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2010年11月 7日 (日)

農業自由化について軽く所感

十月二日 【立冬】【一の酉】

 輸出型工業の労働組合が最大の支持基盤である民主党がFTAを積極的に推進するというのはよく分かります。輸出がしやすくなって売り上げが伸びる上に、食料価格が下がって手取りが増えるからです。地方振興という前回の総選挙の公約からすると背信ですが、民主党の従来からの方針とは背反していない。米を自由化したのは細川政権ですからね。みんな忘れていますが。

 じゃあ農産物の輸入を完全自由化したら日本の農業が潰れるかというとそんなことはないと思います。鮮度と運賃の問題がありますので食糧生産は国内に依存せざるを得ません。それに日本の農業は味でも生産性(大規模化、換金作物の生産に成功している農家は)の上でも外国に比べて競争力がありますのでそうそう負けないと思います。

 日本の自給率が低いのは、外国産の飼料で育てた和牛まで外国産あつかいするとかいうわけのわからない農林水産省の数値のせいで、今でも日本人が食べる物はほとんど日本の農家が作っているわけです。それは自由化しても変わらない。

 毎日食卓に並んでいる物で外国産の物なんてパンと肉の一部でしかありません。いくら洋食好きでもエネルギーの摂取の6割をパンと外国牛だけに頼っている人はそうはいないでしょう。三食マクドナルドだというのならともかく。だからあの自給率はおかしいと気づかなければならない。

 ただし農業の大規模化はますます加速するでしょう。農業人口が今の10分の1くらいになれば、日本の農業は最先端輸出工業並みの生産性になります。FTAを推進しようがしまいが担い手政策を止めようが止めまいが、この動きは止まりません。農家の高齢化が進んだら、村に残った若い人に耕地を預ける以外に選択肢がないからです。退職後に故郷に戻る人はいてもごく少数でしょう。

 問題は、農業人口が百万を切る状態になった時に、地方の農家が伝えてきた日本文化をどうやって継承していくかと、中山間地の防災をどうするかと、辺境部における外国人の不法な移住をいかに防ぐかの三点だと思います。

 それに日本の食料は確かに外国に比べて割高ですが、それは果たして農家の責任かという根本的な問があってもいいはずなんですよね。農家の卸値なんて無茶苦茶安いですからね。流通には問題はないのかと。

 食料価格の問題が全て農家の問題として片づけられているのはなぜか、大規模流通業がメディアの最大の広告主であることや、今の与党の幹部に関係者がいることは関係がないのか。ただまあ小売りだけじゃなくて、卸売業者とか農協もかなり怪しいのですが。そういえば農協は民主党になってからぜんぜん問題が取り上げられなくなりました。いくらFTAで市場開放したって、戸別補償等々の補助金でこれら生産者よりも大勢の人間が関与する流通の高コスト構造が温存されたら、結局その補償金は税金として商品にかかってくるわけで、自由化の意味がなくなります。

 今の日本は工業にしても農業にしても運輸業にしても小売業にしてもサービス業にしても、現業をやっている人たちにあまり問題はないと思うのです。問題はこれら実の産業の陰に隠れて権利関係だけで儲けている人たちが高コスト構造を作っていることだと思うのです。そしてその人たちは追及を逃れるために、やれ農業は高コストだ、円高なんだから製造業は時代遅れだ、日本の運賃は高いだ、日本の商業は小規模で生産性が低いだと実業に就いている人たちを叩いて国民から活気を奪っています。確かに自民党の中核はこういった様々な虚業に付いているブローカーたちでしたが、民主党の中核も新手のブローカーたちなのです。そろそろこっちに目を向けるべきだと思います。

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コメント

 英国の農業保護のマネの戸別所得保障は、農業そのものではなく、文化・環境保護を大義名分にして実質的には生活保障と地域保全による文化保護ではなく、単なる金融保証になっていることが問題です。

>農家の高齢化が進んだら、村に残った若い人に耕地を預ける以外に選択肢がないからです。退職後に故郷に戻る人はいてもごく少数でしょう。

 農家の子弟の大卒率は高いです。それもまた、退職後に故郷に戻らなく、耕作地を親族に管理を委託するのが現状ですけど、土地は手放しませんから、農地の集約は進みません。場所もありますから。
 平野部の大規模農業は何とかなるんですけど、

>食料価格の問題が全て農家の問題として片づけられているのはなぜか、大規模流通業がメディアの最大の広告主であることや、今の与党の幹部に関係者がいることは関係がないのか。

 日本の特殊な事情というか、保守が労働(実需)に力点をおき、日本的左翼は消費行動をに力点をおいていることが、たぶんに影響があると考えています。
 デフレ親和性の高い社会への誘導と維持を望んだのは彼らです。
 輸出産業以上に外需依存というか、輸入拡大による消費者のメリットを強調するサービス産業や外食産業の拡大は、一次産業・二次産業以上に賃金格差と不安定な雇用が絶対条件になると感じるので、あまり良くは受け取れません。
 「コンビニエンスな生権力環境」という表現を使う方が、「低収入の労働者でも安価に満足が得られる」という民主党が導入したいらしい、「幸福度」指数の導入を考えると暗い気持ちにならざるをえません。

