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2010年11月15日 (月)

藤子作品のヒロインたち(一)・・・パーマンはラブコメだ!

 以下の文章には藤子不二雄作のマンガ・アニメのネタバレが含まれていますので、先を知りたくない方は読まないことをお薦めします。

 藤子・F・不二雄の全集が小学館から配本されていまして、ぼちぼち集めています。この全集は台詞の改変なしに発表された時のままの姿で収録することを 守っています。F先生の作品はかなりエスプリが効いているので、ポリティカルコレクトネスとやらに引っかかって、ここ二十年くらいそのままの形で出版され なかったのですが、F先生が亡くなってから一回り過ぎ、そういったことを教条的に守ろうという雰囲気も沈静してきたためか、ようやく先生の作品を発表され た時のままの姿で楽しむことができるようになりました。

 私たち三十代は藤子アニメで育ったと言えます。藤子アニメは私たちにとって人生の教科書でした。藤子作品は家族の大切さやあるいは時には煩わしさ、友達との付き合い方、社会の良い面、悪い面を教えてくれ、そして夢を与えてくれました。どうも「キテレツ大百科」あたりから大人の価値観押しつけの傾向が強まったので、私は90年代に入ってから藤子アニメを見るのを止めたのですが、80年代までの藤子作品はテレビ局による政治的な考えの押しつけもなく、自由がありました。

 F先生の登場人物は恋愛に対して淡泊だと言われることが多いのですが、私は子供の時からそんなことはないと思っていました。子供に見せるという制約がある分、露骨には描けないので、返って表現が奥ゆかしく、心理描写が複雑になっていると言えます。

 F先生の作品の中で最もラブコメ的要素が強いのは間違いなく「パーマン」だと思います。これはパーマンの文庫版発行以来マンガファンの多くに知られるようになりました。

 私は子供の頃からパーマンはラブコメだと気がついていました。当時はラブコメという単語は知らなかったのですが、ませた子供だったので(二歳から保育園に入っていて、そこには女の子が多くて、女の子に囲まれて育ったからだと思う)、ミツ夫君とパー子(星野スミレ)がらみの話を楽しみにしながら見ていました。月に一回くらいのペースでそういう話が挟まれていました。

 説明しますと、パーマン1号の須羽ミツ夫君は全く持って普通の小学生。勉強は人並み、スポーツはやや苦手にしています。パーマンに変身してからも優柔不断で無精なところもあるのですが、いざとなると勇敢で非常に頼りがいのあるリーダーになります。

 パーマン3号は国民的アイドルの星野スミレちゃんが変身しています。星野スミレの時には清純派でおしとやかな女性を演じていますが、パー子に変身すると地が出てお転婆な少女になります。ただしブリッコといっても、仕事だからと嫌々演じているわけでも、アイドルとしての自分をバカバカしいと思っているわけではありません。これもまた自分の一面として受け入れています。ここら辺がF先生の登場人物の誠実なところです。

 ミツ夫君はクラスメイトのみっちゃんにぞっこんで、アイドルの星野スミレには世間並みのミーハーな気持ちを懐いているだけです。みっちゃんはミツ夫君には全くといってよいほど興味を持っていないのですが、パーマン1号には憧れています。ミツ夫君はパーマン一号としてみっちゃんと頻繁にデートをしたりしています。でも素顔の自分に興味を持ってくれないみっちゃんに複雑な気持ちを懐いています。

 スミレちゃんはパー子になった時だけ本来の姿に戻って自由になれるので、そのお転婆な自分を受け入れてくれるパーマンの仲間と一緒にいると心が安らぐようです。それにいざというときには頼りがいのあるミツ夫君に徐々に惹かれるようになっていきます。普段のだらしないミツ夫君にも世話女房的に振る舞うことも少なくありません。

 正体を明かすと特別扱いされてしまうのではないかと恐れているので(実際一度だけミツ夫君とブービーに正体を明かす話があるのですが、案の定特別扱いされてしまう)、男三人には素顔を明かしていません。仮面をかぶっているが故に本当の自分に戻れるという非常に凝った設定で、パーマン、特にパー子の設定は物語として抜群だと思います。

 今回マンガで読んで驚いたのですが、スミレちゃんはテレビでハッキリと「好きな男の子がいる」と告白しています。もちろん相手はミツ夫君です。第二期のパーマンはアニメだけでなくマンガも含めて完全にラブコメなんですね。アニメの方でもパー子はミツ夫君の前では赤くなったり、みっちゃんに優しくするミツ夫君にヤキモチを焼いたり、みっちゃんに対してけんか腰になったりと非常に女の子らしいです。そして増山さん(峰不二子で有名)の素晴らしい演技がパー子の複雑な感情を十二分に表現していました。

 F先生の作品の中で代表的なヒロインというと「海の王子」のチャコ、「ドラえもん」の静ちゃん、「エスパー魔美」の佐倉魔美、「T・Pぼん」のリームと由美子、「パーマン」の星野スミレちゃん、「チンプイ」のエリちゃんですが、海の王子とチャコは兄妹でそういう感情は全くないですし、魔美ちゃんと高畑君は完全に相思相愛でやきもきさせられるところがなく、ラブコメという点ではパーマンが随一だと思います。リームと由美子についてはまたあとで論じます。エリちゃんは女の子ののび太なのでヒロインと言うよりは主人公でちょっと違いますよね。

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