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2010年7月 6日 (火)

減税しても景気はよくならない

陰暦 五月二十五日

 今回の参議院選挙はいつの間にか消費税がテーマになりつつありますが、このこと自体は悪いことではないと思います。税制は国家の根幹に関わることです し、我々の生活もこれによって変わっていきます。また、どのような税制を選ぶかによって国に入ってくるお金の量も変化しますので、税制によって使い方も制 約を受けることになります。安定した税収の上には安定した社会保障制度を作れるでしょう。逆に景気によって大きく変動する税制を選んだ場合は、めまぐるし く大盤振る舞いと緊縮財政を繰り返す政治しかできなくなるでしょう(選択肢としてはこれもあり得ます)。

 バブル崩壊以降日本の財政は税収不足に悩んでいます。その一方で企業は有効な投資先を失い、金融機関には多大な預金が貯まるようになってデフレを招いています。融資先を見つけられない金融機関は大量に国債を買い入れています。普通は不景気の時には減税や公共事業や金融緩和をして経済を活性化させるべきと言うことになっています。なぜかというと、減税によって民間の自由になるお金を増やし、公共事業によって力を失った民間の替わりに政府が経済を回して民間にお金が回るようにし、金融緩和によって民間がお金を借りて新しい事業を行いやすくするためです。

 しかし、今の先進国のように新しい産業が生まれるわけでもなく、ほとんどの人はそこそこの生活水準にあり、橋や道路や鉄道も張り巡らされた社会では、民間は金の使い道がありません。日本でも減税によって自由になったお金を企業も家計も消費には回さず貯蓄しかしませんでした。米国でもブッシュ政権時の大減税で剰ったお金は投機に流れていきました。

 デフレ不況の解消のために必要なのは世の中に出回るお金を増やすことです。いくら減税をしても貯蓄に回るだけならばデフレが悪化するだけです。

 もちろん増税してもそれを政府債務の元本償却に回すのも貯蓄に回すのと同じことで景気を悪化させます。

 つまり、デフレ不況脱却のために必要なのは、政府が支出を増やすことで、減税は不可欠ではないのではないかということです。金融緩和も政府が十分に支出を増やせばそれほど必要でないかも知れません。

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 これはよく出てくる一般会計の歳入歳出のグラフです(単位は兆円)。歳出に対して税収が足りないので赤色の部分(財政赤字)が増えています。歳入が減っているのは企業の業績が伸びないのと国民の所得が伸びないのと減税が原因です。どうして企業の業績と国民の所得が伸びないかというと、日本経済がデフレ状態で、国全体として回っているお金の総量が縮小しているからです。

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 それに対して、これは政府と企業の債務の合計額を表したグラフ(単位は兆円)です。両者の債務総額はこのバブル崩壊から2004年くらいまで、だいたい一定であることがわかります。どうしてかというと、不良債権処理に追われた企業がせっせと債務を減らし、そうするとデフレになって大不況となるので企業の替わりに政府が銀行からお金を借りて支出を増やしたからです。最近だいぶ市民権を得てきたバランスシート不況を一目で表すグラフです。

 つまりこの20年間というもの、減税をする→企業の収入が増える→企業は借金を減らす→経済が縮小する→政府が借金をして支出を増やして景気悪化を防ぐ、という循環が繰り返されてきたことになります。

 そこではたと考えるわけです。企業が必死になって債務を減らすのは、金利負担が重いからです。金利負担が軽ければ、別に政府が減税して企業の借金返済費用を用立てしてやらなくてもいいはずです。

 企業の債務負担の軽減は、減税で行うべきでなく、金融政策(日銀の金融緩和による金利引き下げ)でやるべきだったのではないでしょうか?

 金利負担が限りなくゼロであれば、収益から税金を取り立てても問題はないはずです。金利負担と税金の負担をごちゃ混ぜにして論じてきた(税金は軽い方が経営が楽なので意図的にごちゃ混ぜにしているのでしょうが)ことに問題があると思います。

 日銀が金融緩和に抵抗するのは金融緩和に需要喚起効果があるかのような言論が氾濫しているからです。デフレ不況下では金融緩和には需要喚起効果はありません。日銀の研究員のレポートには既に2003年頃にバランスシート不況を論じた物があるので、日銀はこのデフレ不況の仕組みを熟知しているはずです。だから景気回復を目的とした金融緩和をやりたくないのでしょう。不況の責任を押しつけられるのは目に見えていますからね。でも企業の金利負担を軽減するための金融緩和ならば日銀は協力するでしょう(これに抵抗するようだったらそんな日銀は解体するべきだと思う)。

 つまり日銀は金融緩和で企業の金利負担を軽減する。政府は公共事業でも福祉でも何でもいいので支出を増やして社会の金回りをよくする。これがデフレ脱却のための処方箋です。それなのにこれまで日銀は嫌々ながらしか金融緩和をせず、政府は減税によって財政基盤を弱めることで景気対策の持続性までも弱めていました。お互いの役割分担がなっていないのです。それと何かというと減税を煽ってきた企業とその走狗であるエコノミストにも罪があると思います。

 財政赤字は、企業の貯蓄超過とバランスしていると思います。時間がないのでそれについては明日以降に論じます。

 

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