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2009年9月 6日 (日)

自民党の出直し方

陰暦 七月十八日

 もう少し今回の選挙の結果を分析してみます。

 国民一人一人はそうは考えていないかもしれませんが、総合として得られた結論を私なりに解釈するとこうなります。

 これは自民党がなんでもあり利害調整型利権分配政党であり続けることの拒否です。

 自民党の中には右から左、大企業から中小企業、地方から都市、農家から最先端工業まで全ての集団の利害代表者が入っていました。各圧力団体の中で、穏当な考えを持った人たちが集まって、彼等の間で利害の調整をするというのが自民党政治のコンセプトでした。

 国民は「自民党ならば、そう無茶なことはしないだろう」という安心感の元に自民党に政権を預けていました。選挙を経ることなしに政策が変わっても「自民党がいっていることなのだから、そう間違ってはいないだろう」と許容していました。

 しかし90年代あたりからそういった政治の在り方に国民が飽き足らなくなってきました。自民党政治は、「欧米に追いつけ、追い越せ」という目標が国民全体の間で共有されていた間は見事に機能しました。選挙を経ないで政策が変わっても、国民は「欧米に追いつくために必要な変化なのだろう」として受け入れました。

 しかし、一部では欧米に追いつき、更に追い越してしまい、また欧米を見本にするにしても、夜警国家と福祉国家という二つのモデルがあって、どっちが正しいとは判断できないような状態になると、自民党政治は機能しなくなり始めました。

 国家の目標を、まず日本人が自分自身で設定しなければならない時代がやってきたのです。

 自民党内の権力争いも、熾烈の度合いを深めます。夜警国家と福祉国家では天を同じくすることはできません。「数年雌伏の時を過ごしていても、またチャンスがあるさ」、と鷹揚に構えることができなくなったのです。一度夜警国家に梶を切ってしまえば、福祉国家にすることは困難ですし、逆もまた然り。党内の権力闘争に余裕がなくなった原因は、自民党の政治家が国家目標を共有化できなくなったからです。

 国民は、国会が国家の進むべき目標を論じる場になることを求めています。

 国会議員の定数を減らせという要求も「目標を論じるだけならば700人もいらないだろう、むしろ少ない方が議論が深まるはずだ」という直感的な要求です。

 小泉政権を国民が支持したのは、自民党が統一された政策集団になったように見えたからでした。

 そして、国民は小泉政権の政策に反対した政党にもきちんと投票しています。国民新党は郵政選挙で議席を維持しています。新党を作らなかった人たちもあの逆風の中、半分も当選しています。構造改革と別の目標を掲げる政党も必要だと言うことがわかっているからです。

 安倍、福田、麻生政権が前の政権と少しづつ違った政策を掲げたときにも、最初は国民は支持をしています。その後支持を落としていったのは、総理が掲げた政策を、党内の権力闘争を通じてひっくり返そうという動きに対して国民に嫌気がさしたからです。

 なんでもありの利害調整型の政治であれば、デタラメな民主党でもできるだろう、自民党はもうワンランクレベルアップせよ(レベルアップできないようならばもう自民党はいらない)というのが民意です。

 ですので、自民党は統一した政策集団にならなければ復活はできません。則ち、少なくとも新自由主義派と福祉国家派に分裂しないと、共倒れになって次の参議院選挙では更に議席を減らすと思います。分裂でも何でもいいので純粋な政策集団になることができれば、その両方に国民の票は集まり、なんでも有りの民主党はかすんで消滅してしまうと思います。

 今回の選挙でも38%の国民は麻生さんの政策に賛成票を投じたわけです。自民党は、負けると分かっていても、その38%の国民のために総理決定選挙で麻生さんに投票するべきだと思います。

 49%の人が自民党に投票しても、51%が民主党に投票すれば、民主党に政権が移るのが小選挙区制というものです。もし全選挙区の人が同じように考えていれば、49:51の得票でも、議席配分は今回のようなことになってしまうことも十分にあり得ます。それどころか得票数が多くても、議席では負けることもあるのは、米国の大統領選挙を見ても分かる通りです。だからといって49%の人の気持ちを無視して、政策も、党の顔も変えてしまえ、というのは小選挙区制の意味を全く理解していない、浅はかな意見ということになります。

