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2010年8月 8日 (日)

夏の夜のGDP

陰暦 六月二十八日 【末伏】

 どうもGDPや一人当たりGDPが正しく国家経済の規模や国民の豊かさを表しているように思えない。欧州諸国の一人当たりGDPは日本よりもずっと高い(為替を考慮に入れても高い)。でも私が生活したり旅行をして見聞した範囲では、欧州の多数の人たちが日本人よりも良い生活をしているようには到底思えない。欧州人の生活はハッキリ言って貧しい。彼等一人一人が日本人よりもお金を持っているとはとてもじゃないが信じられない。

 社会保障が充実しているからという意見もあるが、そもそも欧州の年金や健康保険は国民全体をカバーしていない。保険料を払っていない人には受ける権利がない。社会保障を勘定に入れても、欧州の一人当たりGDPが日本よりもずっと高い説明が付かないと私は思う。

 だいぶ前から韓国や台湾の一人当たりGDPが数年で日本を追い越すと言われて等しいが、一向にその日が来ない。それに韓国や台湾の人たちは大きいGDPのわりには生活水準が低いように見える。一部の輸出企業に金が集中しすぎているのだろうか・・・?

 日本以外の国は。階層による富の格差が激しいのだろうか?米国はそれで説明が付きそうな気がするが、欧州って日本よりも富の格差が少ないんじゃなかったっけ?

 思うに、欧州や韓国なんかはGDPには計上されるけれど、所得として分配されないような金が多いのではないだろうか?一番怪しいのは金融業の資産 の膨張で、金融業に世界中から金が集まって帳簿上は富が膨れあがっているけれど、いずれ返さなければならないお金だから、誰にも分配されず、何にもならな い死に金がかなり多いのではなかろうか?

 もう一つ気になるのが軍事費で、一般の企業にも国民にも分配されず、兵器や軍事施設に投入されているお金が多いのかもしれない。英国とかフランスとか韓国とか台湾はその可能性がありそう。

 欧州は公務員が非常に大きい、政府支出も大きいと最近はテレビも言うようになったけれども、欧州の「公務員」の中には軍人や軍属の人数がどのくら い含まれているのか、「政府支出」の中には軍需関連の官営企業がどれくらい含まれているのかが気になる。欧州のRD費(研究開発費)が日本よりも大きいと いうのも、軍事関連の占める比率が高いのではないかと私は思う。

 学者さんはGDPを見てすぐに「欧州は優れている」「社会保障が充実している」「成熟した先進国なのに経済成長を実現している」と持ち上げるけれ どナイーブすぎないか?それとも留学中に付き合った人たちがハイソサエティーばっかりで、欧州のワーカーの貧乏暮らしが目に入らなかったのだろうか?

 私も欧州は大好きなのですが、子供の頃に暮らしていただけに、あそこが理想郷とはとても思えないのです。社会保障が充実しているわりには何故に欧州の人たちは日本人以上に節約して老後の金を貯めているのでしょうか不思議です。「欧州の人たちは国家の保障を信じているから安心して消費にいそしんでいる」と吹聴している人がいますが大嘘です。彼等ほど老後が不安で金をせっせと貯めている人たちはいません。

 ということは、おそらく欧州の「社会保障」には日本人にはわからない何らかの綻びがあって、公式に発表されている数値ほどは欧州の一般国民は保障を受け取れないと言うことなのだと思います。年金に税金がかけられるとか、健康保険が受けられない治療が多いとか、優良企業に勤めていない人は失業しても保障がもらえないとか、欧州の社会保障には何らかの落とし穴があるはずだと私は思っています。でなきゃ彼等があんなに節約して金を貯めたがる理由がわかりません。

 まあ彼等は割合に株式という物に拒否反応がないので、そのコツコツと貯めた金で投資をすることが多いのですが、これもGDPが高いの割りには生活が豊かにならない原因の一つかもしれません。それとエコノミストが言うところの「欧州に見習え」というのはこの一般人が株式投資する世界になることを言っているのでしょうが、真っ平御免ですね。その株もこの前のバブル崩壊でほぼ紙切れになったし。既に国民負担率は十分高いのに、これから高齢化が始まる欧州の人たちはどうするんだろう・・・

 実需と本当の意味での生活水準を反映する適当な数値はない物だろうかと思う・・・

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コメント

 欧州における、高福祉、高負担を維持するには、大企業への依存度を高めることが前提の一つだと考えられます。
 欧州のGDPのおける「軍需産業」「公務員」「相続税」の在り方について述べられる事は少ないように思えますね。日本では、理想を語る上で不都合な「軍需産業」による経済依存度の高さ、「公務員」の多さによる「サービス業以外の労働者」の割合の低さによる労働生産性の低さや「相続税」が日本よりかなり低いことで、資産を維持することが容易であること、高級な家具、宝飾品、服飾等も長年使用することもありますから需要不足に陥り易いのに、金が廻っている不思議があります。
 
