貸出金利の決まり方
陰暦 二月十六日
財政再建主義と民間万能主義のコメンテーターやエコノミストの常套句なんですが、政府が大量に国債を発行しているので、民間企業に融資が回らなくて日本の産業は停滞しているのだ、というのがあります。
実際は金融機関は国債を買ってもまだ預金過多ですので、国が企業の金を横取りしているのではなくて、金融機関は金を貸したくてたまらないのに、企業がどうあっても借りようとしないというのが実態です。
ただし、未だに企業が借り入れた金の金利負担に苦しんでいるのもまた事実であって、なぜそのようなことになるかというと、国債の返済利子が企業が耐えられる利子よりも高いからです。
普通に考えれば、企業よりも国の方が信用できるので、企業は必ず国よりも高い金利でしかお金を借りられません。国は現在平均して借りたお金に年1.3%の利子を付けて銀行(そして預金者)に返済しています。当然企業は超優良企業であってもその年1.3%よりも高い利子を付けないと銀行から金を借りることができません。今の世の中はデフレですので、1.3%でも十分高くて企業は金が借りられない、そういうことなんでしょう。
企業が金を借りやすくするためには国債の利率を下げる必要があります。その方法は
(1)財務省が1.3%よりも低い利率で国債を募集してみる
(2)国債の発行額を減らす
(3)日本国全体の金利を引き下げる
(1)でもいいはずなのですがこれはなぜか「できない」ということになっています。(2)は人気がある財政再建です。銀行が嫌でも企業に貸し出さないとやっていけないくらい国債発行額を減らせば、企業向け貸出金利は下がります。けれども、政府支出が減りますので数年間は恐慌になります。政府の支出は日本のGDPの30%近くを占めます。これが減ると大変です。
財政再建をすれば企業への融資が進むというのは長期的には正しいのですが、短期的には大変な苦しみを伴うことを自覚しなければなりません。財政再建大好きなエコノミストどもはそれを自覚した上で国債発行額を減らせと主張しているのでしょうか?とりあえず橋本政権の財政再建失敗について総括してから話をして欲しいのですが。
(3)は金融緩和です。日銀が貨幣をばらまいて金余りにして金利を下げるのです。
しかしバブル後の日本の経験や世界同時不況の欧米の経験に照らし合わせるに、金融緩和には恐慌を防ぐ効果はあるけれど、企業が投資をしたくなるほど金利を下げる効果はないようです。剰ったお金は新興国の株とか不動産に向かって国内では使用されない傾向があります。
そもそも金利のベンチマークである国債利率は貸し手である銀行がよってたかって決める物ですので、銀行の自主判断に任せて、銀行の儲けが減るような低い金利を銀行が国債に設定するはずがないのです。
じゃあどうすればいいのか?財務省が「市中で適正」といわれている金利よりも低い金利で募集するということを繰り返して金利を引き下げるしか方法がないのではないでしょうか?その「市中で適正」という水準が本当であるかどうか試すのです。
応札がなければ元に戻るだけです。やってみる価値はあると思います。
公共事業と建設業界、介護事業と人材派遣業、環境政策と原子力産業、どれもこれも政府との密着が噂されていますが、なぜ国債発行と銀行業界が利権として(旧)野党は愚かマスコミからも全くノータッチなのか不思議でなりません。銀行が国債から得ている利益は建設業界が公共事業で得ている利益の比ではなく(桁が二つくらい違う)、しかも公共事業の受注と違って、国債の応募の場合は価格決定権は政府側ではなく応募する銀行側にあるのです。
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