普天間政変(一)
陰暦 十月二十日 【証文払い】【戎講】
米軍普天間基地移転計画に端を発した今回の政変(まだ進行中)の構図を分析してみたいと思います。
もともとこの移転計画というのは、十五年前の米兵による少女暴行事件で沖縄において反米世論が高まったときに、米国が橋本政権に沖縄の米軍基地を一部移転しても良いと打診してきたのが始まりです。
沖縄は大東亜戦争中に米国が戦闘によって得た土地ですので、国際的な慣習上では日本は米国に戦争で勝って取り返すか、日本がよほど大きな代償を米国に払わない限り取り返すことはできない土地です。佐藤栄作総理がノーベル平和賞を受賞できたのは、その沖縄を外交交渉だけで取り返した日本の外交手腕に世界中が驚嘆したからです。
十五年前、やはり日本がさしたる代償を払うことなく米軍基地の一部が日本領に戻ることとなりました。返還基地は住宅地の真ん中にあって危険といわれてきた普天間基地になりました。ちょうど同じ頃に米軍は世界規模で冷戦に対応することを目指した態勢から、テロリストや支那を警戒するための態勢に組み替える再編成を進めており、海兵隊の基地や艦隊や空軍の司令部の移転などとセットで普天間基地を移転することになりました。
ただし沖縄は支那、朝鮮半島、台湾、東南アジアそして日本本土から等距離にある絶好の戦略拠点であり、米軍としては戦闘機が飛び立てる空港は絶対に沖縄に確保する必要があります。そこで普天間基地の替わりを沖縄のどこかに建設することになりました。それが辺野古沖です。辺野古の住民と自然は多少犠牲になるけれども、普天間の人口密集地がさらされている危険と比べれば軽微であると日本政府は判断したのでした。地元住民の過半の同意も得られました。
しかしそれでも反対派は残るわけで、その人たちは現在に至るまで活動を続けています。また、自然保護を名目に建設予定地を更に沖合に変えたり滑走路の形状を複雑にすることができれば工事費用が拡大して地元に落ちるお金が増えるという一部住民の思惑もありました。沖縄県の知事や議会や普天間がある宜野湾市の市長や議会、辺野古がある名護市の市長や議会の選挙が交互に毎年のようにあり、そのたびに各種の政治勢力が絡み合って合意を反故にしたり新しい合意を作ったりしたために、基地の移転計画が進んだり後退したりを繰り返しました。
そのため普天間基地の移転は十年間もストップしたままになり。これをスタートラインにした米軍の再編もストップしてしまいました。
米国としては基本的に沖縄に大兵力を貼り付けておきたいので、再編成はできてもできなくても問題はありません。再編成が成功すれば、一応「少ない兵力で極東の不測の事態に対応できるようになる」と言うことにはなっていますが、兵力が沖縄要塞に張り付いているにこしたことはないわけです。米国には普天間基地を移転する積極的理由はありません。
本土の日本人の間には、米国のために普天間基地を移転してやるという誤解が広がっているみたいなのですが、米国は現状維持でも何も困らないのです。今のままだと米国は困るだろうから、いずれ米国の方から折れるだろうという読みは完全に間違いです。
沖縄の基地が現状維持できれば米国としては万々歳です。元々沖縄の反米運動に危機感をいだいたのが沖縄の負担を減らすと米軍が提案した理由だからです。このままいけば現状維持が可能になった上に、移転が反故になった責任は日本政府の不手際と沖縄住民の内部分裂にできるので米国としては願ったりかなったりでしょう。しかも支那の発展は当初の想定よりも速いスピードで進んでいるので、普天間基地や海兵隊を支那から離れた地点に移動する米国の意欲が急速に薄れています。
つまり普天間の替わりは沖縄のどこかにしかあり得ず、米国としては現状維持のままでも何も困らない、この二点をしっかりと認識しないと事態を見誤ります。
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