「とりあえず女性を企業に押し込んでしまえ、生産力も上がるし」と言うことで女性の就業ばかりが進み、そのあと企業に入った女性が子供を産み育てることを考えていませんでした。

 私の母は里美村という茨城県の寒村で教師をしていました。その理由は、両親が県外から来たので、僻地しか教師の口がなかったからです。ですので父の職場に近い村に赴任しました。今思うと、その村は福祉が充実していたと思います。できたばかりの村営住宅を世話してくれて、私は二歳で本来なら保育所では預かるのは難しかったのですが、特例的に預かってくれました。折角来てくれた教師を大事にしようという熱意がありました。自然が豊かな里美村で幼少期を過ごせたことは良い思い出になっています。

 居心地が良かったからか、そのあと両親は二人子供を作り、共働きなのに三人兄弟になりまし(笑)生まれたばかりの妹の世話は、母の職場の近くに住んでいた退職した元女性教師が引き受けてくれました。しかし三人目の弟が生まれると、さすがに共働きは難しくなってきたので、母は教師は辞めて家事に専念してくれました。この選択には子供として感謝しています。

 以上のことから分かるように、周囲の支援があれば、職業婦人も子供を作ります。しかし日本の行政は、女性の就業ばかり進めて、育児支援を怠りました。それどころか労働力が足りなくなってくると「男女雇用機会均等法」の男女の平等を拡大解釈して、女性の労働条件を厳しくする方向に走りました。これでは女性は子供を産まなくなって当然です。それどころか最近は結婚すら忌避するところまでエスカレートしています。

 保育所の拡大くらい一兆円そこそこしか財源はいりません。なぜそれができなかったのか。これについては明らかに自民党が悪いのです。自民党の年配男性議員が、保育所の拡大は家族の崩壊につながると主張したからです。家族にからめれば、田舎の高齢者の票を期待することができました。また、マドンナ旋風で当選した社会党の女性議員達が、子育て世代の支援に手をつけずに、外交とか税制とかで政府の悪口を言うことにかまけていたのもまずかったと思います。これのせいで「政治なんぞに口出しをする女はろくな奴がいない」と自民党をますます頑なにしてしまいました。土井党首の戦略は最悪でした。

 90年代の社会党は、福祉について少しづつ政府から国民への分配を引き出す手法を取るべきだったのです。それなのに一足飛びに政権奪取に飛びついたために、国民から不信任をくらって崩壊してしまいました。そのあとにできた新進党と民主党は、左翼に見えて財政的には自民党よりもタカ派です。これによって、日本の政党は右も左も財政再建派になってしまいました。

 90年代の政界再編の一番の効果は、野党が福祉の充実の旗印を下ろして、財政再建派になってしまったことにあります。小沢氏は細川政権でも、細川総理が「国民福祉税」を言い出したときに政権を崩壊させましたし、小渕政権に自由党として参加したときも、景気刺激を公共事業拡大でやりました。あの時に公共事業に百兆近い金がつぎ込まれたというのに、保育所には一銭も回ってきませんでした。

 民主党の党首としても、子育て世代に金をばらまくことには同意しているものの、福祉の制度としての充実は慎重に避けています。一時的なばらまきは良いけれど、福祉が制度として確立することには反対なのです。自覚してかせずしてか、小沢氏は財政再建プロパガンダの一端を担っています。それは本来なら財政再建を掲げて戦うべき自民党が福祉国家を目指し、逆に労働組合や弱者の圧力団体を支持母体としているはずの民主党が、埋蔵金を切り崩し、政府が持つ雇用安定化機能の民間売却をしてまで財政再建を主張するというねじれ現象を生じるまでエスカレートしています。

 こうしてみると、財政再建プロパガンダと、職業婦人が働きながら女性としても幸せになれるような社会を作ることを妨害する動きは連動しているのではないかという思いが強くなってきます。

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コメント

ソースは失念しましたが、結婚した女性に限って計算すれば、出生率は2に近い値になっているそうです。

つまり、ここんとこの出生率の低下は非婚率の増加にあるのでは?ということ。
で、その背景には価値観の変化、女性の経済力の上昇、男性の経済力の低下がある、とのこと。

・・・難しいですねぇ。

その結果は間違っていないと思います。先進国では、夫婦の合計収入が多いほど子供を多く産むことが分かっています。

子供を育てるにはお金がかかりますし、母親といえども人間ですので、半日でも家族から離れる時間があった方がストレスを貯め込まないですむのでしょう。

私が働いている会社は、比較的働くお母さんを大事にする会社で、子供を産み育てている方が多いのですが、だいたい二人以上産んでいますね。

なるほど・・・。やっぱりそうか。

暴論を承知の上で・・・
手っ取り早く子供の数を増やすなら、3人目からはドーンといろんな特典をつけるようにしたらどうでしょう。

もうしょうがないから、すでに2人居る人が3人目をつくりたくなるような政策というわけです。産まない人の分も産んでくれ政策。

・・・ダメ?

姫路市などは子供一人につき二万円だか配っているらしいですよ。おかげで近隣在郷から子育て世代が引っ越してくるそうです。

子育て世代に配ったお金は、最終的には地元に落ちますので、自治体としては回収できます。だからありだと思います。

けれども、一番効果が大きいのは、
・出産・子育てによって退職しないでもすむ職場、
・出産・子育てでブランクができた人も、すぐに以前のキャリアに応じた待遇で受け入れてくれる会社
・労働時間に融通が利く職場(半日だけ働くというような勤務形態の正社員を大企業にも認めさせる)
であるようです。

私も以前は「子育ては母親が家に入ってするべき」という意見だったのですが、色々と統計を見ると、子供を増やすには働く母親を優遇するしかないらしく、しかもその効果はかなり高いと言うことが分かり、宗旨替えをしました。

 子育て世代の支援は継続的な施策が不可欠なので、保育所の増設、保育士の増員、労働契約の見直し、職住の地域配分の見直しといった投資が必要なんですね。

 姫路市の政策や、民主党の子育て支援金も悪くはないのですが、お金はすぐに引っ込めることができるので、子供を増やすところまではいかないと思うのです。いつまたお金を引っ込められるかもしれないくらいのことは、女は見抜きますからね、こういうことには女性は敏感です。

 逆に、一時的に落ち込んだ景気を上向かせる起爆剤みたいなものは、麻生総理がやろうとしている一時金の分配とか中小企業への融資支援の方がいいのです。

 こういうのは継続的にやると経済の政府統制が強まりますし、金がかかりすぎます。景気が良くなったらすぐに引っ込めて民活に任せる方がよい。

 でも民主党はこういう景気対策の方は継続的な制度としてやる気満々なんですね。補助金や政令をいじくることで、特定の業者を育成することが景気対策と勘違いしています。

 私は最近は大きな政府派に近いのですが、民主党のこの経済政策は大きな政府の悪い面が出ていますので失敗するでしょう。

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