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2009年2月 9日 (月)

本丸が見えてきた(三)ー橋本デフレ・小泉デフレ

陰暦 一月十五日【小正月】

 ここで小泉・安倍政権の位置づけをしておきましょう。

 90年代の竹下派政権は、法人への財産の集約と消費税中心の税制作りを政策の柱としていました。バブルの崩壊と不良債権問題は80年代に起きたことなので竹下派政権には責任はありません。これは財政よりも、金融の問題であり、責任は日本銀行が負うべきです。

 村山内閣まではこの政策はうまくいっていました。しかし橋本内閣の時に財政再建を掲げてしまいました。これによって不景気が発生しました。消費税の増収を橋本政権は福祉として国民に配分せずに、国の借金の元本返済に充ててしまったのです。

 これは完全に大蔵省の失策です。大蔵省は財政赤字の削減を至上命題としていたために、まず支出を絞ろうとして福祉国家のネガティブキャンペーンを張り、福祉への支出がしにくい空気を作り、政府債務が拡大すると将来の負担が増えると恐怖を煽って、財政再建が正義であるという空気を作ったのでした。

 平成10年(1998)の景気後退は、消費税によって国が集めたお金を、国債の元本返済に充ててしまったためにおきました。国債の元本を返済したら、回り回って最終的にはその分だけ金融機関が持つ現金が増えるはずです。そのお金を金融機関が企業などへの融資へ使えば、元本を返済した分は、また国民に戻ってきます。あるいは大蔵省はそれを期待したのかもしれません。

 しかし、当時の金融機関はバブルの後遺症で不良債権を抱えていました。国債元本の返済による増収は、不良債権という見えない穴を埋めるために消えてしまいました(ということになると思います)。つまり、政府がせっせと国債の元本を返済しても、そのお金は不良債権というブラックホールに吸収されて、国民には返ってこないという構図ができあがってしまっていたのです。

 不良債権というブラックホールがある時に、政府が財政再建を進めると、経済からお金がどんどんとブラックホールに吸収されることになりますから、国からお金が足りなくなります。お金が足りなくなると、お金の価値が上がります。即ちデフレーションです。

 橋本内閣の時に、消費税増税と財政再建と不良債権問題が同時期に噴出したのは、このように見えない繋がりがあったからでした。大蔵省が不良債権の額を誤ったかもしくは隠していたためにこのような混乱が発生したのでした。当然経済混乱によって自民党は参議院選挙に大敗してしまいます。腹を立てた自民党は大蔵省から金融部門を分離して金融庁を作りました。

 それで小渕内閣は政府支出を公共事業という形で拡大しました。公共事業をやれば企業にお金が流れます。企業はそのお金によって、従業員に給与を払い、不良債権も返済しました。バブル崩壊後、日本の企業はGDP30%分の債務を圧縮しましたが、政府の債務はGDP60%分増加しています。半分は企業の債務返済に充てられ、半分は国民に給与として回りました。

 しかしこの政策には重要な問題点があります。企業に勤めている人にしかお金が回らないのです。ここで小渕内閣が福祉国家を目指して、福祉への歳出を拡大することによって、低所得者を助けて、低所得者の消費拡大によって企業にもお金が回るようにしていれば、「国は借金を増やして、建設業界ばかり潤わせている」という非難を受けることはなかったかもしれないし、今問題になっている医療の崩壊や、保育設備の不足による少子化もなかったでしょう。

 お金も生産設備もいくらでも海外に逃げることが可能な現代社会において、先進国が需要を拡大しようと思えば、政府の福祉支出を拡大するしかありません。金持ちの収入が増えても貯金するだけですが、貧乏人の収入が増えた場合、彼等は生活の質を上げる方向に進むので、支出します。福祉を拡大するのが国内需要喚起策としては一番効率的であるのです。

 小渕内閣の大公共事業によって、大規模な開発はあらかたやり尽くしてしまいました。この先は福祉を広げるしかありませんでした。公共事業は建築物ができれば終わりですので、国債や埋蔵金などの一過性の財源でも可能ですが、福祉は人間がいる限り続きますので一過性の財源では不可能であり、増税をするしかありません。

 小泉内閣は、どこまで小泉総理自身が自覚していたのかは分からないのですが、この増税を回避することを至上命題としていました。だから、事業主や資産家(即ち高齢者)の熱狂的な支持を受けたのです。小泉内閣の思惑としては、税負担が減ることによって、金持ちや企業が支出を増やし、国民が潤うはずでした。

