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2009年3月 7日 (土)

2018年までの米財政の見通し

陰暦 二月十一日

 今後の世界情勢を左右するのは、一にも二にも米国社会の高齢化とそれによる義務的経費の増大です。米国ではこれからベビーブーマーの大量退職が始まり、 それに伴って彼等に支払う年金や健康保険が重く国民にのしかかってきます。しかも消費者はこの数年間で積み上がった家計債務の返済を強いられますので米国 お得意の消費による経済拡大ができません。

 米国議会予算局の見通しThe Budget and Economic Outlook: Fiscal Years 2008 to 2018によりますと、財政赤字はGDP比3.3%以内に収まることになっていますがこれは現実的な推計ではありません。

 米国の義務的経費(社会保障費)は1997年から2006年にかけて平均して年率6.0%の勢いで増加してきました。これがこの推測では2010年から2018年にかけては5.6%の伸びに収めることになっています。97年から06年にかけての社会保障受給者の伸びは年率1%でした。これが07年から17年にかけては年率2.5%で増えていきます。受け取る側がこれまでの2.5倍のスピードで増えるというのに、給付の伸びを抑えることは不可能です。

 しかも、2008年の選挙では社会保障の充実を唱えたオバマ候補と民主党が勝利しました。民主党の支持基盤は労働組合や年金を受けている退職者ですので、現政権は社会保障給付の伸びを抑えることはできません。少なくとも今の給付水準は維持されるでしょう。それどころか水準が上がることを覚悟しておかなければなりません。

 1997年から2006年の社会保障給付の伸びは実質3.4%でした。予算局の見通しではこれが2008年以降も続くとしていますがこれは無理です。伸び率を単純に2.5倍するのが荒っぽいようでいて一番確からしい推測です。すると今後10年間の社会保障給付の伸びは実質で8.5%になります。

 2008年の社会保障給付総額1兆5,500億ドルが年率8.5%で増加した場合、10年後には2.26倍になります。乃ち3兆5,000億ドル(実質)です。

 さて2008年の予算局の見通しではGDPは今後10年間は実質2.5%で伸びることになっていますが、家計債務の返済がありますのでこの伸び率は少なくとも1.0%落ち込みます。しかし現状の米国の債務返済スピードを見るに1.5%は落ち込むと見ておいた方がいいでしょう。ですのでGDPの伸び率は実質で1.0%になります。2008年の米GDPは14兆ドルでした。これが2018年には15.6兆ドル(実質)になります。

 裁量支出(国防費や公共事業費など)の伸び率は予算局の見通しでは今度10年間は実質0%となっています。これは妥当な線でしょう。GDPが実質1%で伸びるわけですので、軍備の質は低下します。2018年は1兆900億ドル(実質)のままとします。

 米政府の歳入は2008年で2兆6,000億ドルです。これから10年間デフレ不況が続きますので、好意的に見て歳入は増えません。それどころか減少を覚悟するべきです。好意的に見て2018年も2兆6,000億ドル(実質)としておきましょう。

 以上の粗い推計から2018年の歳出総額は4兆5,900億ドル(実質)。歳入総額は2兆6,000億ドル(実質)。財政赤字は単年度で1兆9,900億ドル(実質)です。GDP比で12.7%になります。ちょっと信じられない金額かもしれませんが、おそらくこちらの方が現実的です。

 この推計には今回の金融破綻の処理費用や、景気刺激のための公共事業の拡大は全く入含まれていません。日本と同じことが発生しているとすると、今後10年間で米政府はGDP40%分の公共投資拡大をしなければなりません。単年度でGDP4%分です。これがプラスされますので財政赤字はGDP比で16.7%になります。

 2008年から2018年までの財政赤字は平均して年8%くらいです。累計で80%になります。現在の米政府債務がGDP比60%程度ですので、2018年には米政府債務はGDP比140%になっているでしょう。今の日本と同じ水準です。

 このように、米国の財政は火の車です。GDP比10%の赤字が続けば、さすがの民主党支持者もびびって歳出削減を唱える共和党に投票してしまうでしょう。従ってオバマ政権はなんとしても歳出削減と歳入増加を進めなければなりません。よって今後10年間の米国政府の政策は

  • 高所得層への増税
  • 社会保障負担の引き上げ(企業・被用者双方)
  • 消費税の引き上げ
  • 国防費の更なる切り下げ

 となるでしょう。

 オバマ政権が各国との関係改善を進めているのは、今後軍事力が大幅に弱体化するからであり、脱税の取り締まりが世界的に厳しくなっているのは高所得層を海外に逃がさないためです。社会保障費の引き上げは、年金と健康保険を国民全体に広げるという形でなされるでしょう。今後10年間の世界情勢は、米国のこの非常に厳しい台所事情を抜きには語ることはできません。

 では米国が未曾有の財政赤字を抱えて、米社会の在り方が根本から変わっていくという大制約条件を背景に、世界はどうなっていくのかを考えていきたいと思います。

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