日本神話の星座的解釈(七)
彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)と豊玉毘売の間に子供ができますが、出産にあたって豊玉毘売は産屋を作ってこもり「絶対に覗かないでくださいね」と言います。けれども彦火火出見尊は好奇心に打ち勝つことができず産屋を覗いてしまうと、中には大鰐(大きなサメ)がいました。海の神様である豊玉毘売の本性はなんと鰐だったのです。
異族婚の典型的パターンです。昔話の「鶴」にもありますね。
驚いた彦火火出見尊は逃げてしまい、本性を見られた豊玉毘売は恥じて実家の海の底に帰ってしまいます。その時に生まれたのが鵜草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)です。
鵜草葺不合命の神話はあまり残っていないのでどういう神様だったのかよくわかっていません。縁結びや安産の神様と言うことになっています。
豊玉毘売は妹の玉依姫をおさんどんとして地上へ送ります。鵜草葺不合命は玉依姫の手で育てられ、やがて二人は結婚して子供をもうけます。二人の間にできたのが五瀬命(いつせのみこと)、稲飯命(いなひのみこと)、御毛沼命(みけぬのみこと)、若御毛沼命(わかみけぬのみこと)の四柱の男神です。
この四人が古代の部族の兄弟にあった役割分担を表しているのではないかと言うことは以前に述べました。
名前を見てわかるとおり、この四人は水田耕作の神様です。瀬(清らかな水)、稲の飯、御毛(稲)が生えた沼(水田)です。若御毛沼は稲の苗を育てる苗代でしょう。
邇邇芸命が焼き畑農業の神様で、彦火火出見尊が鍛冶の神様で、若御毛沼(神武天皇)が水田耕作の神様ということはその間に入った鵜草葺不合命はなんの神様なのでしょうか。
私は淡水漁業の神様ではなかろうかと推測しています。
私の故郷の日立の鵜の岬には日本中の鵜飼いで使われる海鵜を生け捕りにする海鵜捕獲小屋があります。それは海鵜がやってくる岸壁に枝と藁で作った粗末な小屋で、まさしく「鵜草葺不合」(鵜のかやぶきで饗へる、供給する)です。
鵜飼いというのは照葉樹林文化共通の古い漁法です。長良川の鵜飼いは今でも皇室御用達で、なぜか皇室は鵜飼いを大事にしてきました。それは鵜草葺不合命が鵜飼いの神様であるからだろうと思います。
焼き畑農業、鍛冶(海釣り)、川(淡水漁業)、水田農業、見事に先史時代の産業の発展が神話で表現されているのです。
天孫降臨をした邇邇芸命が初代天皇ではないのは、天皇家のアイデンティティーが水田耕作にあることを意味しているのでしょう。焼き畑農業や漁労は、天皇家にとってとても大切な技術ではありますが、焼き畑と漁労だけでは天皇は生まれなかったと言うことなのでしょう。水田耕作という組織力が必要な産業の導入こそが日本に「国」を作ったと言うことを意味しているのだと思います。
鵜草葺不合命は子犬座のプロキオンだろうと思います。
あるいは、鵜草葺不合命にあまり神話が残っていないのは、カペラ(天之忍穂耳命)、双子座(海幸彦・山幸彦)、シリウス(神倭伊波礼琵古命、後述)までは決まったけれど、プロキオンだけは残ったので、急遽マイナーな神様を一人加えたと言うだけの話かもしれません。
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