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2011年4月19日 (火)

復興国債償還を目的とした消費税率引き上げの得失(一)

四月十七日

 政府が東日本大震災の復興財源として消費税の一時的な引き上げに言及しました。まず復興国債を発行して復興財源を確保し、その後経済の状況を見極めた上で、消費税を3%程度引き上げて、復興国債を償還(元本の返済という意味か?)し、償還が終了したらその消費税引き上げ分を社会保障強化の財源として使うという提案です。

 いろいろと問題はあるのですが、これは民主党政権にしては珍しく本格的な政策と言えますので、こちらもじっくりとその得失を分析してみたいと思います。

 まず消費税は日本のように成熟した経済においては安定財源であると言われています。先進国は税金対策が精緻化していて企業はあまり利益を出さない経営を心がけてしまっているので、法人税の増収があまり期待できません。しかも先進国には成長分野がないので、新しい産業を生み出して、そこから税金を取るというのも難しい状態です。所得税を増税すると、サラリーマンに負担が集中するのと、本来ならばお金を必要とする現役世代に負担が集中してしまって消費が冷え込むという問題があります。

 これに対して、先進国では消費は安定していますので、消費税は景気の変動にあまり左右されずに税収を得ることができます。日本でも、所得税と法人税は景気の上がり下がりに伴って上下しましたが、消費税はずっと安定しています。好景気でも不景気でも、国民が消費に回すお金の量はそんなには変わらないからです。

 どういうことかというと、消費総額は国民所得(収入の総額)にかかってきますのでGDPの総額に比例します、これはそう簡単には変動しません。それに対して法人税は、企業の純利益にかかってきますので、これはGDP成長に近いです。だから法人税は経済の成長率にかなり左右されてしまいます。所得税もまた国民所得にかかってくるので本来なら安定財源なのですが、日本の税制度は自営業者から所得税を取りにくくなっていますので、業種によって不公平感が生まれる元になっています。

 つまり、税収を手っ取り早く増やそうとしたら消費税を引き上げるしかないのです。

 また、社会保障強化を目的とした消費税引き上げに対する国民の理解はだいぶ広がってきました。さらに復興のためにはある程度の負担はやむを得ないという世論が広がりつつあります。政府としては、このタイミングであれば国民は消費税引き上げを受け入れるはずという読みがあるのだと思います。

 他に税収を上げる方法としては、この二十年間でだいぶ緩められた累進課税を大幅に強化するのと、企業に与えられた様々な補助を解消して、法人税の実質税率を引き上げるという物があります。日本の法人税率は高いですが、様々な優遇措置により、企業が実際に払っている税金は少なくなっているからです。

 おそらく累進課税の強化は、民主党としては支持基盤である都市の高所得層の利益に反するので無理なのでしょうし、法人税の実質課税強化はこれまた業界団体の反対が怖いのと、税務当局の強化が必要なので手間がかかるのとで、手をつけたくないのだと考えられます。

 消費税を増税すれば、確実に税収が増える上に、法的な手続きは簡単、増収のために必要な手立ても少なく、今であれば反対も少ない(かもしれない)、しかも震災復興が落ち着けばそれを社会保障強化に使える、ということでなかなか良い案のようにも見えます。

 次にこの復興国債償還を目的とした消費税引き上げの問題点について分析してみましょう。

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