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2011年1月25日 (火)

デフレ不況とは黒字倒産なり(一)

十二月二十二日

 貿易黒字が外国に対する輸出商品の売り掛け金額にすぎず、決算値ではないことが分かるといろいろなことが見えてきました。

 貿易の決済は普通現金ではしません。大航海時代のスペインのように船に黄金財宝を積み込んだり、平清盛や足利義満のように船に宋銭を積み込んだりすることもかつてはありましたが、それだと海賊に襲われたり船が嵐で沈没すれば輸出品の代金は回収不能になってしまいます。

 ですので貿易では為替による決済が早くから発達しました。貿易による取引はすぐには決済されず、輸入者が受取手形を輸出者に郵送し、輸出者がそれを金融機関へ持っていって初めて代金が輸出者の手元に落ちます(他にも積荷證券の手配とかいろいろとややこしい)。

 大英帝国は18世紀から19世紀にかけて、世界中に郵便船網を張り巡らせるのですが、これは郵便制度が貿易の決済に不可欠だったからです。

 もっと経済が発達してくると、貿易業者は取引を毎回決済させず、売掛金を相手方の国の銀行口座に貯めておき、必要に応じてその口座から売掛金を回収するようになります。これが資本収支です。資本収支の中には、外国への投資などもありますが、基本的には貿易の決済です。

 すなわち経常収支(貿易収支+サービス収支)と資本収支の間にはズレがあります。

 貿易品の売掛金は為替の状態で保管されています。また外国の通貨も、その通貨を使っていない人にとっては広い意味では為替と同じです。為替ですので、現金化しようとすると当然価値が変化します。

 現代において一番大きい貿易為替の価値変動は、通貨価値の変動によって生じます。金本位制の場合、国が金と通貨との間の交換比率をいじらない限り売掛金は変化しませんが、通貨の交換比率が外国為替相場で日々変化する現代においては、売掛金を回収して自国通貨に戻そうとすると価値が変動します。

 これはちょうど、手形を現金化しようとすると割引が生じたり、利子を付けることで手形を繰り延べするのと同じことです。

 輸入国の景気が上向きで、輸入が増えるときには、輸出国は通貨安になりますが、これは輸出品の売掛金が積み上がったため期限までに支払いきれずに、支払いを繰り延べしているのと同じことですので、輸出国の通貨が安くなることにより、手形に利子がついている状態といえます。

 景気が進むと、貿易の決済が始まり、貿易品の代金が輸入国から輸出国に流れます。その際には手形割引が生じるわけで、これが輸出国の通貨高です。

 商品を輸出するということは、材料と投入された労働力とエネルギーの分だけ国富が外国に流出することを意味します。貿易は決済されて初めて国富となります。経常収支が積み上がっただけでは、単なる売掛金の増加にすぎませんので国富が増加したことを意味しません。

 それどころか、売掛金を積み上げるだけで、せっせと国富を流出させている可能性もあります。

 資本収支から経常収支を引いた額(決済額 — 売掛金)がプラスになって初めて貿易によって国富を得たことになります。

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