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2009年11月17日 (火)

忠誠心の行方

 民主党が行っている事業仕分けなる物が、財務省のシナリオであることが明らかになりました。事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南−政治主導に逆行・行政刷新会議(時事通信)

 財務省というのは使う金を削るのがお仕事ですので、ガリガリ削ります。無茶な理屈をつけてでも削ります。これは仕事ですので当然です。それに対して使う側の省庁は当然の事ながら弁を奮い事業の有用性を解いて予算を確保します。これも仕事ですので当然です。

 今回の事業仕分けなるもの、財務省の仕事ぶりを表に出したという意味では意味がありますが、それだけでは片手落ちです。きちんと使う側の省庁に事業の有用性を訴える場を作らないと公平ではありません。即ち復活折衝を今回の事業仕分け並みのパフォーマンスの場にしないと不公平です。

 現在のメディアは財務省の理屈の肩をばかり持っています。そりゃあ財務省の官僚は頭がいいですから、いくらでも大向こう受けをする理屈を並べて予算を削ろうとするでしょう。しかしそれが全て正しいかというとそうは言えないはずです。

 しかし本当はこれを国会の審議でやるべきなんですよね。ああそうか、予算委員会で事業仕分けをやると内閣が被告になるからやりにくいというわけですか。しかしこれは立法府の無力化ですので、民主党は自分で自分の首を絞めることになると思います。立法が拠り所の政党が、立法府を無力化して行政府と一体化しようとしても、行政府の側に呑み込まれるに決まっています。官僚の方が行政のプロなのですから。

 今回の事業仕分けは予算委員会における与党の質問を国会の外に出したことと同等の意味があるわけですが、結局国会では再び委員会を開かなければならないわけで、これでは二度手間なので与党の質問をなくしたときと比べてむしろ必要とされる時間が増えたと言えます。

 さてここから話は違う方向へ流れますが、官僚の天下りの禁止が官僚の仕事ぶりにどう影響するかを少し考えてみました。官僚の官庁内での終身雇用が確保された場合、官僚は将来の天下り先のことを考慮する必要がなくなります。

 ということはどうなるかといいますと、将来業界団体に天下りすることが見えていれば、官僚は現役の間も、自分の受け持ちの業界(生産者)の繁栄のために働くでしょう。これが戦後日本の政財官の協力関係の一環でした。

 官僚が定年まで官庁内で働くことになると、官僚は業界の利害を考えなくても良いことになります。天下りを禁止する側としては、だから国民の側(消費者の側)を向いた仕事をすることを期待すると言うことになります。しかし今のままでは官僚に国民の側を向いた仕事をさせるインセンティブが制度内に組み込まれていないので、多くの人たちが期待した通りには物事は進まないのではないかと思います。

 定年まで官庁内で働くと言うことは、官僚の忠誠心はますます所属官庁に向けられるはずです。これまでは天下りのことを気にして、民間の利益になるような政策作りをしていた官僚も、生産者や消費者を犠牲にしてでも官庁を存続させるように働くようになると私は思います。

 今の日本の状況で中央官庁が生き残りを計ろうとすれば、財政をバランスさせるしかありません。積極的な財政出動による景気回復も、あるいは増税による福祉国家も、政治決断がないと実現できませんので、官僚の努力だけでは不可能です。官僚が中央官庁の存続のためにできることは、国民の福利を犠牲にしてでも、歳出側を削って財政をバランスさせることに限られると言うことになります。

 ですので、事業仕分けに使う側の省庁も割合協力的なのは、彼等にとっても合理性があるからです。

 といってもこの事業仕分け、1兆円確保したと言いつつ、そのほとんどは特別会計の取り崩し(いわゆる埋蔵金)ですので、その実経費の削減にはあまり効果を上げてはいません。歳出はほとんど削られていないんですね。私は「官僚は民主党に毎年2兆円くらいの捨て扶持を与えて飼い殺しにするだろう」と予測したのですが、実際そのように物事は進んでいます。

 まあどっちにしろ、このデフレの御時世に政府支出を縮小することばかりやっていては経済の再生はおぼつきません。デフレ対策に必要なのは「額の大きさ」です。効率なんぞに意味はありません。

 官僚は新しい価値を生み出すのは苦手です。でも今あるリソースで最大限の効果を出すのは得意ですので、歳出削減や埋蔵金の掘り出しには協力すると思います。けれどもこれはデフレ対策には逆行します。年明けにマイナス成長になって思い知ることになるのでしょう。国民も「あれだけ無駄を削減して、歳出も縮小したのに何で景気が悪化するのだ?」となり、これでやっと日本の経済政策も正常化するでしょう。

 福沢諭吉は「封建制度はお家の敵」と言ったそうですが、私は「効率化はお家の敵」と言いたいです。需要を生み出すべき政府が効率化に取り憑かれたのが日本のそもそもの不幸の始まりだったのです。

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