 そのことから、高負担を強いるためには、国民に「金融資産」を持たせると言うことが大前提の社会制度となっているように思います。

 そのため、EUの金利は日本のように低金利ではあってはならないし、金融資本主義への親和性が高い社会環境というか依存度の高い社会システムだと言えると思います。
 預金を持っていれば、そこそこの「金」が手に入りそれが、消費を支える仕組みですから、日本の都市リベラル(ネオリベ=リベサヨ)にとっては、EUモデルは理想と言うわけです。

 日本は、米国の公定歩合から常に1%以上下げるという「暗黙の了解」があるようですしEUともそのような合意があるかもしれません。ですから、日本の金利上昇には神経をとがらせ国債による金利上昇の懸念を宣伝し、常に欧米との金利差が埋まらないようにしているともいえます。

 以前にEUは、高負担によって一般の中小企業は存在し得ない状態なのも、産業構造が常用の工場労働者を大量に必要としていない産業構造になってしまい、サービス業を主体とし過ぎた弊害でもあると思われます。
 
 EUにおける、住宅問題がどのようになっているのか詳しい事はわかりませんが、相続税の低さによって、住宅ローンを組むことで可処分所得が下がる日本とそれらの負担が低いEUでは高負担をしても自己破産しない安心感もあるのでしょうね。

 ですから、民主党とみんなの党を支持する方達の思惑が、金融資本主義モデルとしてのEUを模範とするのは、至極当然なのでしょう。
 いってみれば、剰余価値(不労所得)で食う「社会主義者」が「資本主義」「自由主義」を表では唱えているということなのでしょうか。

投稿: 保守系左派 | 2010年8月 9日 (月) 16時44分

この前EUが露骨なほどお手盛りなストレステストをやって「これでEUの金融は絶対安心」とのたまっていましたが、そうせざるを得ない事情があるのでしょう。

金融に頼る国家体制である欧州にとっては、80年代の日本のバブルは我々が思っている以上にかなり脅威に写ったのかもしれませんね。

ただ・・・その欧州金融帝国も、結局近隣窮乏か政策の権化のような今のドイツが稼ぐ金が頼りというのも皮肉な話です。いくら金融工学だなんだといっても実需で金を稼ぐ部門がないと結局価値は生み出せないのでしょう。

博打打ちだけでは生活はできません。彼等は金をグルグル回しているだけですから、生活費の分だけ場にある金は減っていきます。博打打ちに金を提供してくれる堅気のカモがいないと結局バクチだけでは生活できないのです。

欧州の経済というのは、ドイツの輸出産業と英仏の小麦農家が稼ぎ出した金を、グルグルとバケツリレーして「付加価値が生まれた」と言い張っているだけで、実際のところ経済規模は小さいのではないかと思うのです。

だって非金融企業が発行した社債の額と、非金融企業が計上した利益がほぼ同額なんですから。ECBの統計を分析した時には呆れましたよ。何も生み出していないんですよ。


いわば預金とか證券といった物が、今の欧州では「荘園」であり、その荘園を持った貴族だけに人間としての価値があるということなんでしょう。向こうの人たちは労働者でもコツコツ金を貯めて投資をしたがるのですが、これは日本人の土地に対する執念と似た感情なのかもしれません。

日本の場合は、太閤検地までは、土地の耕作権である「名」を得ることが人権を得るための必須条件でした。日本でも欧州でも支那でもインドでも元々人権というのは土地に付随した権利なんですね。農業生産が全てに優先しますので、農業生産を守るために人権が認められるわけです。

日本はそれが住宅地に転嫁していますが、欧州は金融資産に転嫁しているのでしょう。この前読んだ網野先生若かりし頃の荘園の論文には「日本の土地所有権の後進性が・・・」とかありましたが、土地が證券になっていればマル経的には進歩したことになるんでしょうか(笑)

※網野善彦先生の初期の論文がマルクス経済的な匂いがするのは時代のせいであって、あのマル経特有の言い回しを頭の中で除去して読めば、先生の初期の論文も価値は今でも衰えることはありません。

投稿: べっちゃん | 2010年8月 9日 (月) 22時17分

 マルクス経済学が土地所有の概念の喪失し、剰余価値で廻り始めた初期EU圏の姿を現していたということですね。問題は土地所有権が息づいている地域に無理やり適合させようとしたことなんでしょうね。
 
 ところで、表題を最初に見た際はサンデル教授の「ハーバード白熱教室」(NHK)の「GDPを超える価値」ぽいことを念頭に書かれているのかと感じました。
 今月来日して東大等で講演をするらしいので、べっちゃんさんは行かれるのかなと思いました。

>網野善彦先生
http://dream-body.spaces.live.com/blog/cns!C62A03DD70A47166!1743.entry
「無縁」「公界」「アジール」 と近代化所有権の確立の話でしょうか?

投稿: 保守系左派 | 2010年8月10日 (火) 04時31分

 青春十八切符を使って東北地方のローカル線を乗りつぶしていました。今回の旅で完乗率が70%に達し、全線完乗が見えてきました。

 車中で本を読みながら所有権の発達について着想を得ましたので後で書きますね。

投稿: べっちゃん | 2010年8月13日 (金) 10時16分

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