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2010年12月14日 (火)

輸出を増やすために貧乏になっても仕方がない

十一月九日

 この前の続き、自国通貨が安くなることは製造業にとってめでたいことであるのは間違いありませんが、国民の豊かさの増進という観点からはそうでもなさそうだと統計を眺めていて思うようになりました。

 いろいろと頭の整理をしなければならないと思うのです。通貨が高くなると製造業は生産性改善のために努力を強いられますが、通貨が高いからといって製造業がつぶれた国はなかったと思います。

 米ドルはこの40年間ずっと安くなり続けていますが、これによって米国で製造業が拡大したという話はありません。日本円はこの40年間ずっと高くなり続けていますが、日本の製造業の産出額は上がり続けています。GDPに占める比率は両国とも下がり続けています。雇用者数は減少しています。

 生産性が上がるとは畢竟少ない人数でたくさんお金を稼げるようになるということですので、雇用が減るでしょう。豊かになるとはたくさんお給料をもらってたくさん消費をするようになるということですから、安いものが作れなくなって当然です。じゃあ製造業を生かすために、日本人は豊かになることをやめろというのでは本末転倒であると思います。

 製造業や建設業は人手を必要としますので、手っ取り早く雇用を増やすにはもってこいの業種です。ですので失業を減らし、世の中を安定させるためにこれらの業種をのばそうというのはわかるのですが、製造業をのばすために日本人の給与を(海外に対して)下げろというのは本末転倒である気がします。

 もうひとつ、円高はデフレと深く関わっています。デフレになると大企業や資産家といった持てる者が得をして、中小企業や給与所得者といった持たざる者が損をします。これもまごう方なき事実です。

 日本はもう12年以上デフレが続いていますが、ただし指標では格差が広がったという事実はありません。しかし若者の間で失業率が上昇し、就職できた人も非正規雇用が増えているのも事実です。

 それと高齢者の間で、資産家もしくは社会保障が充実した企業に入っていた人と、零細企業で働いていたような人の間で年金や健康保険などの格差が生じているのも事実です。

 あとデフレによって企業の淘汰が進み、好業績をあげられる大企業と、需要の波を埋める不安定な零細企業に二分化したのも事実です。

 この十数年間のデフレは、今現在ではなく今後の日本に長期的にわたって格差を生み出す素地を作ったとはいえそうです。

 製造業の目的を輸出においている限り、他国との価格競争は終わることはありません。付加価値を高めるにしても、価格競争力をつけるにしても、いずれにせよ自動化が進むことになり、製造業の雇用は減ります。

 製造業によって雇用を確保しようと思えば所得水準を固定、もしくは低下させざるを得ませんが、これは国民全般の福利増進を目指すべき近代民主国家の目指すべき道とは思えません。

 対外的に人件費を下げるには、自国通貨を安くする方法があります。だからそれでもいいとは思うのですが、景気が良くなれば再び通貨高がやってきますので持続的な経済拡大ができません。

 それに私が見たところ、通貨が安くなった国では、むしろ格差は広がる傾向があります。通貨が安くなれば雇用が促進されるはずですのでおかしな気がしますが現実はそうです。

 これは輸出国の場合、人件費を抑制しようとする傾向が強まるからでしょうし、米国や英国のような金融偏重でかつ通貨安の国の場合は、帳簿上の富の増加は多いけれど実際国民の大多数に分配できる富は減る一方だからでしょう。自分の国で大した生産をしていない以上、大多数が豊かになってしまうと赤字が拡大するからです。

 じゃあ結局どうするべきかというと、一人一人の所得を増やすことにしくはないと思うのです。豊かになって通貨が高くなるのは当然のことです。

 通貨が高くなっても、技術革新あるいは商品の魅力(これも一種の技術革新)を増大させれば製造業はつぶれません、むしろ産出額はのびます。けれども製造業が先進的になればなるほど雇用者数は減るでしょう。

 個々人の借金で消費を拡大させる米国や英国のやり方はこれからは無理です。同じく企業の借金で消費を拡大させるバブル期までの日本やこの間までのユーロ圏のやり方も現実的ではありません。

 日本のような経常黒字で貯蓄の多い国ならば、国家債務を増やしてでも政府支出の拡大で消費を拡大しても良いと私は思うのですが、日本人の借金嫌いは重症なので難しいでしょう。

 では日本が何のために貿易黒字をためなければならないかというと、食糧と石油の輸入のためなのですね。そのために必要な金額はせいぜい30兆円にすぎないのです。そのうち15兆円くらいはこれまでの海外投資の上がりで稼ぐことができます。製造業が輸出で稼がなければならない金額は15兆円にすぎません。

 円高になれば海外投資はさらに増えますし、高まった購買力で高度な産業を育成すれば、円高でも15兆円くらいは稼げるでしょう。円高を怖がる必要はないと思います。大事なのは国民を豊かにして消費を促進させることです。輸出を重視するあまり、経済の成長にたがをはめては元も子もありませんし、それに日本ほど生活水準が上がり、技術力が上がってしまった国が輸出を増やそうとすると、機械化を進める方向にしか進みようがないので雇用は増えないのです。

 しかし十分に豊かになってしまった今の日本でどのような消費を増やすべきかはまた考えないとならないでしょう。

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