 自民党の「担い手政策」が農家の自主性に任せた穏健な土地集積政策だったと思います。

 農業で食っている専業農家は主業が50万人しかいません。準業も50万人です。残りの200万人は、農業を仕事としてはやっていない農家です。

 農家というと何となく苦しみに耐えて頑張る人たちという印象がありますけれど、兼業農家は「農家」という法的な特権を利用する特権階級なんですよね。

 趣味的な兼業農家を戸別補償で国家で支援して、仕事としてやっている農家が成長する機会を奪うのは私はどうかと思います。

 担い手政策はこういった趣味的な農家や元農家がどうしても手放したくない土地の所有権は移転させずに、請負農家を増やす政策ですので良かったと思うんです。

 さて趣味的な農家を伝統を守る人たちということで守るべきか否かだと思います。ここら辺は、農協とか神政連とかと密接に関わってきます。安倍政権の時の教育基本法改正とも関わってきます。

 非正規労働というと、工場でこき使われている人たちという印象が強いですが、実はスーパーマーケットの店員と商店街の個人商店の店員が大多数ですよね。最近は外食産業の比率も多いと思いますが。

 よくは分かりませんが、多分理髪店とか獣医師みたいな半専門的な第三次産業も非正規労働が多いと思います。

 ここ20年間で非正規労働が増えたのは製造業の雇用が不安定化したのが原因ではなくて、こういった非正規労働に依存する第三次産業が拡大したからに過ぎません。

 第三次産業は、消費してもらわなければ始まらないので、どうしたって生産性は上がるはずがないんです。国民が買えないような水準の価格はあり得ないし、労働者の取り分を減らせば国民の購買力が下がります。

 卸売業と小売業の生産性はやっと国の平均に追いついたところだし。

 つまり今や最大の産業となった第三次産業の労働について、保守も左翼も意図的に無視して、未だに雇用の問題は第一次と第二次しか取り扱われていません。

>つまり今や最大の産業となった第三次産業の労働について、保守も左翼も意図的に無視して、未だに雇用の問題は第一次と第二次しか取り扱われていません。

 リバタリアン、アナルコ・キャピタリストな方達は、第三次産業に非常に多いということもあり、保護・規制というものが嫌いであり、「小さな政府」「規制緩和」を求めているのも多くはこの方達です。

 第三次産業の拡大は、自由な時間の行使(行動の自由)を前提とした欲求に答えることが、本来の流れであったと思います。
 フリーターを礼賛したのはそのためです。

>ここ20年間で非正規労働が増えたのは製造業の雇用が不安定化したのが原因ではなくて、こういった非正規労働に依存する第三次産業が拡大したからに過ぎません。

 この第三次産業の拡大と非正規雇用の拡大のためには、デフレ状態を経営者、労働者(消費者)双方が望んだ結果ではないかと自分は考えざるを得ません。
 
>第三次産業は、消費してもらわなければ始まらないので、どうしたって生産性は上がるはずがないんです。国民が買えないような水準の価格はあり得ないし、労働者の取り分を減らせば国民の購買力が下がります。

 べっちゃんさんのご指摘どおり、この20年間、生産性が向上しないのは第三次産業の拡大の影響が、購買力(消費の集中化)と低収入の労働者でも安価に満足が得られるコンビニエンス(秋葉原等)な環境の整備を要求した結果ということなんでしょうね。 

 金融部門が肥大化すれば第三次産業の生産性は見かけ上は上がりますが、金融の儲けは国民には分配されないので一部の人以外には意味がありません。

 お金が国境を越えて自由に動く世界では金融緩和だけではインフレにはできないですよね。特に内需が帯び悩む日本や欧米のような先進国では。

 デフレを望んだのが日本人自身だというのはその通りだと思います。定収入がある人にとってはデフレは望ましいです。困るのは小規模な事業者と失業者ですが、本来小事業主の声を代弁するべき自民党はその時新自由主義に毒されており、左翼政党は失業者の声には全く耳を傾けず、輸出産業の正社員の利益しか目を向けませんでした。

 それにプラスして、日銀がデフレ志向を持っていた。

 本来なら諸事業主を助けるべき自民党と、完全雇用を目指すべき左翼政党が協力して日銀に金融緩和を求めるべきだったのです。あまり推奨すべき手法ではないですが、与野党が一致すれば、1〜2%程度のインフレであれば報道をシャットダウンして問題化しないことは可能です。

 しかしまあ90年代末から00年代にかけてはむしろ左翼が積極的にデフレを推進したんですよね。預金金利を上げろなんてことを言っていたバカ(敢えて言う)もいましたが、金融の専門家がそういう命令を受ければ、需要不足の状態なら「デフレにしろという意味だな」と解釈して当然です。

 日銀の不作為の罪もかなり重いでしょうが、金利について正しい理解をしなかった政党が主犯です、日本は議会制民主主義の国なんですから。

 デフレ政策も結局、年金騒動とか子供手当とか農家の戸別補償と一緒で、一種の大衆迎合の政策なんですよね。

 つまりデフレは最終的には大衆を苦しめるのですが、マクロ経済的な見方ができる人は少なく(経済学者やエコノミストでもこれに関しては間違っている人が少なくない)、デフレによって目先の利益を得ることに熱心であると。

 しかもデフレによって不利益を被る社会的弱者ほど、金銭的余裕がないが故にデフレを望んでしまう。

 これは権丈風に言うとまさしく「大衆の誤った政策理解をそのまま利用することによって票を集める行為」と言えますので、デフレこそは最大のポピュリズムといえるのかもしれません。

 インフレは後期高齢者医療制度とか担い手政策とか2004年度の年金改革と一緒で、みんなの利益になるけれど嫌われる政策なのでしょう。菅政権がズタボロになっているのもインフレを目指すとしたからです。

 インフレにするためには確信犯的にデフレを目指している金融界・大企業と、誤解によってデフレを望んでいる大衆の両面を敵にして戦わなければならないので、政治家が正しい経済理解をして団結するしかないのですが、今の状況じゃ駄目ですね。

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