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2010年8月23日 (月)

日本の所有権の発達(五)・・・母系と父系のハーモニー・下

陰暦 七月十四日 【処暑】

 以上のことから私は古代日本では財産は母系で継承し、社会的地位は父系で継承されていたのではないかと考えています。

 より厳密に言うと、土地や兵力や技術といった氏族の力の使用権は、氏族の中で一番社会的地位が強い人にあった(これは当然です)。そして、族長の娘が王に嫁いで生んだ王族が氏族の中で一番に社会的地位が高い人物に相当すると言うことになります。

 氏族の力の指揮権は血縁者にしかないのです。逆に言いますと、たとえ天皇であろうとも、お祖父さん(あるいは伯父さん)の氏族しか使うことはできないということになります。これはおそらく縄文時代からの風習なのでしょう。

 紀元前五世紀頃?から日本に大陸から米作りや絹織物などの技術とともに多くの帰化人がやってきたと推測されています。戦国時代の戦火を避けてでしょう。皇紀のスタートもこのあたりですから、天皇家・大和朝廷の文化基盤はこの帰化人の波にあるはずです。社会的地位の父系継承はこの時に持ち込まれたのでしょう。というか、「氏族を超えた組織(=国家)」という概念自体がこの時に大陸から持ち込まれたのだと思います。

 律令制は完璧な父系継承ですので、この社会的地位の父系継承は律令制導入によって強化されます。

 やっと荘園制に話が戻りますが、「名」を守るためには官職が必要です。公務員であれば給与として土地の私有が認められるからです。官職に就くために不可欠な官位は父系で継承されます(蔭位の制度)。ですので、五世王族とか藤原氏の傍系とかのほとんど無一文の風来坊でも、官位だけは持っていますので、婿として受け入れれば土地を守ることができます。そして、官位は蔭位の制度によって父系で継承されますので、地方では父系のような母系のような継承が広がるわけです。

 それまでは村総出でないと生産をすることも土地を守ることも不可能でした。しかし土地の生産技術が上がってくると、せいぜい数家族くらいで農業をすることが可能になってきます。母系で横につながると動員力は大きくなりますが個人の所有権は曖昧になります。父系で縦につながると動員力は弱まりますが、個人の所有権は強固になります。

 土地の所有権は法の整備によって父系継承でもある程度守ることができますが、兵力の動員は命に関わることなので血族の力が後々まで物を言ったのでしょう。戦国大名ですら血の繋がりがない家臣を動かすことに苦労しています。社会的上下関係だけで命を懸けて戦うことが義務づけられるのは、江戸時代に朱子学者が「忠孝一致」という概念を生み出すまで待たなければなりません。

 欧州でも日本同様に血縁的な動員から、所有権を守るための封建制的契約関係、それが金が全ての傭兵制(ここら辺が日本ではあまり発達しませんでした)、そして血縁関係を国全体に広げる民族主義(ナショナリズム)ができて初めて血の繋がりも金の力も関係なく兵隊を動員することが可能になります。擬似的血縁関係を国全体に広げて無償の奉仕を国民に強要するという意味で、忠孝一致と民族主義は根が同じなんですね。日本的朱子学にどっぷり漬かった幕末の日本人が、民族主義の嵐吹き荒れる欧州のことを即座に理解できたのは当然だと思います。

 ともあれ、紀元前に大陸から入ってきた社会的地位の父系継承が律令制によって強化され、中世の生産力向上によってやがて財産の継承も父系になっていったのだろうと私は考えています。

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コメント

 日本の労働分担が、外に対する決定権を父が持ち、内にたいしては決定権を母が持つのは、戦後の高度経済成長期ころまでは暗黙の了解事項としてあったと思いますし、それゆえに成長を歩めたのではないかと思う向きもあります。
 「総領娘」というのは、田舎では結構残っています。男は妻に実は従いやすいもので、「官」と「財」の継承をそれなりにうまくやってきたのだと思います。
 それだからこと、相続争いをおこさせない様に利害調整することもあったのですが、リベラル系の弁護士による扇動で、「官」と「財」の解体が進んだことが、地方をより衰退させ、個々人に解体することで派遣労働を増やし経済力を弱め少子高齢化社会へ誘導したのではないかと思います。
 北欧の消費人口の少なさは国民の絶対数が日本と違い少ないがゆえに「国民総動員体制」を平時においても継続しないと成り立たないのです。日本の場合本来食えるはずの体制をむしろ食えない体制へと向かわせるために、現在のデフレを長期に渡らせる必要があったのではないかと考えるときもあります。

