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2010年7月10日 (土)

不公平感・重税感の原因

陰暦 五月二十九日

 日本の国民負担率は欧州と比べて低いとよく言われていますが、日本人は税負担は重いと感じています。福祉国家派や財政再建派はこれをつかまえて日本人は民度が低いと断じていますが、このいわゆる応分の負担を国民に求めている「良識派」の政治家や学者や官僚の認識はどこまで正しいのでしょうか?

 国民経済計算から雇用者報酬(いわゆる給与)と家計の財産収入から税と社会保険負担(被用者分)を取り除いた税引き後の可処分所得を計算してみました。引いた税金は所得税と住民税、間接税(消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、自動車重量税)です。

 エネルギー統計によると家計部門と事業部門の輸送用エネルギー消費量は同じくらいなので、揮発油税総額の半額を家計の負担としました。自動車重量税については家計の負担割合がわからなかったので仮に4分の1と言うことにしました(自動車保有台数は家計と事業で半々なのですが、企業が持っている車両はトラックやバスなど概して重い車両が多い)。

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 これはびっくり、家計はかなり税金を払っていることがわかります。従来の議論では住民税(都道府県民税と市町村税)と間接税の負担は意図的に無視されて、家計の負担は所得税と消費税だけかのように言われてきました。けれども家計はそれ以外にも地方税と社会保険料とガソリン税や自動車重量税などを払っているのです。

 家計の税引き後所得は1994年215兆円をピークに、1998年以降減少を加速し、2004年時点では181兆円しか有りません。間接税の直近データがなかったのでそれ以降のことはわかりませんが、2005〜2007年は増加したかもしれませんが、2008〜2010年はやはり家計の所得は減っているはずです。

 家計は給与の28%を税金や社会保険料として政府に納めていることになります。欧州の税負担が50%近いと言っても、そのうち10数%は日本同様に企業の負担ですので(欧州は何かと企業の社会的負担が重い)、実は家計の負担は日本と欧州ではそんなに変わらないのです。

 私は今まで福祉国家派の学者の説を鵜呑みにして日本人は身勝手だといってきましたが、それはどうも正確ではなかったようです。

 ただし、国民は政府からとられるばかりではありません。年金や医療・介護、保育など福祉給付を受けているのです。再分配後の所得も調べないと正しくありません。

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 このように社会保障給付をプラスすると、家計の所得はあまり減っていないことがわかります。けれども、年金や医療という物は現役世代には縁がない物です。ですので、現役世代に非常な不公平感が生まれているのだと思います。

 おそらく日本は現役世代が受け取れる福祉サービスが貧弱すぎるのでしょう。

 すなわち、不公平感をなくすにはまず年金は多少削り、高齢者の負担を増やし(消費税を上げる、医療費の患者負担を増やす)、保育や教育など現役世代への給付を厚くすることが肝要と思われます。

 あと、これは成長戦略がに関わってきますので賛否両論があるでしょうが、私としては法人税は1980年代の水準に戻すべきだと思います。あるいは、年休を増やす、労働時間を減らす、残業代をきちんと払う、育児休暇を取りやすくするなど、間接的な企業の社会保障負担を増やし、現役の受け取りを増やすことも考えられるでしょう。

 今回分かりましたが、日本人の重税感には根拠があります。現役世代は欧州人と変わらないくらい税の負担をしています。そして日本の社会保障給付は高齢者に偏りすぎています。これが不公平感を生んでいます。現役世代が受け取れる福祉サービスを拡充しなければなりません。企業は法人税をもっと払うか、労働環境を改善することによって社会に貢献するべきです。

 物価水準を加味した所得の水準の推移を掲載しておきます。

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 青が現役世代の可処分所得と見て良いでしょう。1990年頃と比べて実に20%近く減少しています。それに対して赤は高齢者ですが5%くらいしか減少していません。しかし、消費の主体は現役世代であり、高齢者はあまりお金を使いません。現役の可処分所得が20%も減れば消費が縮小して当然です。高齢者は受け取った年金をひたすら貯蓄するばかりで消費していません。これでデフレにならない方がおかしいでしょう。

 消費税の増税はやむを得ないと思いますが、現役が受け取れる福祉サービスの拡充とセットでないと理解は得られないでしょう。菅政権の失速はそれが理由でしょうし、自民党(従来から高齢者優遇の政策が多い)も今の政策のままでは次の総選挙では勝てません。それと学者はすぐに欧州を持ち出して日本人を萎縮させるのは止めていただきたいです。欧州の人はそんなに立派でもないですし、日本人の感じている重税感は間違いではありません。

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