日本残酷物語を読んでいます
学生の時の古本で大安売りしているのを見つけて買って以来積んどく状態になっていた「日本残酷物語」全巻に取りかかっています。
高校の時に一風変わった数学教師(今考えてみたら、あの人はおそらく組合員か共産党員だったのではないかと思う)から勧められたことがあったので買ったのですが、あまりにもおどろおどろしい題名でしたので読まずにいました。
けれども網野善彦の著書を読んでから読んでみると、そう怖い本でもない気がしてきました。「日本残酷物語」は農民以外はみんな苦しい生活という建前で書かれているのですが、よく読んでみると、貧乏なはずの僻地の漁村が活況を呈していたり、絶海の孤島の密貿易人が一財産築いていたりと全然残酷じゃないんですよね。
それでこの日本残酷物語の作者も、読者にサービスして「昔の日本の民衆は苦しい生活を強いられていたのだ〜」と表向き書いてはいますが、実際のところかつては僻地であるが故に裕福だった、水田耕作民ではないが故に裕福であった世界があることに気がついていて、それをさりげなく記録してあるのです、だからこれは注意深く読めば非常に有益な歴史の記録だと思います。
辺地に住んでいる人たちや、職工や流通業者なんかが苦しくなったのは、近代になって蒸気船と鉄道と機械が導入されて、僻地のアドバンテージ、熟練工のアドバンテージがなくなったからです。
だから徳川時代までは日本のいわゆる下層民はそれほど残酷な状況におかれていたわけでもなかったはずですが(飢饉はありましたけれどね)、明治から昭和30年代くらいまではある程度残酷な状況におかれていたんだろうなと思います。
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