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2011年1月27日 (木)

デフレ不況とは黒字倒産なり(三)

十二月二十四日

 輸出品を作るためには、材料の購入、エネルギーの購入、設備の老朽化と輸送費とそして人間の疲労(人件費)などで国富が減少します。それを取り返すためには、費やした国富と同等以上の何かを持ってきて埋め合わせしなければなりません。

 物資で埋め合わせする場合、これは物々交換で貿易の決済をしているのと同じことになります。エネルギーの埋め合わせも一種の物々交換と言えるでしょう。陸続きの国の場合、エネルギーを売り買いするのは珍しいことではありません。フランスはドイツに原子力発電で作った電気を売っています。支那は水力発電で生み出した電気をベトナムに売っています。

 設備で埋め合わせすること、これは物々交換の変形ですが、まれにあります。戦時賠償などで戦勝国が敗戦国の生産設備を奪っていくことがこれにあたるでしょう。あるいは土地を設備の一種と考えれば、領土割譲もこれに当てはまるかもしれません。

 お金で埋め合わせするには二つの方法があります。一つは輸入国が代金を払うことです。もう一つは、信用通貨ならではのからくりですが、輸出国の中央銀行が、流出した国富の分だけ自国通貨を発行することによって流出した国富を埋め合わせするという手段があります。

 日本の場合、現在ほとんど資源の採掘は行われていませんので、輸出による国富の流出は、設備の老朽化と人間の疲労に限られます(輸送費は設備の老朽化と人間の疲労に含めることができます)。輸出しただけでは、国内の通貨総量は変化はしませんが、輸出品を作るのに費やされた設備と人間の分だけ国富は減っています。

 その国富の減耗分はいつか通貨を使って埋め合わせしなければなりません。そうすると通貨総量は減少します。従って、輸出品を作ったら、外国から代金を回収するか、自国の通貨を増刷しないと、通貨総量が減少してしまうことになります。

 戦後の日本の場合、貿易の決済を物資や領土ですることはあり得ませんので、国富の供給はマネーサプライ(国内信用分)で代用してそう違いはないはずです。このようにして求めた貿易による国富の流出と、日本銀行による通貨供給と金融機関による信用創出による国富の拡大の差額が下のグラフの縦棒となります。

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 1990年までは、マネーサプライが国富の流出を上回っていますが、バブルが崩壊した1991年以降はマネーサプライが国富の流出を下回っています。つまり日本は1991年以降、輸出すればするほど、国内がすり減る状態にあったのです。

 輸出によって、国富が流出する、円高によって売掛金の回収が進まない、日銀と金融機関による国富の補充ができていない、結果として国内の通貨総量が減少する。これがデフレの仕組みです。

 マネーサプライは一種の国の運転資金とも言えます。1992年以降の日本は、黒字が出ているけれど、売掛金を回収できないため、運転資金が不足して倒産する会社と同じ状態にあったのです。

 この運転資金の不足に加えて、先に指摘した現役世代から高齢者への所得の移転があるわけです。経済が破綻して当然と言えるでしょう。


 私の説明は経済学的な説明としては少しおかしいのかもしれませんが、日本人一般の感覚には私の説明の方がしっくりくるはずだと思っています。特に経営者に対しては。

 日本の中で一番経済学的な物事の説明を受け付けない人種は経営者ですから。

 それは経営者がアホだという意味ではなくて、日本の経済学者が、日本人一般の経済的感覚から遊離しているのが悪いのです。経済学者はもっと我々の生活に根ざした感覚で語るべきです。最終的にはそれで欧米の経済学とも調和した結論が出るはずです。

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コメント

そのために国富流出分の資金供給が必要なのでしょうが、日銀はやりませんし、政治家も動きません。
しかし、多分一番問題なのは日銀でも政治家でも官僚でもなく、デフレが望ましいと思ってる国民、もっと言えば高齢者なのでしょう。
どこかの新聞記事で見ましたが、マネックス証券の松本大がセミナーでデフレがいいと思いますかと尋ねたら、かなりの高齢者が手を挙げたとありました。これはかなり恐ろしい状況です。
もしかしてあと20年たたないとデフレは解消しないかもしれません。

投稿: mikura | 2011年1月27日 (木) 16時04分

私のキリギリスGDP分析によると、日銀はあと10兆円くらいマネーサプライを増やすべきなんじゃないかと思います。

そして公共事業もあと10兆円くらい増やしていいと思います。これでやっと日本経済は「普通」に戻ると思います。

1980年以前の日本や、米国の状況から推測するに、空騒ぎ指数は常に3〜5%くらいで正常だと私は考えています。

バブルのときにビックらこいて急いでマネーサプライと公共事業を減らしすぎたんでしょうね。

世代間対立については、私も二十年後を心配しています。別に日本の福祉は破綻していないし、財政も大丈夫なんですが、財政再建論と今の若年層の高齢者に対する恨みが20年後に爆発し、必要以上に高齢者につらくあたる政策が採用されるようになるんじゃないかと私は推測しています。

投稿: べっちゃん | 2011年1月28日 (金) 23時50分

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