易経勝手解釈(三)−雷地豫
陰暦 八月七日
易の雷地豫(らいちよ)の新解釈と、気候変動による商の衰退と周の勃興について。
| 豫は侯をたて師(いくさ)をやるに利あり 雷出でて地を奮うは豫。先王もって楽を作り徳を崇ぶ。殷に(さかんに)これを上帝に薦め、もって祖考を配す。 |
豫は、君主を立てて軍隊を動かすのによろしい 雷は地下に閉じこめられた陽気が爆発する現象である。雷が鳴ってしまえば、陰陽の気は和合する。古代の聖王はこの卦に則って音楽を創造した。祭において音楽を上帝に供え、父祖の霊魂をあわせて祀った。 |
豫は(商が)軍事行動を始める前に行った呪い(まじない)である。 象が行進して、雷が落ちたときのように地面を震うのは豫である。商王は音楽を鳴らして、霊力を高めようとした。妊婦の腹を打って上帝に捧げ(「字統」より)、父祖の霊魂を合わせて祀って(士気を高めた)。 |
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| 上六 | 冥豫する、成るもかわることあり、咎なし | 楽しみに耽って目がくらむ、悔い改めれば罰を受けることはない | 象が死ぬ、進軍は成功するが、何らかの情勢の変化が生じるだろう、しかし不利にはならない。 | |||||||
| 六五 | 貞って、疾む(やむ)、恒には死せず | 実権を失った君主(六五)が楽しみに溺れている。見方を失って気息炎々となる。 | 象占いをした後にその象が病気になっても、死ぬことはないので心配しなくて良い。 | |||||||
| 九四 | 由豫する、大いに得るあらん、疑うなかれ、朋あいあつまる | 九四(宰相)が全権を委任されて大いに楽しんでいる、下の者を信用すれば、志を同じくする人たちが集まって助けてくれるだろう。 | 象が寄って来たら、今度の軍旅は大成功するだろう。 進軍を大いに宣伝してよろしい。援軍が馳せ参じるであろう(象は志の高い人のところへ行くからだ)。 | |||||||
| 六三 | く豫する(うわめづかいをする)、悔いよ、遅ければ悔い有らん | 六三が君子の九四を上目遣いして、陰で楽しんでいる。不正なので早めに行いを改めよ。 | 象が上目遣いして天を仰いでいる、今回の進軍は上帝の意に添っていない証拠なので早めに改めよ。 | |||||||
| 六二 | 石に介たり、日を終えずして貞って吉 | 皆が楽しみに溺れているときに、一人だけ石のようにしっかりと中庸を守っている、占った人が正しくあれば吉である。 | 象が石のように動かない、その日の内に神に伺いを立てて良い(象が何か異常を察知したからか?) | |||||||
| 初六 | 鳴豫する、凶なり | 一番下の初六は小人(愚か者)であり、それが喜んでいるので、これは凶である。 | 象が泣き叫ぶのは凶である。 | |||||||
漫画の「封神演義」に商(殷)の紂王が象に乗って登場するシーンがありますが、あれは間違っていないかもしれません。商軍の最強兵器は象軍であり、周の秘密兵器は西域から導入した馬車だったのではないか、そのように想像しています。
「春秋左氏伝」には乾燥寒冷化を示唆する記事が多く(春に氷が張ったとか、太陽が雲で隠れたとか、雨降らずとか)、この時期に中原で森林が後退し、草原 が広がったことが推測できます。これは花粉の化石からも確認できます。史記の記述では、商の末期に占いに使うための亀の甲羅の入手が困難になって、周辺諸 国に遠征したと有ります。乱獲による亀の不足ではないかとされていますが、乾燥寒冷化によって水棲生物の分布に変化が生じたのかもしれません。
寒冷化と森林の後退により、象の生息地はどんどん南へと後退していきました。商の弱体化は、乾燥寒冷化による農業生産の低下、そして亀や象などが減って商王が権威を維持できなくなったことにあるのではないでしょうか。
そこを西域から乾燥地を生き抜くすべを獲得した周に攻められて滅びたのだと思います。
春秋にはしきりに馬車が登場します。何らかの理由で、周の時代の中原は馬の生育に適していたのでしょう。けれども、漢以降の支那の王朝は馬不足に苦しんでいます。支那の歴史で馬車が戦争の花形だった時代は、西周と春秋の数百年間だけです。
