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2009年8月 1日 (土)

道州制よりも中山間部の直轄制を

陰暦 六月十一日

 選挙の行方も気になるんですが、もっと心配なのが今年のお米の作柄です。米所の北陸・東北・北海道の日照不足と多雨そして冷害が深刻らしいです。これで大型の台風でもこの地域を襲った日には平成五年のタイ米騒動の再現です。

 しかも発展途上国の人口拡大によって、十五年前ほどは世界の穀物市場に余裕がない状態です。日本が金にあかせて米を輸入したら、今度は本当に発展途上国でそのせいで飢餓が起きかねない状況にありますので、米の輸入拡大は難しいと思います。

 米の不足が備蓄米でなんとかなる程度に収まってくれればいいのですが・・・

 日本人が栄養摂取で米に頼るようになったのは、都市化と軍隊食の影響で、従来はそれほどお米には頼っていなかったはずです。一人あたりのお米の消費量のピークは昭和三十年代ですが、おそらく現在くらいの割合が昔からの日本人のお米の消費量だろうと思います。

 パンで食べるのか、麦飯にするのかの違いはありますが、日本人は米以外の穀物を昔から食べていました。山間部に行けば動物性蛋白質も食っていました。

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そもそも肉に栄養を頼る必要があるというのは貧しさの象徴だったんですよね日本では(^^;でも穀物に頼っていた江戸時代の都市生活者は、日本史上最も栄養状況が悪い人たちでした。あと水産物がこれほど食卓に上るようになったのも明治以降の変化です。グロテスクだという理由で止めてしまった神社が多いですが、山間部に行けば神社へのお供えといえば猪とか鹿の血の滴る肉でした。日本人が無類の魚好きになってしまったのは、狭い国土で牧畜をするのが困難であったので、いかに西洋並みに動物性蛋白質を国民に摂取させて、工場労働者・兵隊として西洋に負けない頑健な肉体を持った国民を作るか考えた結果、明治政府が思いついた政策だったのではないかと私は思います。

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 ですのでもっと米の消費量を増やせば日本の農業が立ち直る、的な農協のやり方では日本の農業は立ち直れないのではないかと思います。米の生産にこだわるのは、農協の融資の基準とか、農機具メーカーの商品ラインナップとか、穀物流通業者とか、農家以外の人たちの思惑が絡んでいるからなのだと思います。金融・生産器具・流通の業者というのはあまり複数の商品を作りたくなくて、なるべく画一した商品で仕事を済ませたいといつも思っています。寝ても覚めても米米米という日本農業はこういった農家に群がる人たちの事情が絡んでいるのではないでしょうか。

 沖積平野は徹底的に大規模化、会社化して、輸出できるだけの生産力と価格競争力を確保し、それが不可能な中山間部は政府の支援でお米以外のその土地土地にあった作物を作るというやり方がいいのではないでしょうか。前も言いましたが、平野部向けの農業政策と中山間部は分ける必要があります。平野部向けの政策としては、農林水産省がこれまで半世紀やって来たことに間違いはないと思います。問題は中山間部です。

 逆に、メディアや民主党が唱えている農業保護政策は中山間部向けの政策であり、これを平野部に適用したら、折角大規模化して国際競争力がある産業として立ち直りつつある平野部の農業はスポイルされてしまうと思います。

 農業だけではなく、交通政策とか防災対策とか、平野部と中山間部は必要な政策がまるっきり異なっています。道州制よりもむしろ、平野部は今のままでいいので、中山間部を国の直轄地にして、日本人全員の責任の元で中山間部を維持管理する国家体制にした方がいいと思います。

 北海道・東北・四国だって平野部だけならば自力でやっていけるのです。彼等がなにに困っているかというと、乏しい平野部だけで広大な中山間部を支えきれないと悲鳴を上げているわけで、道州制にしたら北海道・東北・四国みたいなところはむしろ余計疲弊します。

 徳川幕府というのは江戸・京・大坂という都市を独占していましたが。天領として日本列島中央部の山岳地を多く抱えていました。大都市の富でもって、自力だけでは維持が不可能な山間部を保全する仕組みを持っていました。このあたりの仕組みを江戸時代好きの人たちも見落としているんですよね。


 これから十年間の政治のテーマは福祉国家への道筋を付けることになるでしょう。地域別統治体制はその先のテーマです。道州制は、かつての新自由主義経済政策と一緒で、最初のうちはみんなで熱狂するけれど、結局は葬り去られる運命にある政策だと私は思っています。

