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2010年3月 6日 (土)

雇用につながらない経済成長の解消

陰暦 一月二十一日 【啓蟄】

 今の先進国の経済の大きな問題の一つとして「雇用につながらない経済成長」が挙げられると思います。これまでの経済成長は雇用の拡大と生活水準の向上と必ずセットでしたので、豊かさにつながらない経済成長へのとまどいが先進国の人たちから出ています。

 第二次世界大戦後の経済成長が雇用の拡大と生活水準の向上につながっていたのは、まず第一に人口の拡大があったこと。戦後の30年間で先進国の人口は1.5倍くらいになっています。1.5倍の人口に商品を提供するために製造業もサービス業も規模が拡大したというのがまず一つ。

 さらに今までになかった新しい商品が次々と生活に加わっていったからと言うのが一つ。テレビ、自動車、洗濯機などどれもこれまでにはなかった商品です。新しい商品を生産するために純粋に新しい雇用が生み出されました。

 現在の先進国の経済成長が雇用につながっていないのは以上二点の裏返しではないかと思います。

 先進国の人口は米国以外は頭打ちになっています。消費者が増えないのですから、製造にしてもサービスにしても新たな需要が生み出されません。

 そして今の世の中に出てくる新商品というのは創出形の新商品ではなく改良型の新商品ばかりです。ブラウン管テレビの替わりに液晶テレビ、普通の自動車の替わりにハイブリッド自動車、ビデオデッキの替わりにHDレコーダー。ハイブリッド自動車が開発されたからと言って、一人が車を二台所有するようにはなりません。

 雑誌やテレビ番組が盛んに「新たな成長企業」を取り上げていますが、ほとんどが従来の商品を改良する方式です。成長企業が伸びる替わりに、代替されてしまった従来の企業は衰退しますので、国全体としては雇用は差し引きゼロです。

 需要が増えず、創出形の新商品が出てこない市場では、勢い競争は価格競争にならざるを得ません。先進国の一番のコスト元は人件費です。勢い企業緒規模を拡大、あるいは新しい設備を導入し、少ない人間で多くの商品を生産しようと言うことになりますので、雇用は縮小します。

 生産に必要な人間は減っていますが、生産力は減っていません。先進国は雇用の減少による国内消費の弱体化を輸出で埋め合わせていますので、経済は成長しているのに雇用は増えない(成長すればするほどむしろ雇用が減る)という我々の常識に反する事態が進行しています。

 では国が雇用を規制して企業が首切りをしないようにさせれば雇用が増えるかというとそうではないでしょう。勿論政府の規制によって雇用が"守られる"のは確かですが、雇用の"創出"にはなりません。

 今の先進国では生活に必要なモノを供給する態勢は整っています。新たに生活にプラスできる付加価値というのもありそうにありません。となると、雇用を生み出すためには最早、雇うために雇うしかないと思います。広義の公共事業です。

 この二十年間先進国の経済成長は輸出と公共部門の拡大に支えられています。公共部門は大体、医療・介護・教育など社会福祉部門の拡大です。確かに社会福祉は富を生み出しませんが(強いて言えば安心、長寿などの価値を生み出しているとは言えますが)、何もしなければただの失業者の人たちが、社会福祉によって雇用されることで消費者となります。失業者では14インチのテレビしか買えず、車も持てませんが、社会福祉に雇われれば、27インチのテレビを買うでしょうし、車も持つようになるかもしれません。

 減税とか金融緩和で民間の自由になるお金が増えても、民間は雇用縮小型の投資をするだけですので雇用の創出にはつながりません。効率化、生産力の向上というのは要するに雇用を減らすことです。民間を重視するエコノミストはこのことに気がついていないか、もしくは意図的に無視しています。「効率化、生産力の向上」と言われると何となく雇用が増えそうに思えるので、国民の大多数はそれを支持するわけですが、効率化が進めば進むほど雇用は減ります。

 輸出力の拡大は新たな雇用を生みますが、輸出の拡大はたいていが輸入の拡大とのバーターになります。輸出する商品が生まれる反対側のどこかで、海外から何か輸入品が増えているはずです。

 この厳しい国際競争を生き残るためには民間部門の競争力を拡大させるために民間に資源を振り向けるべきなのでしょうが、雇用対策にはなりませんので、雇用対策は競争力強化とは別の問題として考えなければなりません。

 しかし冷静に考えてみれば、人類の歴史では新たな価値が次々と生み出されることの方が珍しかったのです。人類十万年の歴史で、人口は長い間一定でしたから、増えも減りもしない生産力と需要の中で雇用を維持することの方が人類の歴史の中では普通だったのです。

 今の先進国に不足しているのは「消費者」ですから、政府が消費者を作ることを仕事にしても良いのではないかと私は思います。

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