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2011年5月26日 (木)

商王朝と周王朝の血縁関係(二)

四月二十四日

 季歴が迎えた妃が商王家の出身で、姫昌(周の文王)が季歴と商王家の姫君との間に生まれた子だとすると、はじめ商の敵として登場した周族が、急速に商から信頼され、諸侯の一人になったことがスムーズに理解できます。太伯と仲雍の伝説も理解しやすくなります。

 伝説では周は姫昌の代に既に商を滅ぼす力があったけれど、姫昌が商王を滅ぼすことは反逆であるからと自重したことになっています。私は周には元々商を滅ぼす実力はなかったと考えています。姫昌が商に反抗しなかったのは、周族の力がそこまで強くなかったのと、自分に商の血が濃く流れていたことが理由でしょう。姫昌にとっては帝辛はおそらく叔父が従兄弟に当たりますので、血縁関係が絶対の規範に近かった古代の人間である姫昌としては、商への反抗は思いも寄らぬことだったに違い有りません。

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 商は最大の版図を誇った帝辛の時に周からあっけなく滅ぼされてしまうのですが、それは姫昌を継いだ姫発(武王)が商と敵対関係にあった羌族から嫁を迎えていたからに他なりません。

 姫昌の代に呂尚(太公望)の事跡はありません。呂尚は武王と成王の宰相として活躍します。殷周革命の伝説が余りに話として面白いので私たちは姫昌が呂尚を見いだしたことを史実のように信じていますが、実際は呂尚は武王の妃の邑姜の親族、もしくはお付きの臣として周の宮廷に入り、実力を武王に見いだされて活躍したと考えるべきでしょう。

 普段伝説を余り信じず、合理的に考えようと心がける歴史学者が、殷周革命に関しては何故か儒者や司馬遷の講談まがいの話を史実と扱う傾向があることが不思議でなりません。

 周王室や姫姓の諸侯はその後も様々な部族と通婚していますので、周族は結婚することで力を伸ばす風習をもった部族だったのでしょう。

 さて、帝辛は周を一族としてすっかり信頼して、東征に出かけていたところを周の武王に奇襲されて呆気なく滅びたのだと考えられます。しかし商が滅ぼされても商の王家は殺されずにほとんど温存されています。これは周と商の間に血縁関係があったからでしょう。

 また、帝辛の叔父(箕子)、兄(微子啓)、息子(武庚禄父)が簡単に降伏し、最初のうちは全員周に協力していることから、何らかの理由で帝辛は王族内で人気がなかったのだと考えられます。帝辛は寵姫の妲己に骨抜きにされていたという伝説があります。それをそのまま信じることはできませんが、これは帝辛が商王族から反対されるような女性と結婚していた、あるいは嫡子と目される武庚禄父ではない子に王位を譲ろうと考えていたことを伝えているのではないかと思います。

 商は外戚の力が強かったらしく、割合近い血縁にある部族と通婚していたのではないかと推測されるのですが、帝辛は領土を広げていく過程で、被征服部族から嫁を迎え、それによって宮廷内で反感を買っていたのかもしれません。妲己は商に降伏した国の娘です。

 さて、商を滅ぼした周は、帝辛の子の武庚禄父に商を継がせ、文王の子(武王の兄弟)の蔡叔度と管叔鮮を配置しますが、蔡叔度と管叔鮮は武庚禄父に取り込まれてしまい、周に反抗、周は危うく滅びる一歩手前まで追い詰められました。

 これも理由は周公旦に嫉妬した蔡叔度と管叔鮮が起こした反乱と言うことになっていますが、武庚禄父は文王の従兄弟に当たりますので、蔡叔度と管叔鮮としては指示に従わざるを得なかったのではないかと考えられます。あるいは蔡叔度と管叔鮮は商から嫁をもらっていたのかもしれません。

 成立当初の西周はかなり弱くて、実力は商の方がずっと強かったらしいことは歴史家の共通する認識です。周としては取り込まれるリスクを冒すことになるのは承知しつつも、商と繋がりの近い二人を配置するしかなかったのでしょう。

 しかし召公、呂尚、周公旦の尽力により、三監の乱の鎮圧に成功。商の土地を宋と衛に分割して弱体化させることによってようやく西周は安定しました。

 話としては面白味は減退しますが、殷周革命期の出来事は、商族、周族、羌族の通婚関係を軸に動いていたと考えるべきではないかと私は思います。

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