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2011年2月 6日 (日)

英国年金騒動

一月四日

 日本の政治経済がこの二十年間混迷しています。多くの人はこれを日本の特殊性で説明しようとします。曰く、不動産に過度に依存した金融が良くなかったのだ、増税を認めない自分勝手な納税者が悪いのだ、行政が業界に余計な指導をするのが良くない、政権交代がないからだめなのだ、いろいろあると思います。

 私も一年前くらいまでそのように考えていたのですが、世界金融危機後、米国や欧州でかつて日本で見たような混乱が広がるのを眺めていて、日本の特殊性なんて物はどこにもないと考えるようになりました。高齢者の増加、金融の肥大化、経済のサービス化による政府の財源調達力の低下、これらの要素がくみ合わさればどこの国でも同じことが起きるのです。

 試しにGoogle NEWSで”UK pension”(英国 年金)と入力して検索をしてみてください。あれだけ日本の学者やエコノミストが福祉先進国として賞賛していた英国の年金制度が大混乱に陥っていることが分かります。

 英国の年金基金の投資先は日本と比べて株式の比率が高いです。これが1990年代末からの英国の株高を演出しました。しかし世界金融危機によって年金基金の資産価値はがた落ち、配当も減っています。それに対して高齢者は増加、年金基金が赤字になるのは目前で、英国では「年金がもらえなくなる」という社会不安が広がっています。年金だけでは暮らせない高齢者が数百万人もいる事が今更ながら社会問題となっています(そんなのずっと前からいたはずです)。

 年金に対してバランスシート方式で説明をして不安を煽るエコノミストが英国でも現れているみたいです。転職を繰り返した人の年金支払い記録が追跡できない「消えた年金問題」も発生しています。これまで学者やエコノミストが、日本人の後進性と馬鹿にしてきた年金を巡るパニックと同じことが、彼らが模範としてきたはずの英国でことごとく発生しています。

 しかも英国の年金基金は株式に頼る面が大きく、さらに日本よりも積み立て方式の年金が普及していますので、英国の年金が受けたダメージの方が日本の年金がバブル崩壊や世界金融危機で受けた傷よりも大きく、英国人の年金は本当にもらえなくなる可能性があります。模範のはずの英国の方が日本よりもずっとダメダメだったのです。

 さらに英国のキャメロン政権は経済の回復がまだであるにもかかわらず財政再建に大鉈を振るいました。これは橋本政権の経済失政と同じです。案の定英国の2011年第4四半期の経済成長はマイナスになりました。

 キャメロン政権の拙速な財政再建により英国の経済が大不況に陥り、それによって日本の増税論まで封じられることを私は危惧しています。

 英国で発生している年金騒動や、財政再建による経済の失速を学者やエコノミストは隠しています。彼らは自分が考えて出した結論ではなく、「英国だから」「スウェーデンだから」といってあたかも日本の問題の正解のごとく取り出してきて日本人を黙らせてきました。だから英国や北欧の失政を評論できないのです。

 英国だろうが北欧だろうが、日本が陥ったのと同じような経済的な条件が揃えば混乱が生じるでしょう。せっかく向こうの国も失敗しているのだから、これを他山の石として日本の役に立てるべきでしょう。

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