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2009年4月20日 (月)

ウロボロス

陰暦 三月二十五日 【穀雨】【郵政記念日】

 日本が現在抱えている問題が三つありまして、それは

  1. 需要不足による経済の停滞(不安定化)
  2. 財源不足による福祉のサービス低下
  3. 政治不信

 です。これらの三つは絡み合っています。

 需要不足といいつつも、日本は二十年前ほどは貿易に頼った経済ではなくなっています。正確に言うと、内需がなかなか伸びないということだと思います。だから経済を成長させようとすると、輸出の伸びに期待せざるを得ない。しかし輸出は他国の景気変動や為替に左右されて不安定、このため「いくら努力しても、訳の分からない力によって全て水の泡にされている」といった感覚を多くの日本人が抱く結果となっています。

 内需を伸ばすためには、新しい仕事を国内に作って、失業者を雇わなければなりません。日本のような先進国に残された伸びシロはほとんど決まっていて、福祉と観光くらいしかありません。規模の大きさで言えば断然福祉です。

 では福祉を充実させるにはどうしたらいいのか?福祉にお金を回せばいいと言うことになります。しかし福祉というのは元来が、支払い能力が低い弱者に提供するサービスですので、サービスを提供する側が質を高めても、消費者たる弱者は対価を全て払うことはできません。

 福祉というのは

  • 人出がかかるサービスが多い
  • サービス従事者を教育するのに時間がかかる
  • 医療機器、介護機器など設備投資が高額
  • サービスを受ける側の支払い能力が低い

 といった特徴を持っていますので、市場に任せてもうまくいきません。乃ち、政府が費用のほとんどを肩代わりする必要があります。弱者ではない負担能力がある人から政府がお金を集めて、政府が医者・看護婦・介護士などを雇い、弱者が濫用しない程度の負担で利用できるようにしないといけません。

 福祉を論じる際に勘違いしがちなのですが、医療にしても本人ですら負担しているのは三割です。七割は国から出ています。従って福祉のサービスを高めようとすれば、税金や保険料を増やすしかない。

 ではどれくらいのお金が必要かというと、今や年金や医療費に費やされるお金は国の歳出で一番大きい項目となっており、総額20兆円程度で、改善に必要なお金は数兆円です。これは何度も言う通り、役人が全員ただ働きをしても、なんとか法人を全て消しても賄える金額ではありません。

 従って増税が必要と言うことになりますが、これを邪魔しているのが政治不信です。なぜ政治不信がこれほどはびこっているかというと、経済運営に失敗しているからで、話が元に戻ります。

 この二十年間、経済がうまくいかない→政治不信となる→増税がうまくいかない→福祉のサービスが低下する→内需が伸び悩む→経済がうまくいかない、という悪循環が続いていました。これを断ち切らなければなりません。

 断ち切るためには

  1. 経済をよくする
  2. 福祉のサービスを高める
  3. 政治不信を解消する

 の三つの方法がありますが、2は財源がない限り難しい。そうすると、1か3ということになります。経済を良くするにはとりあえずは政府が財政出動(要するに政府が物を買ったり、国民に金を配って物を買ってもらう)するしかないです。ただしこれは政府債務を拡大しますのでいつまでも続きません。今やっている財政出動を徐々に福祉に置き換えていかなければなりません。

 財政出動というのは結局国債でまかなわれています。国債を財源とする公共事業や補助金散布を、税金(及び保険料)を財源とする福祉に置き換えるのです。増税は消費を押し下げますが、増税によって福祉で働く人が増えれば、その人たちの消費が伸びますので、これは増税による消費の減退と福祉の雇用による消費の拡大両方を睨んで政府は福祉の立て直しをしていく必要があるでしょう。国民への福祉の景気拡大(縮小)効果をきちんと説明する必要があります。

 一番手っ取り早くて安上がりなのが3の政治不信の解消です。

 国民は政治家と国民の間に感覚の乖離があると感じています。その大きな原因は政治家の人材の入れ替わりがなかなか進まないことにあると国民は見ています。親の代それどころか祖父の代から政治家で、後援会の外のことを知らない人間が集まっているから世の中がうまくいかないのだと多くの人が思っています。

 国民が郵政選挙で小泉さんの刺客戦略に喝采したのは、新しい人材が国会に入ることによる変化を期待したからであり、民主党への期待が未だ高いのは、政策はともかく人間が入れ替われば少しはマシになるはずという考えが根強いからです。

 この点自民党は非常にビハインドが大きいと言わざるを得ません。1の経済政策で一勝、3の政治不信で一敗といったところでしょう。これを解消するのが政治家の世襲制限のはずです

 しかし強力な地盤を持つ世襲議員は、たとえ野党になっても自分が当選できる方がいいと考えているフシがあります。むしろ野党になれば、議員の数が減る分、自分の発言力が高まると考えているかもしれません。つまり世襲制限が自民党のマニュフェストに乗るかどうかは、自民党の世襲議員が、国民と自分どっちの利益を重視しているのか判定するリトマス試験紙になるわけです。

 切羽詰まった民主党の経済政策は麻生自民党に近づいてきていますので、後は国民としては政治不信をどっちがより解消してくれるかで投票先を決めればいいわけです。だいぶ争点が絞られてきました。

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