 道州制に代わる政策は、中山間部の国直轄制です。

 でもこれも「コストを支払え」という政策ですので、最初のうちは人気が出ないでしょう。
中福祉中負担と一緒で、これを唱える政権は崩壊の手前まで追いつめられると思います。けれども国土の均衡ある発展を維持するにはこの政策しかないでしょう。関東地方と東海地方だけが生き残ればいいと考える人は道州制を主張してください。

 近畿ブロックは大阪府知事が言うように得する側にはまわれないと思います。近畿地方は支えるべき中山間部が意外と大きいですからね。維持費ばかりかかって大して客は乗らない山陽新幹線と緻密なローカル線を抱え、ドル箱であるはずのアーバンネットワークは巨大私鉄との競争で採算が悪くて、赤字手前でひいこらしているJR西日本と同じになるのが落ちです。近畿ブロックはよくてトントン、悪くすれば赤字になると思います。

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コメント

新過疎法(仮称)制定の基本的考え方について
―我々はとことん過疎地域を支え、守る!―

平成21年7月3日
自由民主党政務調査会
過疎対策特別委員会
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/seisaku-017.html

 現行の「過疎法」は産業化において優先される都市部の影の部分(二者択一により切り捨てられた地方)への配分法であるからです。その部分に対するコストを都市が支払うということです。

 昭和40年頃に、霞ヶ関で初めて「過疎」が使用された経緯も、変わりません。
 「過疎」は産業構造の変化に伴い起こる労働力の農山村部から都市部への移動による富の偏在であり、「自立」しようにも若い労働力は過疎地には残りません。この法律のいう「自立」とは結果として「消費者」としての自立でしかないのは否定しません。
 ですが、それにより、地方は人口流出を抑制する(東京都の美濃部都政並びに都民も望んだ)ことを実現し、内需を拡大することが出来たわけです。

 べっちゃんさんの提案する内容の大部分は「新過疎法」に触れるものですし、都市と地方の紐帯を復活させる一助となると思います。ですから民主党の言う「農家戸別所得保障制度」では、格差は解消しえません。
 生産性の高い平野部に同様の措置を与えても、スケールメリットにかないません。
 この制度は、米以外の生産に対しても目標との差を補助するようですから、企業化された農業や集落営農の大規模経営者に有利に働きます。英国的な農業補助に見せかけながら、実態の運用は乖離するように考えます。

 民主党のあの政策って、集落営農の担い手みたいな大規模農家にも適用されるんですか!

 んなことしたら、彼等がますます太って大規模化が進んで・・・いいじゃないですか!!民主党の戸別保障政策に賛成しようかな(笑)

 民主党の地方政策に酔っているのは、農家と言うよりは、農業に郷愁を抱き、かつ出身地をないがしろにしていることに後ろめたさを感じている地方都市の住民じゃなかろうかというのが私の推測です。

 そもそも農家なんて今や人口はめちゃんこ少ないんですから、彼等が同行したくらいではこんなに票は動かないはずです。

 戸別保障なんかやっても、耕地だけ持っていても耕す能力のない老人に金が行くだけで、彼等は金の使い道がないから、そのお金が農協に預けられるだけでしょうね、ていうかそれが目的なんでしょ?

 今みたいな調子で山間部のインフラ整備がどんどん切り捨てられれば、十年後くらいにそのせいで災害が頻発するでしょうから、その時になれば我々の主張は日の目を見ると思います。

 欧州なんか国土の隅から隅まで人間の手を入れまくっていますからね。日本の開発なんてまだまだです。もっともっとダムとか高速道路を造るべきですよ。皮肉じゃなくて本当にそうする必要があると思います。

>欧州なんか国土の隅から隅まで人間の手を入れまくっていますからね。日本の開発なんてまだまだです。もっともっとダムとか高速道路を造るべきですよ。皮肉じゃなくて本当にそうする必要があると思います。

 昔読んだ本で、フランスの農家は日本の農家に、「それしか手を入れないで収穫できるって凄い」とかいっていたと思います。
 
>民主党の地方政策に酔っているのは、農家と言うよりは、農業に郷愁を抱き、かつ出身地をないがしろにしていることに後ろめたさを感じている地方都市の住民じゃなかろうかというのが私の推測です。

 苦笑。おっしゃるとおりです。地方から都市の大学や専門学校へ行き、都市に就職した世代が、相続等により土地(農地・山林・中心市街地等)の所有者になったことの問題なんですよね。

>戸別保障なんかやっても、耕地だけ持っていても耕す能力のない老人に金が行くだけで、彼等は金の使い道がないから、そのお金が農協に預けられるだけでしょうね、ていうかそれが目的なんでしょ?

