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2009年2月11日 (水)

本丸が見えてきた(五)ー年次改革要望書

陰暦 一月十七日 【建国記念の日】【橿原神宮例祭】

 企業が内部留保を増やし、株主への配当や重役の給与を増やしたのは、例の年次改革要望書の影響が強いでしょう。駐米日本大使館ー政策関連文書(経済・通商関連文書) 規制改革と投資問題をご覧下さい。

 年次改革要望書によって日本の政治がコントロールされているとは言いませんが、これによって日本国内の同調者を勇気づけ、政官財の中で彼等を引き 上げる効果があることは否定できません。法的拘束力はないけれど、実質的な強制力に近いものがあるわけで、勅語とまでは言いませんが、以仁王の令旨くらい の力はあると思います。以仁王にはなんの法的権限もありませんが、彼の檄文は平家に不満を持っていた人に行動を起こさせる力がありました。

 規制撤廃や自由貿易は結構なことだと思うのですが、問題はノンバンク優遇策だと思います。年次改革要望書は銀行を弱体化させ、投資銀行や年金基金といったノンバンクへ金を集めることを狙っていました。

  1. まず累進課税を弱めることによって企業の内部留保と経営者の給与が増加します。
  2. 経営者は投資銀行や民間の年金にお金を預けます。
  3. 内部留保は株式の配当になります。株式を持っているのはやはり投資銀行や年金基金、そして高所得者達です。
  4. かくして、資産家やノンバンクが栄える世の中ができあがります。

 年次改革要望書は、銀行に敵対的な考えを抱く人たちが作ったのでしょう。彼等が何故銀行に敵意を抱いたのかはよく分かりませんが、銀行は色々と監視が厳しいので、一旗組にとっては余り旨味がなかったのかもしれません。

 しかし彼等高所得者が一人で一万人分の給与をいただいたところで、贅沢をしてもせいぜい一人で数百人分くらいの消費しかできません。「不都合な真実」のゴア元副大統領だって、無駄遣いしたと言ってもせいぜい一ヶ月で電気代百万円に過ぎません。一般家庭百軒分です。もらった給料に比べれば大した消費ではありません。

 おそらく消費は収入の√にでも比例するのではないでしょうか。収入が増えれば増えるほど貯蓄は積み上がるようにできています。

 このように、高所得者が潤っても、ひたすら金がノンバンクに積み上がるだけです。ノンバンクも高配当を求めて危ない橋を渡ると言うことになります。銀行預金には人々はそれほど高い利子を求めませんが、ノンバンクには高い利子を求めます。でなければノンバンクである意味がありません。必然的にバブルがおきやすくなります。今回のバブルは米国と英国が1980年代以降ノンバンク優遇策を続けてきた必然的な結果といえるでしょう。

 積み上がったお金は凶器です。お金は使わなければ害をなします。お金を使わせるためには、積み上がっている場所から取り上げて、金が欲しくてならない貧乏人に分け与えるしかありません。給付金や最低賃金の引き上げなどで直接持ち金を増やすのも悪くはありませんが、福祉の充実で脇を固めて、間接的に貧乏人の持ち金を増やす方が健全であると思います。企業に与えるショックも小さいでしょう。

 1980年代以降、日米英といった金融が最も発達した国で起きていた様々な政治経済の混乱は、国と高所得者の間の金の奪い合いでした。メディア戦略によって00年代に高所得者は低所得者をだまして、減税やノンバンク優遇策といった勝利を手に入れましたが、悪銭身に付かずの諺通り、バブルという勝利の美酒によって自滅しました。

 英国はかつての福祉国家に戻るべきでしょうし、日本と米国も福祉国家を目指すべきでしょう。

 米国はどうなるか分かりませんが、オバマ大統領は財政的にリベラルであるので、四年で大きな政府への米国民の拒否反応を和らげることができて、二期目にはいることに成功すれば、米国の福祉国家への道筋に光が見えてくるかもしれません。ただしこれはオバマ大統領にとっては茨の道です。オバマ大統領が福祉国家を提唱した瞬間、彼は暗殺されてしまうかもしれません。米国はオバマ第二期に、去年を越えるの政治的な対立を経験すると私は思います。

 日本では自民党と官僚が観念して、麻生政権という福祉国家を志向する政権ができました。まだ夢を捨てきれない資産家は民主党を改変して、金持ちのための政党にして最後の戦いを挑んでいます。今の民主党の代表や幹事長が政界でも有数の資産家で、代議士の中に不明朗な取引を繰り返して節税(脱税?)に血道を上げている人が若干名いるのは、この政党が高所得者達から与えられた役割を象徴していると思います。

 まさしく類は友を呼ぶと言えるでしょう。あるいは朱に交われば赤くなるかもしれません。民主党は、三年前から、彼等に金を与えてくれる人と同じタイプの人間が集まる政党に成り下がってしまいました。彼等に期待していた人にとっては残念な結果ですが、現実を直視する必要があるでしょう。

 麻生政権が今年に入ってから、高所得者からお金を回収する方法や、デフレからの脱却策を議論するようになり、司法が脱税を厳しく取り締まっているのは、自民党と官僚が観念して消費税主体の税制にこの国を変えることを決心したからであり。不明朗な取り引きによる脱税を絶対に許さないことを国民に知らせようとしているからです。

 また、メディアは貧乏人の味方のような顔をして近づいてきますが、その実は高所得者の味方です。だまされてはなりません。広告を出す企業も、本当の意味で消費を拡大させてくれるメディアを選んで広告を出す必要があります。

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