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2009年3月14日 (土)

ドイツと25カ国の不機嫌な仲間達

陰暦 二月十八日 【近江八幡左義長】

 ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどの大陸欧州諸国は、共通通貨ユーロを作るために通貨発行権をECB(欧州中央銀行)に明け渡してしまいましたので、臨機応変に景気対策を行うことができません。

 不景気の時に政府が支出を増やして景気対策をしようとすると、国債を増発するしかありませんが、そうすると通貨に対する信用が下がってインフレ率が上昇 します。ユーロ圏の場合、バラバラに国債を増やしたり減らしたりされると、通貨が同じなのにインフレ率に大きな差ができることになってしまいます。

 そうすると、なにが不都合になるのでしょうか?

 例えばドイツが財政均衡策を行い、イタリアが赤字垂れ流しのインフレ政策を行ったとします。すると、イタリアでは預金利率(名目)が上昇します。仮に物価上昇率3%、預金利率が4%になったとしましょう。それに対してドイツでは物価上昇率1%、預金利率が2%であったとします。

 しかしドイツとイタリアは同じ通貨ユーロを使っています。ドイツ人はイタリアの銀行にお金を預けて、利子を付けてからドイツで使おうとするでしょう。預金をドイツからイタリアに移動するだけで2%利子が余計に付くからです。ドイツから急激にイタリアにお金が流れることになります。ドイツは資金不足になってしまいます。逆にイタリアは金余りとなってバブルになるでしょう。

 最終的に、ドイツがイタリアにお付き合いして、赤字垂れ流し政策をするか、イタリアのバブルが崩壊して、イタリアがインフレから一気にドイツと同じ低インフレ状態に落下するかのどちらかとなるでしょう。

 実はこれと類似したことが、ここ数年西欧と東欧の間で発生していたのです。東欧はまだユーロは通用していませんが、通貨はユーロに固定されています。ユーロ圏は財政均衡・低インフレ政策を実行し、東欧は積極的財政政策を実行していました。共産圏時代の古いインフラを作り直し、経済を立て直すためです。

 そのため、西欧から東欧に大量のお金が流れ込みました。東欧に金を持っていくだけで儲けが出たからです。企業は大量に社債を発行し(10年間で3兆ユーロから6兆ユーロまで倍増したと思います)、東欧に投資をしまくりました。東欧はバブルになりました。

 しかし、いつまでもそれは続かず、東欧のバブルは崩壊しました。東欧が実際に生み出せる富を越える金が流れ込んだからです。現在ユーロ圏の企業は大量の不良債権を抱えています。その総額はGDPの20%くらい、2兆ユーロくらいになるはずです。

 ユーロ圏の企業はこれから発行しまくった社債の償還をしなければなりません。しかし銀行には追い貸しをする能力がありません。多分年2,000億ユーロくらい金が足りなくなると思います。GDP2%分です。銀行が貸してくれなければ、企業は給与を減らしたり、資産を処分してそのお金を工面しなければなりません。結果としてデフレスパイラルに陥るでしょう。

 それを避けるためには、ECBがユーロを刷って金融緩和をして銀行にお金を貸し出すか、欧州各国が財政出動して企業にお金を渡さなければなりませんが、ECBの規則によってそれが両方ともできない状態になっています。

 更にもっと怖いことが起きています。経済が比較的健全なドイツと、イタリア・スペイン・ギリシャ・アイルランドなどバブルが崩壊した国の間で、国債の運用利率が2%くらい離れ始めました。乃ち同じユーロ圏の中でインフレ率の乖離が始まったのです。イタリアやアイルランドあたりがなし崩し的に、財政規律の取り決めを破って財政出動をしているからです。

 するとどうなるかというと、ドイツ人は金をイタリアやスペインに持っていくようになります。イタリアやスペインは不景気なのに、お金をドイツ人のために稼がなければならなくなります。ドイツでは不景気なのに、ますます金が足りなくなってデフレとなります。これはデフレ状態の時に日本銀行がせっせと金融緩和をしたのに、その金を日本人がアジアや米国に移動させてしまい国内に余り出回らなかったのと同じ現象です。

 推測ですが、ドイツは金が流出してますます不景気となる、そのかわり金融機関はダメ欧州諸国からの上がりで潤う、逆にダメ欧州諸国はドイツからもらったお金で仕事はできるけれど、果実は全てドイツの金融機関に吸い上げられるという、余り嬉しくない事態が生じるでしょう。ドイツは金融的に欧州諸国に君臨します。語弊はありますが、第四帝国とでも言うべきものができるのではないでしょうか。しかしドイツでは失業率がますます上がり、ダメ欧州諸国もそのうちドイツから搾取されていることに感づくでしょうから、両方とも庶民が不幸になります。

 それもこれも、欧州のインテリどもが古典的な経済学に凝り固まっているからこのような事態となるのです。デフレ不況の時には財政出動を拡大してもインフレ率は上昇しません。欧州全体で財政規律を一時的に緩めて、政府が需要を作り出すべきです。

 こんな時に金融規制の緩和などを欧州議会はやろうとしますが、そんなことをしてもドイツ金融による欧州の支配を進めるだけでしょう。あるいはそれが目的なのかもしれませんが・・・ドイツ金融によって欧州の経済を支配する。そしてドイツの金融機関をECBを始めとする欧州官僚が管理する。それによって実質的な欧州政府を作ってしまう。そういうシナリオなのかもしれません。EU議会には欧州官僚を管理する能力はありません。EU議会というのは欧州官僚から与えられた課題を審議することしかできません。EUには欧州官僚をチェックする機構がありません。EUには欧州官僚という新しい貴族が誕生するのかもしれません。

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