 戸別保障は目標設定と収穫が乖離しても、良いわけです。適当に蒔いてほっといて、収穫できなくても金を出すわけです。
 この問題は「農業共済制度(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E7%81%BD%E5%AE%B3%E8%A3%9C%E5%84%9F%E5%88%B6%E5%BA%A6)」「農業災害補償法」を消滅させる狙いでもあります。
  
 集落営農や企業によるアグリビジネスの方たちは、農協否定論者ですから、農協には預けませんね。ネット銀行系じゃないかと思います。この人達にとって既存の農家や地方市場は必要では無いんですよ。むしろ淘汰して消滅して貰わないと、自分達に都合が悪いと思ってますね。

 しかし戸別保障が、耕作の有無ではなくて土地の所有権によって配分されるのだとしたら、完全な買収ですよね。

 百歩譲って、自分で鋤鍬を握っている人には金を受け取る権利はあると思いますが、都市に住んで土地の所有権だけ持っている人に金が流れるのは問題外でしょう。

 子育て世代に金を配るというのはまだ実態がありますが、土地の所有権で配るというのだとしたらあまりにも露骨な買収です。

 私は、サッチャリズムにしても、90年代後半以降の米国のニューエコノミーからサブプライムローンに至るバブルにしても、結局は年金とか投資信託といったノンバンクによる、銀行資本への叛逆だったのではなかろうか?ということを最近考えているのですが、今日本で起きている政治的な紛糾も、ノンバンクによる銀行とか厚生年金とか郵便保険への叛逆、あわよくばのっとってやろう、という動きではないかと思います。

 それで、知り合いの資産家に昔聞いたところによると、最近の日本の資産家というのは宗教を利用した脱税に強い興味を抱いているらしいのですね。日本でも欧米でも、このように新自由主義的経済政策を掲げて、取り分を増やそうとしてきた人たちの周囲には何故か新興宗教の影がちらほらしています。

 確か自民党は小泉政権の末期に、非営利団体(内容を見れば、これは宗教団体を指していることは誰にでも分かります)を優遇する税制を検討しており、安倍政権の隠れた課題だったのですが、安倍政権は彼等の期待を裏切って(当然だと思いますけれど)、社会に貢献する実態がない団体には税的優遇措置は行わないと、むしろ課税を強化する法律を通してしまうんですよね。

 これが安倍政権、引いては資産家を自民党敵視に走らせた遠因なのではないかと私は推測しています。今や自民党を応援している宗教団体は創価学会と神社本庁くらいない状態で、宗教団体は総反自民です。創価学会は古くから金融部門を持っていますので、従来型の金融体制を守っている方が利益があると考えているのでしょう。

 でも英米の経済政策が破綻しましたように、銀行への叛逆は最終的には失敗に終わると思います。ノンバンクは法の抜け道的な機関が多いから、監視が行き届かず、暴走しやすいからです。

 だからまあ、民主党が政権を握れば、こういった民主党のバックにいるノンバンクが一斉に投資を始めますので一時的に株価が急騰するんじゃないかと思っているのですが、製造とか流通といった実需への投資は銀行に握られていますので、彼等ノンバンクの融資は虚業へ向かいやすいんですよね。だからどこかで民主党バブルは崩壊すると思います。

 ノンバンクや宗教団体の動きには要注意です。

公益法人制度改革
http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pamphlet.html

一見すると公益法人(非営利団体)を優遇する制度のように見えるのですが、公益法人は自らの「公益性」を所轄官庁に証明しなければならなくなりましたし、
http://www.gyoukaku.go.jp/about/koueki.html

「収益事業のみに課税」という項目は一見すると公益法人優遇なんですが、これ実は税務署が公益法人の行動を一つ一つチェックするための項目で、課税強化のための一文に他ならないわけです。

これの審議の内容を知ったとき、宗教法人やNPOは「騙された!」と思ったでしょうね。それが安倍政権への異常なバッシングになり、でも福田政権も引き続き公益法人に課税を強化し、福祉事業は国家で面倒を見る姿勢を明確に打ち出しましたから、あのように潰されたわけで、カトリックと強い繋がりを持つ麻生さんなら分かってくれるかと思いきや、麻生さんも「そうは問屋が卸さない」と公益法人を締め上げたので「ならば自民党を潰してしまえ」となって今に至るわけです。

彼等はきっと宗教法人が、貧困者の医療とか障害者の自立を名目に大量に金を運用している米国の制度を作ろうとしたんでしょう。だから福祉国家を敵視するんですよね。

でも宗教法人に福祉を任せたところで国民の大多数には行き渡りません。金持ちの脱税の道具になるのが落ちです。

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