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2011年5月19日 (木)

易経勝手読み(十四)・・・兌澤の真の意味

 易経の六十四卦は八象の組み合わせでできています。八象とは天澤火雷風水山地です。易経はこの八象の組み合わせで森羅万象の状態を表している、とされています。

 しかし私は、八象の中で天火雷風水山地の七つについては、古代人が考える自然の要素として必然性があると思えるのですが、澤についてはあまり必然性が感じられません。水を表す象としては既に「水」があるのに、なぜわざわざ「澤」を持ち出すのでしょうか。従来の解釈では動く水が「水」で、動かない水が「澤」だということになっていますが、「水」と「澤」が関連する卦を読んでみてもそのような使い分けは認められません。

 実は「澤」が関わる卦はほとんど原義が不明な卦ばかりなのです。解釈が判じ物のようになってしまっている卦が澤に集中しています。天の下に澤があるからといって何故「履」になるのかさっぱり分かりません。風澤中孚や山澤損や澤風大過などは陰陽の形の判じ物になっており八象が意味をなしていません。火澤睽などは完全に意味不明です。

 これは「澤」を「水たまり」とする従来の解釈に無理があるからに他なりません。

 「字統」で調べると「澤は睪(えき)声。睪に擇、鐸の声ある」とあります。では睪とは何かというと、死んだ獣の皮です。死んだ獣の肉を取り除き、皮だけになった平べったい状態のことを「睪」と言います。腐った獣の死体から腐肉を取り除くことが擇(えらぶ)であり、平べったい木の板が木檡であり、平べったい金属器が銅鐸であり、浅い水たまりが澤です。

 平べったい状態が「睪」なので、盛り上がった状態の「山」に対比されるのです。「睪」を水たまりに限定する必要はないと思います。「睪」にはこの音を持つ全ての漢字が含まれているというのが私の推測です。

 もう一度「澤」が関わる卦を見てみると、澤火革があります。これは皮をなめすことをあらわす卦ですが、これなどは睪火革(獣の皮を火であぶってなめす)、あるいは擇火革(獣の死体から腐肉を取り除いてなめす)と表記した方がぴったり来ます。風澤中孚なども風睪中孚(獣の皮で作った浮き袋、中空の袋=卵)と解釈した方がよさそうですし、地澤臨もおそらく地睪臨(生け贄を捧げて地霊を呼び寄せる)と解釈するべきでしょう。兌為澤もおそらく兌為睪(生け贄を前にして憑依状態になる)、兌為鐸(祭器を打ち鳴らして憑依状態になる)ではないかと考えられます。

 儒者が「睪」を「澤」に変えてしまったのは、「睪」に血なまぐさく土着的な生け贄を伴う祭祀の匂いをかぎ取り、開明的であるべきな儒学の根本教典の要素としてふさわしくないとみなしたからでしょう。

 そのようなわけで、私は今後「澤」を「睪」と考えて易経の解釈を進めていきます。

※パソコンが字を表示しない人のために
 睪(えき)

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