 しかし、小泉内閣の減税政策によって潤った人たちは、お金を貯め込むだけで、支出をしませんでした。彼等が貯めたお金によって、金融機関は再び利子で破産しそうになったために、今度は海外に貸し出しました。今回の世界的バブルの最終盤で火に油を注いだのはこういった円キャリートレードでした。われわれ日本人にも責任はあるのです。

 小泉内閣がやった減税も、国内からお金を海外に逃がすという結果になりました。だから景気が回復したはずなのにデフレは終わらなかったのです。橋本内閣は増税によってデフレを招きましたが、小泉内閣は減税によってやはりデフレを招いてしまったのです。橋本内閣の時のブラックホールは不良債権でした。小泉内閣の時のブラックホールは、サブプライムローンやEU企業の社債であったといえるでしょう。面白いことに橋本デフレも小泉デフレも両方ともバブルと不良債権が関わっているのです。

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コメント

橋本さんの時は、見えない所にお金が吸い込まれていた、という事ですね。
だからといって、小泉さんが税負担の悪循環を回避した筈だったんですが、その恩恵は世界各国に逃げ散らばってしまう。金持ちだけが優遇されても効果は限定的。

低所得層を侮る事なかれ、ですね。
オバマ大統領もそういう感じですが。
国全体の経済を安定させる為には、結局、福祉しかない。福祉を大切にしなければ、一定の消費は期待出きない。

べっちゃんに納得でした。

福祉ですが、日本は、社民・共産党が上手く機能していないのかなぁ……。この連中が与党自民党を操縦できなければ、何の為の国会議員なのか……。民主主義である意味がないですね。

だからといって、民主党が政権取ったって健全な福祉国家になるとは思えないです。自民党を超えるような政策はとれないんじゃないかな……。

そもそも、その時のアメリカの影響を受ける政権になるのが真実の日本の立場であり、
政権交代をしても、前政権の通りに、アメリカのいいなりになる、のなら政権交代に意味があるとは思いませんね。
それと、どうせ、官僚主導になると思いますから。
日本がアメリカの真似して二大政党になったって大して意味はないでしょう。

だったら、民主党なんて中途半端な党は解体して、一応、福祉を心がけている社民・共産党が厳しく与党を監視する体制を成熟させた方が良いでしょう。辛子でいいんですよ、万年野党でいいんです。企業や資本家とつるまない党であれば。

吉田茂が一番日本の国の性分を分っていたと思います。
彼は自分のブレーンにも左派を登用して、左派のいい所を思う存分に利用していたようです。

小沢さんは自分の所の選挙区で僕も心苦しい所もありますが、日本の二大政党制で出現するリベラルな党では、自民党政策を強力に覆す事は出きないように思っています。民主党福祉国家は挫折する予感。

菊池さんこんにちは

リフレ(マイルドインフレ)政策を主張する人たちは、橋本政権と小泉政権の初期に財政再建をしたことがデフレ不況の原因になったと主張しています。

確かに理論的にはその通りなのですが、借金返済という"良いこと"がデフレという"悪いこと"を導いてしまうのが、私もどうしても感覚的に納得がいきません。

たとえば80年代末にも政府は借金を返済しましたが、この時は銀行は金余りになってバブルを招いています。

不良債権やサブプライムローンという穴に吸い込まれたからと理解した方がしっくり来ると思うのです。

 民主党の政策というのは小泉政権の政策に近いです。そもそも小泉さんが民主党の政策をパクったんですね。

 小泉さんは最初の頃、民主党に政権への参加を呼びかけていました。福田さんも大連立を呼びかけましたね。自民党が野党に協力を呼びかけるのは「あなたの政策を採用しますよ」というサインなんです。

 民主党は小泉さんよりは福祉を重視する姿勢を示していますが、歳出全体は縮小するつもりですので、やはり日本全体としては消費活動は縮小してしまうでしょう。

 増税でも、日銀の国債引き受けでも、政府紙幣でも何でもいいですので、政府全体として使うお金を増やさないことにはどうにもなりません。

 こうしてみると村山政権や小渕政権は結構いい線いっていたんだなと思えてきます。消費税の5%引き上げを決断したのも村山政権でした。地震と毒ガスでは散々でしたが、村山総理は内政はきちんとやっていたんですね。

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