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2009年10月 9日 (金)

易経勝手読み(八)ー地火明夷その三・長子口

陰暦 八月二十一日 【亥の子餅】【世界郵便デー】

 第四爻です。第二爻と対句になっていることはすぐに分かります。読み方も同じでなければなりません。

  入于左腹
  獲明夷之心
  于出門庭

 「入」は文頭に来ていますので主語とみなすべきです。このような語順の場合通常「于」は主語を表す助字となりますので、その観点からも「入」は主語です。

 この時期の歴史的人物で「入」で表される人はいるでしょうか。これがいるのです。

 微子啓です。

 微子啓は帝辛(紂王)の庶兄もしくは同母兄(呂氏春秋)です。三監の乱の後、周公旦は商の故地を衛と宋の二つに分けて弱体化させた上で、宋を微子兄に与えました。これが春秋の有力諸侯の一国に数えられる宋の濫觴です。

 数年前に日中の発掘隊が河南省の殷周移行期の古墳である長子口墓を発掘し、微子兄の墓であることを特定しました。殷周革命期の人物としては初の実在確認となります。

 なぜ長子口墓というかというと、その墓から発掘された遺物に「長子口」という銘が多数刻まれていたからです。おそらく墓の主だろうと推定されましたが、誰のことかはずっと不明でした。

 毎日新聞の記事によると古代では「微」は「長」と書かれることがありました。さらに微子兄は庶兄とはいえ紂王の兄で長子です。呂氏春秋には微子啓が「長」という土地に封ぜられたという記事があります。そして「啓」と「口」も古代では区別がついていませんでした。これらのことから「長子口」とは「微子啓」のことであろうということが特定されたわけです。

 啓=口→入 です。説明の必要もないでしょう。

 したがって第四爻は、三監の乱の後、微子啓が箕子の推薦によって宋の君主になったことを表しています。ちなみに「腹」には「博識」という意味があります。微子啓は博識であったという記録が残っています。

  微子啓は王を助ける知恵袋
  箕子からの信頼をうけて
  宋の君主として朝廷に推薦された

 第五爻は種明かし、だめ押しです。

  箕子之明夷
  利貞

 箕子はこれ明夷、貞って利あり

 周はよっぽど箕子に恩義があったことが窺えます。まだ安定しない商や東方諸侯を治める上で箕子の助言に負うところ大であったのでしょう。しかも箕子はそれに対して報酬を求めた形跡がなく、遼東もしくは朝鮮まで流れていったとされています。富貴に興味がなかったのでしょう。その進退の鮮やかさが西周の人々の心を打ったのではないかと思います。

 上爻です。

  不明晦
  初登于天
  後入于地

 字統によると「晦」とは日中に太陽が隠れて暗くなることとあり、白川先生は日蝕のことではないかと推測しています。後の二文は太陽のことを表しています。殷周革命があったと推測される紀元前十一世紀には支那で日蝕が頻発しており、それが易経の作者にも印象に残っていたのでしょう。あるいは箕子が死んだときに日蝕でも発生したのかもしれません。

 商は太陽の運行を重視していました。日本を含めた東夷や江南や四川の照葉樹林文化は太陽を崇拝しています。それに対して周は太陽と言うよりは天を重視しており、太陽も天体の一部という醒めた見方をしています。これはメソポタミアの影響ではないかと思います。

 むしろ周以降の支那は二十八宿(白道、月の通り道の星座)や歳星(木星)、流星など夜の天体の方に興味を傾注させていきます。上爻は太陽を崇拝する文化が商の滅亡と共に支那では廃れたことを表しているのでしょう。日蝕の頻発がその一助となったのかもしれません。古代の支那人の目には太陽の弱体化と映ったのではないでしょうか。これ以後、戦国期までの数百年間、支那では乾燥寒冷化が続くのです。

  不明の最たるものは日蝕である
  (太陽は)初めは天に登り
  (太陽は)最後には地に沈む

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