台風とほら吹き男
陰暦 一月廿六日
昔々あるところに小さな町がありました。そこに大きな台風が襲ってきました。上流からちょろちょろと泥水が流れてくるのを見た町内会長さんは、長年の勘でこれは大水が来るなと感じました。
そこで町の人た ちと一緒にせっせと土嚢を堤防に積みました。この町は数年前に来た台風が起こした洪水のせいで大勢の犠牲者を出していたのです。
そこに悪さばかりしているほら吹き男がやってきて言いました。
「洪水が来るだなんて嘘だ。町内会長はおおげさなのさ、どれ堤防に上がって会長達が無駄骨を折るのを眺めてやろうじゃないか」
危ないからよしなさいと町内会長は言いました。けれどもほら吹き男は耳を貸しません。そして遊びともだちを引き連れて堤防に上りました。町内会長達はせっせと堤防に土嚢を積んで、修理が終わると公民館へと引き上げました。川の水位が上がってきてほら吹き男も不安になってきましたが「大したことないさ、町内会の貯金を使ってこんなに無駄な土嚢を積んだりして、町内会長はひどいやつだ」とうそぶいていました。
やがて上流の山から鉄砲水が流れてきてほら吹き男達を流してしまいました。
命からがら帰ってきたほら吹き男は困り果てました。
「まずいぞ、このままでは村人達に袋だたきにされてしまう・・・」
「そうだ会長を悪者に仕立てよう、俺は口だけには自信があるからな」
ほら吹き男は、堤防の修理を終えて公民館で一休みしている町内会長に食ってかかりました。
ほら吹き男「どうしてくれるんだ、お前なんかが会長をやっているから台風が来たんだ、俺のともだちが流されてしまったではないか!」
町内会長「だから台風の日に川に近づくのはおよしなさいと言ったではありませんか」
ほら吹き男「うるさいっ!だまれっ!前からお前の顔が気にくわなかったんだ、台風が来たのも郵便ポストが赤いのも、みんなお前の責任だ!」
横を見ると、夜通し土嚢を運んでくたくたの消防団長が、軽く酒を飲んで眠りこけているではありませんか。
ほら吹き男「こんな時に酒を飲むとはなんて不逞なやつだ、俺なんかこんなにびしょ濡れなのに」
ほら吹き男は喚いているうちに何だか自分が本当に正義の味方になったような気がしてきました。そして町内会長や消防団長を公民館から追い出してしまいました。仲間のヤクザ者を引き入れて薬物パーティーを始めました。
修理したのとは別の箇所で堤防が崩れそうだとの知らせが入っても「それは前の町内会長の仕事が雑だったから、俺には責任はないね」と言って取り合わず、仲間とラリってでご機嫌です。
ほら吹き男はヤクザ者と知り合いですし、彼に睨まれると、あることないことを吹聴されて村八分にされてしまうので町の人たちは誰も逆らえません。この町は一体どうなってしまうのでしょうか?
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はじめまして、いつも拝読させていただいております。
今回のこのストーリー、今後どのように展開していくのでしょうか?とても心配でなりません。まるでどこかの町の事を鋭く描写しているようなのですが。。。さしずめ"世相を斬る"といったところでしょうか。
このストーリーの続編を楽しみに待っております。でわ。
投稿: べんちゃん | 2009年2月20日 (金) 09時32分
べんちゃんさん、初めまして
どうでしょうね、私なりに結末は考えていますが、本当は人間の想像力などにはおよびもつかない結末が待っているのかもしれません。
村人もきっと七十年前より少しは賢くなっていると思いますよ。
投稿: べっちゃん | 2009年2月20日 (金) 20時59分