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2010年11月16日 (火)

藤子アニメのヒロインたち(二)・・・年下の男の子

十月十一日

 以下の文章には藤子不二雄作のマンガ・アニメのネタバレが含まれていますので、先生の作品を予断なしに楽しみたい方は読まないことをお薦めします。

 「パーマン」に次いでラブコメ的要素があるのが「T・Pぼん」の第一部です。「T・Pぼん」はマイナーな作品なので物語の概要から説明しますと、タイム マシンができた未来の世界では時間を超えた犯罪の取り締まり、過去に発生した非人道的な事件の救済、現在までの歴史の流れを危うくするような「歴史の揺ら ぎ」の除去のためにタイムパトロールという組織が結成されていて、時空を越えて活動しています。映画のドラえもんにもよく登場します。

 普通の中学生、並平凡(なみひらぼん)はひょんなことからタイムパトロールに参加することになり、先輩パトロールのリーム(ぼんよりもちょっとだけ年上のように見える)の助手になって時空を越えて人命救助に務めることとなります。

 ぼんとリームの出会いはなかなか衝撃的で、リームの手違いによりぼんにタイムパトロールの存在を知られてしまったため、リームは過去に遡ってぼんの両親が結婚しないように仕向けようとします。ぼんが生まれなかったことにしてしまえば、秘密を知られることもないし、最初からいなければ殺人にもならない(異論はありますがタイムパトロールはそう考えるらしい)からです。平然とそういう隠蔽方法を考えるリームも、それを承認するタイムパトロールの上役も相当な悪のような気がします。

 もちろんぼんは必死になってリームを妨害し、そのせいでリームはタイムマシンが壊れたりして散々な目に遭うのですが、詳しい調査によってぼんが歴史に関わっていることが判明し、秘密を守らせるためにぼんもタイムパトロールに加えられることになります。漫画版ではぼん以外にも過去の世界の住人の隊員がいますので、時代を超えて機動的に活動するために、各時代に隊員を分散しているようです。

 タイムパトロールというのは虐殺事件の救済をするかと思えば、組織を守るためには歴史に関わりのない人間は消しても罪にはならないという、アングロサクソン的な二面性を持った不思議な組織です。F先生はSF短編やエスパー魔美ではこういった人間の道徳観を揺するような際どい内容を多く描いています。90年代以降のF先生がタッチしなくなってからのお為ごかしのドラえもんしか見たことがない人は、これらの作品を読むと、F先生の作品が持つ深淵に驚くかもしれません。

 とこのように、自分を殺そうとしたリームと組むことになったぼんですが、リームはぼんのことを世話を焼きながら指導します。ぼんはタイムパトロールとしての非日常を楽しんでいるだけのようですが、リームはぼんに気持ちが傾いているらしいことがマンガを読んでいると分かります。アラビアンナイトの回ではぼんと離れ離れになって寂しそうですし、休暇で白亜紀に行った時にはリームから積極的に食事に招待したり、おめかしをしたりしてアタックしているようにしか見えません。

 第一部の最終回ではぼんが一人前になったため、指導係のリームは別れなければならなくなるのですが、別れることを言い出せないでふさぎ込んでいます。非常に危険な任務なため、リームが一人で遂行してもよかったらしいのですが、リームはぼんと一緒に行くことを選んでいます。ぼんに気持ちが傾いているリームと、あくまで指導係としてのリームを信じ切っているぼん。結局リームは同僚であり続けることを選びました。

 アニメ版ではリームとぼんのキスシーンがあります。子供向け、というかF先生の作品で口と口でするキスシーンはほとんどないのでこれを見た時にはギョッとしてしまいました。アニメでは二人の関係が一歩進んでいるんですね。

 時間的には、T・Pぼんはエスパー魔美とほぼ同時期で、第一期パーマンよりは後、第二期パーマンより開始が若干前に当たります。パーマンのラブコメ色は第二期の方が強いのですが、仕事の同僚との間の恋愛関係であるミツ夫君とパー子の前にはぼんとリームがあるんじゃないかと私は思っています。

 T・Pぼんの第二部では、今度はぼんが同じ時代の中学生の少女の由美子に手違いで正体を知られてしまい(正体を知られるというパーマンでも重要になっていることがここでもテーマになっている)、由美子をタイムパトロールの助手にすることになります。ぼんと由美子の関係は信頼し合う同僚といった感じで恋愛感情は見られません。これはパーマンとしてのミツ夫君とパー子ちゃんに似ています。

 頭脳明晰で仕事に冷徹な女性が主人公と関わってこれまでの自分に疑問を抱いて、仕事の切れは悪くなるのだけれど女性らしくなっていくというパターンは、「T・Pぼん」のリーム以外にも藤子不二雄作品の中にはもうあと二つあります。アニメ版の「プロゴルファー猿」の紅蜂さんと「ドラえもんのび太と鉄人兵団」のリルルです。

 紅蜂さんとリルルも、初めは主人公の敵として現れ、女の武器を使い、主人公を罠に嵌めようとするのですが、主人公の稚拙で一本気なやり方に心を動かされて組織を裏切ることになります。後半の紅蜂さんなんか猿に恋をしているようにしか見えないし、リルルものび太に「私を撃って」「意気地なし!」と迫る下りなんかは完全に恋人同士の会話です。リルルこそはのび太がドラえもんの道具を使わずにのび太が人格だけで落とした女性といえると思います。のび太は静ちゃんは道具を使って誑かしています。

 それにしてもタイムパトロールは楽しそうですが、同時代を生きる人たちよりも早く年を取るわけですので、そんなに割のよい職業でもないかもしれません。

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