藤沢秀行 その二
陰暦 閏五月十七日 【浅草ほおずき市】
NHKのクローズアップ現代で藤沢秀行の特集をしていた。彼の芸に真摯で、なおかつ奔放な生き方に憧れる人は多いようである。アナウンサーの相方は武宮さんであった。武宮さんも六十近くなって目がきれいだ、こういう年の取り方をしたいものだと思う。
二年間の兵役でブランクができた、韓国人棋士の曺薫鉉をわざわざ訪ねて、三日三晩囲碁を打って「大丈夫だ、実力は落ちていない」と言って帰ったという話には感動してしまった。これこそ芸に生きる男だと思う。
秀行夫人のモトさんはさんざん苦労をかけさせられたが、辛抱の甲斐あって今や女の鑑という扱いである。何事も最後までやってみるものだなと思わせてくれ る。確か藤沢秀行は神童の誉れが高かったのに、二十歳を過ぎた当たりから伸び悩んで鳴かず飛ばずであったのだが、モト夫人と一緒になってからめきめきと実 力を付けて一家をなしたのであった。
結婚というと個人の可能性をつむものだ、という教育を私達の世代は、学校やメディアから浴びて育ってきたが、そんなことはないはずだ と思う。ただし昔の無頼派の芸人というのはかならず妻や子供を犠牲にして芸事に邁進するのが相場であったが、これからはそういうのはさすがに通用しないだ ろうなと思う。
さてもさても、日本棋院は早く藤沢秀行の打ち碁集を発行してくれないだろうか。
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