 総理指名選挙までは、前の選挙で自民党の政策を支持してくれた人に義理を立てるのが、真の政党政治です。指名選挙が済めば政策も党の顔もいくらでも変えて構わないと思います。けれども指名選挙前にいろいろと変更してしまうようでは、この前投票してくれた38%とすら、自民党から離れてしまうでしょう。総理指名選挙が終わるまでは選挙は続いています。ここで顔を変えるようでは、選挙期間中にマニュフェストを変更した民主党と同じになってしまうでしょう。

 国民の支持が得られそうな顔に変えればなんとかなるだろうというのは愚の骨頂で、そんなことをすれば、自民党は消滅するでしょう。

 新自由主義派が復権するのならば、それでもいいのです。その場合は、福祉国家派は堂々と離党して、福祉国家への転換を求める国民の受け皿になるべきです。逆もまた然り。自民党が生き残るためには、数人ではなくて、もっと大きな数十人単位で割れるべきです。

 私の見立てでは、米国の寵愛も自民党から離れています。自民党は、従来の利害調整型政党のままで、政権に復帰することはあり得ないと覚悟するべきです。それならばデタラメな民主党でも十分だというのが民意です。

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コメント

全く同感です。

確かに、自民党は国会で38%の民意を反映させるべきでしょうな。
でなければ、公約違反というか大袈裟な表現でいえば詐偽に当たりますね。

国民の投じた票が国会に反映されないなんて、民主主義国家とはいえないでしょう。日本は、国会議員主権ではなくて国民主権なのですから。

38%の国民は麻生自民党を支持して投票しているわけですから。これは重い数字です。

総理大臣指名選挙で「麻生太郎」とは書けないと堂々と正義ぶっておられる自民党議員の気が知れません。
何を考えているのかわかりませんが、自分のいっておられるルール違反に気付いて欲しいものです。

但し、この事で、べっちゃんと同じ事をいっていた細田幹事長はまともですね。

投稿: 菊池 | 2009年9月 8日 (火) 14時39分

それにしても、自民党の公認をもらって選挙に望みながらも、負ければメディアを通して麻生総理の非を攻める、というのもどうかなぁ…と思います。
だったら、選挙運動中での貴方の本心はどうだったんだよ、と聞きたくなります。麻生自民党の立場で選挙で戦った貴方の姿はなんだったんだよ。と……。

今更、国民に、麻生総理は駄目です、と選挙での演説を撤回する気なのか……。

いずれにせよ、負ければ誰かを攻める。人のせいにする。
美しくないですね。

投稿: 菊池 | 2009年9月 8日 (火) 14時58分

 菊池さんこんにちは、

 細田さんのような人をこそ、真の国士というべきだと思います。

 民意が自民党から離れたのは、麻生さんを支えない自民党に嫌気がさしたからであって、麻生さんを拒否したからではないことが分かっていないのでしょう。

 というよりはむしろ、それが分かっているからこそ、自分たちに矛先が向かないように、全てを麻生さんの責任にしようと躍起になっているのだと思います。

 今回、総理指名選挙で自民党は麻生さんに投票しないと言っていますが、これにより自民党は終わると思います。国民から見捨てられることは確定しました。これでは民主党に政権が移っても仕方がありません。

 麻生さんを始めとする福祉国家派は、古くなった革袋を捨てるべきでしょう。私達福祉国家派としても、福祉国家を目指す政治家が自民党の第二派閥となるよりは、たとえ十人以下でも、本格的福祉国家を目指す政党が国会にいてくれる方が希望が持てます。テレビや新聞でも発言機会が増えます。

