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2011年2月 6日 (日)

社会保障にまつわる罠

 社会保障と財政再建と経済成長戦略は分離して考える必要があります。

 日本には社会保障の多大なニーズがあります。しかし財源は足りません。社会保障は国民が自分自身でお金を出し合って支えるべきであり、さらに後の世代に負担をさせてはいけないものですから、社会保障はなるべく単年会計にして、必要とあらば増税をするべきです。越年の持ち越しはなるべくなくして国民の間で総負担額=総給付額となるようにして増税しても経済への影響が最小限になる制度にするべきです。

 しかしこれと財政再建や経済成長とは別です。増税分を社会保障給付に回してもそれほど経済には影響がないはずなのに、社会保障に回せば景気が回復するかのような説明をしている政治家や学者は嘘をついています(ただし弱者の方が消費性向は強いので、所得を再分配すれば多少消費が伸びるのも確か)。それにこれまで赤字国債は社会保障の財源としては使っていないと国は説明してきました。それなのに社会保障の拡大が赤字の原因とするのはおかしいです。

 なぜこのような混乱が生じているかというと、これまで(自民党も含めた)政治家や財務省が社会保障を人質に取ることで国民を脅して増税を認めさせようという戦略をとってきたからです。従って財政赤字と社会保障の間には因果関係を作らなければならない。

 また、財政再建派と新自由主義経済学は密接に絡み合っています。彼らはこれまで国の歳出を減らせば、民間の経済が活発化して、経済が成長すると説明してきました。

 しかし実際は公共事業の縮小によって日本では経済の縮小が続いています。高齢化によって健康保険や年金など高齢者への給付が増加し、増税ができないので公共事業を縮小して高齢者への給付に回したため、公共事業が減り、消費も減って景気が落ち込んだのが正しい説明です。しかし彼らはこれを認めたくない。

 そしてもう一つ、先に私が分析したように、この二十年間企業や高所得者への減税が行われ、大多数の国民に対しては増税が行われてきました。企業も含めた全体としての納税額は確かに日本は欧州と比べて小さいのですが、誰が払ったかまで踏み込んで分析をすると、日本では企業の負担が小さく、個人の負担は欧州並みになります。これを知られたくない。

(1) 社会保障を人質にして国民を脅して増税をしたい
(2) 公共事業を縮小すれば景気が良くなるという自説の間違いを認めたくない
(3) 企業の負担が実は少ないことを認めたくない

 この三点が、日本の社会保障・財政再建・景気対策を混乱させていると思います。

 消費税を大増税して、企業の負担を減らすというのならそれは一つの国策としてアリだと思いますが、その場合は国民が貯金しなくても安心して過ごせるように社会保障制度を大幅に補強するべきでしょう。しかし今のままだと消費税は増税されて、社会保障費は自然増の分しか増額されず、企業の負担がいつの間にか減らされているという状況になりかねません。

 企業の負担を増やすというのは、結局は「社会保障負担に耐えられる企業以外はつぶれてください」ということを意味しますので、かなり踏み込んだ議論が必要なのです。どの産業を残すか、どの地方を切り捨てるか、切り捨てられた産業や地方の人間をそのように救うか、国防や外交も絡んできます。これをシビアに長期的視点で考えなければならない。けれども日本の指導者層はこれからずっと目を背けてきたのですね。

 自民党は逃げてきましたし、やっとこれに目を向け始めた(福田・麻生政権)ときには国民の信頼を失っていました。民主党は行政の組織いじりでこれが解決できると勘違いしていて、事の深刻さを知って右往左往しているところです。官僚も長期的視点を失っています。実業界もいつの頃からか「国家」という視点を失い、高所得者の資産を守る政策ばかり主張するようになってしまいました。労働組合もイデオロギー的な事ばかりに血道を上げていて、労働者の生活を考えているとは思えません。

 まあ私の推測では欧米でもこれから同じような混乱が生じると思いますが・・・

 先進国がはまっている問題の解決は現在の中央銀行を裏付けにした通貨発行制度まで踏み込んで考えないと解決できない問題ではないかと私は考えています。国債や社債などの債権の裏付け無しに通貨発行をしてはならないという不文律みたいな物です。第一次世界大戦や第二次世界大戦後のインフレへの反省からできた態勢ですがこれを見直すこと、それと金融ではなくて資産を氷付けにするための金縛機関・金凝機関・金固機関となりつつある銀行のあり方も考えなくてはならないでしょう。

 別に銀行を潰せとか、革命を起こせとか、資産家の財産を接収しろだなんて過激なことを言うつもりはないです。先進国では働く人がそれ相応の報酬を受けられない状況が広がりつつあります。国民の大多数が幸せになれるような社会を本気で考える必要があると思うのです。そしてそれは必ず経済活動を活発化して利潤を生み出し、資産家のためにもなると私は思っています。資産家だってデフレ経済の中で隠れて利殖をして預金通帳を眺めてニタニタするよりも、おおっぴらに金儲けをして、楽しく消費ができる世の中の方が絶対良いでしょう。

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