 日本の女性ほど強い財産権を持った女性は世界にはいませんからね。

 フェミニストは日本の女性から既得権を奪い、欧米の女性(財産権がありません)並みの低い存在に落とそうとする女性の敵です。

 日本の女性は家族の財産権を全て持っていますが、欧米の女性は最大で半分しか与えられませんからね。日本の女性はフェミニズムなんかに騙されてはいけません。

 フェミニズムは父権主義を強めることでしかないと思いますけどね。
 日本の女性ほど、財産権が強いのが何で一般の人達はわからないのでしょう?
この当りは不思議なんです。
 以前、熟年離婚をやたらメディア、弁護士が取り上げていたこともあって、酷いな。と感じたものです。リベラルの詐欺的性質はどうしてなんでしょうね。

 でも結果として日本の女性はフェミニズムにはそれほど影響は受けていない気がします。若い人たちはむしろ古い女性像に回帰しつつあるように思います。

 ただ、問題は私たちの世代なんですよね。30〜45歳くらい。この年代の女性は恋愛至上主義と(仕事による)自立への思い入れが非常に強いです。

 この時期は家庭科教育が料理や裁縫などの実技からフェミニズムやウーマンリブのすり込みに移行した時期で、その悪影響だと思います。それとテレビでしょう。家庭科の教員免許は取りやすいので、活動家がだいぶ入り込んだんだと思うんですよね。

 それと不況による若年層の給与低下が相まって、超少子化を招いたのです。

 私は高校の時に左翼に疑問を持ち始めて、色々と本を読んだりしたのですが、高校の家庭科で配られた女性の自立を説いた副読本の推薦人に蒼々たる左翼活動家が名を連ねていてビックリしたことがあります。

 彼等は明らかに意図を持って家庭科教育に浸透して、それはかなり成果を上げたと思います。その結果が今の30台の結婚忌避ですよ。

 私より若い世代はそういうのはあんまりないです。どこかで家庭科教育の是正が行われたのではないでしょうか?

 家庭科は盲点ですね。その後の食育へと続くわけですね。
 そうだと、農業関連に80年代に日本的左翼系の知識人がやたら肩入れを始めたのも、同様の目的があったのかもしれませんね。
 農水省は昨今は左右に叩かれることが多いのですが、農水省関連の審議会に左翼系の知識人が浸透したのもそのころです。
 ソビエト崩壊後の共産主義思想の逃避場所として、選んだところに現在の悲劇があるように感じられます。
 カロリーベース自給率ではよく叩かれるのですが、低い自給率を補うことを口実として、80年代の日米貿易摩擦の解消として、農水産物の「高い国内農水産物を消費者は買わされている」という、経団連と消費者団体や流通業者(生協等)が一大キャンペーンを打ちました。あの時も随分、農協と農林水産業者は叩かれました。あの時の自民党の幹事長は小沢一郎で彼が主導したんですよ。
 その彼が主導で戸別所得保障制度の推進者なのですから、農地等の所有権を崩壊させる何がしかの魂胆があるのか危惧しているところではあります。

 女性が仕事をするのは別に悪いことじゃない氏どんどんやればいいと思うのですが、これまでの女性の生き方に罪悪感を持たせることで女性をそういう方向へ誘導するのは止めて欲しいです。こういうやり方は専業主婦も職業婦人も両方不幸にします。

 左翼は一事が万事そうですよね。女性の自立とか少数民族の保護とか戦時賠償とか軍縮とかどれもこれも結構なことなのですが、何故いちいち悪口が伴うのでしょうか。普通に利点を説けばいいのにと思うのですが。裏の目的があると思いたくなります。

 日本の食料品は確かに高いのですが、それは果たして生産者のせいかというと疑問がありますね。農産物の仕入値を聞くとそのあまりの安さに肝を潰します。日本の運賃はそんなに高くありません。てことは日本の食料品が高い元凶は卸売業とか大手小売りなんですよね。

 小沢の支持基盤はこういった各種仲介業者にあるんじゃないですか?彼のお金の集め方も政治のやり方もこういった口利きが多いじゃないですか?そういったや出自なんじゃないでしょうか。岩手県という純農村地帯から出ている割りには農業に打撃を与えるような政策が好きだし。だから岡田のような大手流通業者や鳩山のような資産家と相性が良いのではないでしょうか。

 そして組織内で働く人への強烈なコンプレックスがあり福祉のような互助への理解が根本的に欠けている。多分農村で昔からあるようなコミュニティーに入れてもらえなかったのでしょう。日本文化を破壊してやろうという彼の情念の根っこはそのあたりにあるのではないでしょうか?

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