 鶏頭となるも牛後となるなかれです。

投稿: べっちゃん | 2009年9月 8日 (火) 18時33分

 少なくとも麻生総理には社会保障国民会議http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyoukokuminkaigi/ の最終報告で社会保障の充実と財源確保の筋道をとりまとめ、安心社会実現会議http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ansin_jitugen/index.html で雇用を中心とした社会参加型の国家像をとりまとめるだけの胆力がありました。そういった地道な改革を進めるだけの胆力のある政治家を養成してきたという点では、自民党の組織運営に対してもう少し正当な評価が与えられてもいいのではないかと思います。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-340.html
machineryの日々 現実的でない人たち 2009/09/07(月) 抜粋

 見てる人達は、福祉国家への転換をキチンと見ていると思います。そして麻生総理を確かに支持したわけです。
 今回騒いでいる方達には、何ら解決する能力の欠片も無いことが益々明らかになっていくのですから。
 
 べっちゃんさんの指摘するとおり、「国土の均衡ある発展」をめざした「シビル・ミニマム」(最低限の公共サービスの整備)=「社会全体の利益の最適化」という旧来型の「利益調整」は否定する流れが、強いです。
 「市場・個別の利益の最大化」を求める方向へ変わったことはトータルマネジメント(紐帯)としてのナショナル・ミニマム(最低限の保障)の整備に再分配を行う、福祉国家へと向かわざるを得ないことでしょう。
 ただそれは「経済成長を伴った再分配」であるべきで、民主党の「経済成長無き再分配」とは違うことを明確にする人が必要になるのでしょう。

投稿: 保守系左派 | 2009年9月 8日 (火) 21時35分

www.secj.jp/pdf/20020313-1.pdf
自由民主党. 国家戦略本部 国家ビジョン策定委員会. 政治システム(最終提言)
平成14年3月13日
 中身を読んでもらえれば分りますが、現在の民主党が掲げるものと酷似する内容です。
 安倍・福田・麻生政権下では殆ど棚上げされていた内容です。それゆえに叩かれたとも言えるのですが、小泉構造改革を批判する者達が、ネオリベ(新自由主義)・ネオコン(新保守主義)を批判しました。ですがどうでしょうか? 「小さな政府」で「大きな社会保障」は「ネオコン」を指向することになるはずです。
 拾物から
 鳩山由紀夫民主党代表 「友愛」は決して甘くない。実践には大変な勇気が要る。切らなきゃいけないものもたくさんある。と後援で述べたそうです。
 人間の精神活動で最も高貴なる働き、他者に注ぐ太陽の如き無償の愛-友愛、博愛、自己犠牲の愛を示すことを国民に要求したうえで、Co2の25%削減を国際的に宣言されたことは、ただただ脱力感で一杯になってしまいます。

投稿: 保守系左派 | 2009年9月 8日 (火) 21時59分

 保守系左派さんこんにちは

 麻生政権は一年弱の間に多くの法案を通し、福祉国家への転換にめどを付けました。これは自民党の議員の協力なしにはできないことですから、自民党の議員もほとんどが麻生さんの政策を理解して、協力していたということを意味するのだと思います。

 本当にごく少数の、麻生さんの政策に納得ができない人たちのせいで、大勢の議員が落選の憂き目を見たのは残念なことです。反麻生派は新自由主義者が多かったわけですが、今回の落選者の多くは新自由主義者でした。彼等は騒ぐことで自分の味方を減らしてしまいました。

 今回選挙後もなお騒ぐことでますます彼等は党内で浮き上がり、これはこの後行われる総裁選で新自由主義派に不利に働き、福田・麻生の路線を継ぐ人が総裁に選出される助けとなるかもしれません。それならば私としてもまだ自民党に希望が持てます。

 民主党の両幹事長の小沢氏(内定)と輿石氏は、個人的には好きになれませんが、夢幻を追いかけて、富を生み出す鶏を殺すようなことには加担しないと思います。そういう点では私は彼等を信用しています。

 今後、民主党の内閣と党の暗闘が激化しそうな予感がします。

 鳩山代表は、まず御自分の財産を全て国家に明け渡してから、国民や企業に奉仕を要求してほしいです。

投稿: べっちゃん | 2009年9月 8日 (火) 23時42分

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