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2010年9月 6日 (月)

日本の所有権の発達(八)・・・商人から税を取り立てる

陰暦 七月二十八日

 仕事やら趣味やらゲームやらで忙しくてブログがお留守になってすみませんでした。

 地面に生える作物や、草原に群がる牛馬と違って、商業活動で得られる富はどれだけ利益が得られたのか外からは計測がしにくい難点があります。さらに土地は権力者によって所有に規制をかけやすいのに対して商業活動は場所を選ばないので規制がしにくい面があります。

 商業活動は、生産者から商品を仕入れて消費者に売ることで利益を得るわけですが、その商品を支配者の領域の外から持ち込んだ場合、支配者は商品に対して所有権を主張できないため、商人が売買によって得た利益に税金をかけることができません。

 昔の人というのは意外と権利関係に厳格であるのです。やろうと思えばなんにでも税金をかけることができる近代国家の方がある意味よっぽど横暴であるのです。

 さて商人が外から持ってきた商品を売ったことで得た利益から税金を取り立てる売上税の考え方は古代はあまりなかったのです(全くなかったとは言いませんが)。

 支配者が主張できるのは空間の占有権だけですので、商人から税を取り立てるとすると、売り場の賃貸料、あるいは商品の領内通過料(関銭)の形となります。賃貸料は販売設備に対する外形標準課税といえるでしょう。通過料はいわば間接税です。それと少し変則的な税金として認可料というのもあります。

 欧州の教会は都市住民の所得に十分の一税をかけていましたが、これは全ての物は神の所有物という一神教の教えが根拠となっています。ここら辺、全国的統治機構として教会を継承した欧州の近代国家は所得に税金をかけやすかったのですね。

 律令国家は市の商人には売り場を口分田と同じように配分して、そこから使用料を取る形式をとりました。これは矢銭に近い。中世になると関銭が主になってきます。取り立てやすいからでしょう。荘園制の時代になると権門や寺社が商人に保護(営業権や関所の自由通行の権利)を与える替わりに上がりを徴収するケースが出てきます。認可料・免許料です。これは絶対王制の欧州諸国では税収の大きな部分を占めていました。織豊政権は通行料目的の関所や、同業者組合から免許料の徴収をするのを止めるかわりに、都市の住民から家賃を取り立てるようになります。

 家賃は間口(店の通りに面した部分の幅)でかけられたので、京都では鰻の寝床と呼ばれる奧に深い町屋が発達しました。あれは京都の町人の節税対策なんですね。

 松平氏は流通業者だったらしく、京都にいた分家は室町幕府を相手に金融業をしたりしています。これに関しても川並集(尾張の水運業者)の一員だった豊臣秀吉と相通ずる部分があります。ですので徳川家康は商業の重要性は十分に認識していたはずです。

 しかし徳川家の商業に対する知見は商人から税を取り立てる方向には使われず、町人の税金を軽くして商業活動を活発化させる方向に進みます。これによって、江戸時代の前期に都市は大発展を遂げます。江戸は人口百万の世界有数の都市となり。京大阪も数十万人を抱える世界的都市となりました。都市はこれまで下級戦闘員になるしかなかった農家の次男坊三男坊や浪人を商業活動によって吸収して世の中を安定させたのです。徳川幕府は減税によって都市に失業を吸収させたのですね。

 しかし商業活動が活発化し、生活必需品を市場で手に入れるようになってくると貨幣が必要になってきます。江戸時代の初期の人口は1,500万人程度でしたが、その後の五十年間に大爆発して3,000万人まで増加します。ですので単純に考えてもGDPは倍増したはずです。しかし徳川幕府や大名は、これもまた社会の安定のためにあまり検知はしませんでしたので税収は倍にはなりませんでした。しかも税を米の形で徴収していましたので、米の生産増によって米価が下落するとともに実質収入は減り続けました。副食や衣類や参勤交代にかかる通行料、江戸での滞在費(当然都市の方が物価が高い)は鰻登り。お手伝い普請(公共事業)にかかる費用も人件費の上昇によって上がります。

 こうして幕府と藩は慢性的な財政難に陥るのです。

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