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2009年2月 1日 (日)

嫁取り婚の謎

 歴史小説を読んでいていつも不満に思うことがあります。なにかというと、登場人物の結婚生活です。夫の実家に嫁が来ています。ありえません。

 日本で嫁取り婚が定着したのは江戸時代になってからです。それまでは妻問い婚が普通でした。妻が実家にいて、夫が妻の家にしばらく住む形式です。木下籐吉郎はねねの実家に居候して、舅の浅野又右衛門の前で小さくなっていなければおかしい。

 これは多かれ少なかれ外国でも言えることで、神聖ローマ帝国のフリードリッヒ二世はずっと母親の家で育てられ、成長してからは母親の実家の城が居城となっています。支那でも春秋戦国の頃はそうだったみたいです。古代のユダヤ教は女系主義をとっており、おそらく妻問い婚だったのでしょう。ダビデやソロモンは妻の尻に敷かれていました。

 歴史を見ていると、妻の実家がやたら権力を持って不思議に思うのですが、昔の権力者というのは自分の家という物がなくて、数多くいる妻の家をグルグル回っていました。そして、妻の実家の領地イコール王家の領地でした。たくさんの女と仲良くなって領地を広げることが古代の権力者の仕事だったのです。

 恋愛は即ち政治でした。恋愛が政治の真似をしたのではなくて、政治が恋愛の真似をしているんですね。男として魅力があり、女をメロメロにできることが即ち英雄の条件でした。

 娘に言い寄る男を父親や男兄弟がいじめるのが世界中の神話で重要なモチーフになっていますが、これは優秀な男がどうか試験しているわけです。娘の婿は次代のリーダーですし、優秀な男なら優秀な跡継ぎが産まれる可能性も高いでしょう。優秀な男なら、よその部族の女を射止めてくれるでしょうし、優秀な女なら立派な男を婿にしてくれるでしょう。

 女とその実家も必死です。強くて賢い男を呼び込まなければなりません。当然娘の教育には力を注ぎます。結婚してからも安心はできません。少なくとも一ヶ月は滞在してもらえないと子供はできません。男を引き付けるために、女としての魅力を精一杯アピールさせます。首尾良く立派な男が来てくれれば、男兄弟は命を懸けて婿を守ります。忠誠心というのは元々、一家のアイドルである看板娘とその子供のために、妻の実家の家の男達が働くことをスタート地点にしています。

 また生まれた子供の教育もしっかりやります。子供が大事にされているのを見れば、ますますその男は看板娘のところに入り浸ってくれるでしょう。

 当然妻の権利意識も強くなります。古代の方がどこの文化でも女性の権利が強いのですが、こういった背景があったからです。女性が男性の付属物になってしまったのは、嫁取り婚が主流になったからです。

 なぜ妻問い婚がすたれて嫁取り婚が主流になったかの説明を聞いたことはありません。これは中世に発生した大変化です。中世という変な時代、一神教という変な宗教の世界的な蔓延と繋がりがありそうだと思っています。嫁取り婚が発明されるまでは、十万年間人間の思想も生き方も安定していたのです。二千年前の人類に一体何が起きたのでしょうか。今も分かりません。

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コメント

はじめまして、

日本の婚姻通史
http://www.jinruisi.net/blog/2007/04/000156.html

このサイトなんかは参考になるのではないでしょうか?

より詳しくは、高群逸枝氏の「日本婚姻史」をどこかで入手し(借り)て一読されることをお勧めします。

phon_bbさん、初めまして

面白そうなサイトですね。御紹介ありがとうございます。

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