戦国時代には戦争の主力は馬から歩兵に変わっています。そして、戦国時代は飛躍的に農業の生産力が上がっています。従来は鉄器のおかげ とされてきましたが、乾燥寒冷化が収まったのかもしれません。そういえば、馬というのはあまり湿潤な土地にはいません。戦国時代の支那は馬にとっては住み にくい土地に戻っていたのかもしれません。
漢の時代になって匈奴が攻めてきたときに、なぜ馬車で迎え撃たなかったのか不思議でならなかったのですが、気候の変動が関わっているのではないでしょうか。
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コメント
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易を占いとして勉強しているものです。
ぺっちゃんさんの易経解説はすばらしいです。
感動しました。
易経関連の本は無駄にえらそうなのに、どの解説もピントがあってない感じがしてましたが、
ようやく腑に落ちる解説を読んだ気がします。
64卦すべての解説を読んでみたいです。
投稿: 武丸 | 2011年5月 7日 (土) 03時30分
武丸さん、初めまして。
私の易経解釈に感想ありがとうございます。
易経は元々は商末から西周にかけての風物を記録した「物づくし」だったのだと私は考えています。難しい引用の解釈は後代、おそらく戦国時代以降に斉の学派が付け足した物です。その中心は荀子です。荀子の真骨頂は易経の解釈が多く乗っており、荀子は儒学と陰陽を結びつけたことにあります。性悪説は荀子の成果の一面に過ぎません。
易経は秦と漢初の儒学が弾圧された時代に壁に塗り込まれて隠されていた、という伝説があり、そのためか、錯簡(ページがごちゃごちゃに入れ替わること)が見られます。
この先は六個まとまっている卦はあまりなく、錯簡の回復が必要なのでかなり大変なのですが、ご希望とあらばいくつか披露してみます。
それともまとめで自費出版にでもしましょうかね。マンガの解説をつけて(笑)
投稿: べっちゃん | 2011年5月 7日 (土) 08時00分
「易経・春秋」のカテゴリーを作りました。これまでに書いた文章はそこから飛ぶことが出来ます。
投稿: べっちゃん | 2011年5月 7日 (土) 20時41分
コメントの返事、ありがとうございます。
是非出版してほしいです。買います。
漫画付きならなおいいですw
自費出版じゃなくて、商業出版レベルでいけるんじゃないですか。
と学会みたいなノリでいけるんじゃないですかね。
これまで出版されている易経の本が全てトンデモ本に見えます。
まあ占い本なんてのはそもそもトンデモ本なんですが、
ここのブログを読んで理解したことは繋辞伝の段階でトンデモ本だったんですね。
象占いをあらわす「予」、野焼をあらわす「旅」、箕子をあらわす「明夷」、
その他どれも従来の説を完璧に論破していると思います。
「貞」=「占い」というのも腑に落ちます。
「貞なれども凶」のような意味不明の解釈より断然納得できます。
妹という場所に帰ったと解釈する「帰妹」。
「帰」=「嫁ぐ」という意味とする従来の解説だと、
もひとつ本文の意味がわかりませんでした。
他の部分では「帰」はだいたい普通に「帰る」という意味ですしね。
占い的には「これは、二号さんとか、愛人の卦ですね」としたほうが
解釈しやすいんですけど。
山雷頣も読みました。
素晴らしいです。次の卦も期待しております!
投稿: 武丸 | 2011年5月10日 (火) 03時24分
易経は非常に面白いですね。甲骨文字、金文の時代の風習が記録されています。しかも、現代人になじみのある春秋時代まで編集が続いていますので、甲骨文字や金文の時代を探るための手がかりとして使えます。
孔子が易経を根本教典とした意味がわかってきました。これは支那の古代史を探るための最高のテキストです。
儒教や道教によって消されてしまった、古代の支那の文化が、儒教の根本教典の中に隠されていたこの不思議。しかもなんと日本の伝統的習俗が易を理解するための鍵になるのだから面白いです。
ある程度文章がたまったら本にすることを考えようと思います。
投稿: べっちゃん | 2011年5月10日 (火) 22時12分