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2009年2月23日 (月)

北風の説得、太陽の説得

陰暦 一月廿九日 【皇太子誕生日】

 十日くらい前に「ノムさんの時事短評」の主宰者である野村勝美さんにメールを送りましたところ、光栄にもサイトに私の意見を掲載してくださいました。その後、何通かメールをやりとりするうちに自分の説得法の問題点が見えてきました。

 従来の私は相手の問題点を指摘し、その筋立ては成り立たないので、私の意見を採用するしかないという論法をよく使っていました。これはお互いのことをよく知っている仲間内では成り立つのですが、アウェイでは逆効果だったのかもしれないとようやく気がつきました。

 学問の世界であれば、相手が間違っていることを指摘するのは親切に当たります。しかし実社会においては間違いを指摘するよりも、自分の意見を採用して相手に動いてもらうことの方が大切ですので、より相手が自分の意見を採用しやすいように持ち込む説得術の方がいいのかもしれません。

 どこでそう感じたかというと、国民年金の全額税負担についての説明です。全額税負担は、年金の専門家の間ではどだい無理な話であることはだいぶ前から証明されていました。学問の世界だけではなく、政府の諮問会議である社会福祉国民会議においても、去年の秋に無理だという判定が下されました。

 去年の暮れに岡田元民主党代表を中心とする与野党の議員がほそぼそと全額税負担を提唱する議連を結成しましたが、その議連のしょぼさ自体が立法の世界でもこの政策が命脈を断たれたことを意味していると思います。

 野村さんだけでなく、色々な場で私はこの政策が無理であることを説明しているのですが、なかなか賛同は得られませんでした。そこで、はたと思い至ったのです。国民年金の全額税負担に賛成している人たちは、消費税の引き上げには賛成している、この人達の消費税引き上げを受け入れようという決意をしぼませるような説得の仕方はまずいのではないか、と。

 全額税負担方式の賛同者は、今の日本の社会保障が財源不足にあるということには気がついています。ではなぜ年金にこだわるのかというと、自分の老後に関わるというのと、年金の総額が巨大なので、これを何とかしないと国家財政が破綻するという心配があるからでしょう。この場合「全額税負担方式なんか無理だ」と言うよりは「どうせ消費税を上げるのなら年金以外に回してはどうか」という言い方をした方がいいのではないかと思うのです。

 社会保障というと、年金、医療、介護、保育、教育、失業対策などがあります。この中では年金は一番優遇されていますし、五年や十年で破綻するような状況にはありません。それに対して、残りの分野は今何とかしないと明日にでも破綻しかねないほど疲弊しています。

 国民年金の全額税負担方式を実行しようとすると、2020年くらいまでに消費税率を17%くらいまで上げなければならないそうです。そこまで消費税率を上げる覚悟があるのならば、まず医療を始めとする分野に回してそれらを立て直してから、年金に取りかかっても遅くはありません。

 "全額税負担方式をやる!"と一旦決めたら最後、この先の消費税の引き上げ分の税収は全て年金に吸い込まれて、医療、介護、保育、教育、失業対策は全て後回しになります。私は老人を大事にしたいとは思いますが、さすがにこれは高齢者が現役世代から富を吸い上げすぎだと思います。

 国民年金の税負担を1/3から1/2に引き上げるだけで、国民年金は今後数十年は破綻を免れることが出来るそうですので、まずお年寄りにはそれだけで我慢をしてもらって、今後しばらくは消費税引き上げによる増収を医療、介護、保育、教育、失業対策の充実に回させてほしい。こういう説得の仕方の方が理解を得やすいのかもしれません。

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コメント

孫さんが携帯電話会社を持つ前
電波入札制にすれば20兆円できると
サンプロで言ってました。
電波権益は米国が持ってますけど。。。

憲法の制約もあり出来ないことですが
宗教法人の課税も考えられます。

消費税以外も議論の対象にしていただかねば

 金にできる限りのものは全て金にしてから増税という考え方もありますね。

 まあ私個人としては、福祉というのは国民一人一人が受益者ですので、消費税や所得税のような形で広く利用料を徴収する方がいいと思っています。

 年金にしても医療にしてもお金はすごく必要ですので、20兆円のお金ができても3年くらいで多分使っちゃうと思います。福祉は金食い虫です。だから高所得者が福祉国家を忌み嫌うのも分からないではありません。

 福祉を充実させる場合、持続的な財源を確保することが重要になります。

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